江藤拓農相は2月18日の閣議後定例会見で、政府米21万tの放出を表明したこと(2月14日)による流通の変化を訊かれ、「流通市場は動き出したと受け止めていいのではないかと思う」と発言した。ただ、その根拠は「個人的に大手スーパーの幹部から、卸からの購入の申出が相当数でてきたと聞いている」、「先物市場の取引数(出来高)が増えてきた」という、どう贔屓目に見ても薄弱なもので、真正面から受け止めていい発言とは言えそうにない。
しかし本紙で複数の関係者から聴き取ったところによると、スポット市場では目立った動きが出ていない。時系列で追ってみると、以下のようになる。
1月24日(最初に大臣が政府米放出を示唆した日)「ほぼ無反応。数量、価格、時期が判明しなければ反応のしようもないのではないか」
1月31日(国の審議会で政府米貸付の仕組みが了承された日)「価格は上がりも下がりもしておらず、売り唱えは硬軟入り交じっている感じ」
2月14日(政府米21万t放出を正式に表明した日)「売り買いともやや引き合いが薄くなってきている。(自ら率先して動き出さず)周りがどう変化するか様子見なのではないか」
2月18日(政府米売渡入札の説明会の翌日)「全般に横這い。やや下がっている銘柄もあるが、売り物自体が多いわけでは決してない。政府米放出の表明により、(価格が)下がる前に〝利喰い〟したくて売りに出しているのではないか」
2月18日(上記の大臣発言を受けて)「いや、大手はともかく、スポット市場は何も動き出してはいない。大臣発言程度で流通が動き出すと思うなら、去年の3~4月頃、スポット価格が高騰し始めた頃に〝口先介入〟しておけば、そもそも〝令和の米騒動〟など起きなかったのではないか」
一問一答(2月18日、閣議後定例会見から抜粋)
大臣 私から冒頭発言がございます。昨日、(政府備蓄米の買戻し条件付売渡しに係る)買受資格と入札に関する説明会を行いました。参加者は、昨日が219名です。本日も行いますが、40名の方々のご参加を予定しています。非常に関心は高いと受け止めています。以上です。
記者 備蓄米について、(先週)金曜日に放出の量などの詳細を説明し、昨日、今日と集荷業者へ説明を行いますが、実際にスタックしていると思われる米や、価格など、市場に現状で影響があるか伺います。
大臣 足りない分が市場に出るわけですから、当然影響はあると思います。夏に向けて在庫に関し、不安視されている方もおられますが、昨日参加いただいた219名の方々は、まさに流通業者の方々です。この方々が現物を持てば、当然、流通は正常化に向かうと思います。流通正常化に向かえば、価格も落ち着くことが期待されると思います。
記者 流通正常化への期待ですけれども、今のところ、どの辺りを流通の正常化に向かう時期として考えているか、スケジュール感の目標があれば教えてください。
大臣 スケジュール感は、今回、昨日と今日で説明会を行いますが、そのあとの入札から売渡し、現物を受け取るまで、時間をできるだけ短縮するように指示しています。事務方は大変だけれども、業者の方も含めてついて来ていただきたいと思います。1日、2日、1週間でも早くなれば、当然店頭に出るタイミングも早くなりますが、政府から放出される分に加えて、民間のどこかにあると言われる21万トンが、どのようなタイミングで、どのように市場に影響を与えるか、これは読みようがありません。ただ、普通に考えれば、市場に21万トン余計に流通に乗ってしまうので、これが先んじて流通に乗れば、もっと早いタイミングで、流通が正常化する期待も持てると思いますが、各市場に参入しているプレイヤーの判断ですから、強制できるものでもありません。とにかく私ができることは、政府備蓄米が、少しでも早く消費者の方々の手元にお届けできるように、手続きの迅速化を図りたい。
記者 備蓄米の運用について、基本指針を変えるとか、概要をいつ発表するとか、こまめに発信されてきたと思いますが、この間、流通の動きの変化を感じる点はありますか。
大臣 市場に影響を与えることは言いづらいですが、個人的に東京の大手スーパーの幹部に友人がいます。そういった方に、卸の方から、お米がありますけれども、買いませんかとの申し出がかなりの数が出てきたと報告は受けています。それが全体の動きかはわかりませんが、動きが出ていないということではない。先物市場を見ても、今までにない数が取引されています。先物は、決して現物市場に全くリンクしていないと言いませんが、今の先物価格だと2,500円(5キロ換算)ぐらいになる。店頭価格と完全にリンクはしていませんが、先物の取引数が増えているということは、流通市場は動き出したと受け止めていいのではないかと思います。