江藤拓農相は2月21日の閣議後定例会見で、1月の相対取引価格(全銘柄加重平均)が過去最高値を更新したことに対して、「これはまさに、(流通に)目詰まりが起こっている証左」との受け止めを明らかにした。また「何度も申し上げているように、米自体は間違いなくある」とした上で、政府米放出によって流通の目詰まりが「解消されていくと思っている」と自信を覗かせている。
では、いま現在、米はどこにあるのか。江藤農相は「昨日(2月20日の衆議院予算委員会で)田村議員から(21万tの米を)東京ドームに集めたら、6mの高さになるとご指摘があった」と引き合いに出した上で、「1か所に集めているわけではない」と皮肉り、「全国様々なところにある」とした。ところが同じ発言のなかで、「農水省としても、小規模なところにも、今後、聞き取りをする方向で、どこにどれだけのものがあるかは、できるだけ掴める努力をしている」として、流通〝だけ〟が目詰まりを起こしている認識を暗に滲ませている。
また「一部の専門家からは、米が通年通して在庫が不足しているとの指摘もある」との声に対しては、「ビジネスベース、流通ベースにしっかり乗っていないという意味であれば、『足りない』のは正しい判断だと思う。米がないのかと言われれば、間違いなくある」と繰り返している。
一問一答(2月21日、閣議後定例会見から抜粋)
記者 先日、米の相対取引価格が発表され、単月で過去最高を更新しましたが、受け止めをお願いします。また、備蓄米放出を最初に言及したのが1月24日(金)と思いますが、今回の相対取引価格には、まだ影響が現れていないと聞いていますが、2月の相対取引価格にどう影響するとみていますか。
大臣 1月の全銘柄平均で、60㎏あたり25,927円ということで、平成2年(1990)以来の最高値です。これはまさに、目詰まりが起こっている証左と受け止めています。何度も申し上げていますように、米自体は間違いなくある。昨日(の衆議院予算委員会で)田村議員から(21万tの米を)東京ドームに集めたら、6mの高さになるとご指摘がありました。1か所に集めているわけではありません。全国様々なところにあります。農水省としても、小規模なところにも、今後、聞き取りをする方向で、どこにどれだけのものがあるかは、できるだけ掴める努力をしていますので、価格については、目詰まりが起こっている証左と受け止めています。2月の(相対取引)価格は、私がどうこう申しますと、堂島の先物価格に影響を与えることは明白ですから、コメントは避けさせていただきます。
記者 米はあるとおっしゃっていましたけれども、一部の専門家からは、米が通年通して在庫が不足していると指摘もあります。農水省としては不足しているとは思っていないということでよろしいでしょうか。
大臣 専門家という方がどれぐらいの方なのか、私にはよくわからないですが、普通に考えて、18万t余計に生産されているんです。大変な量です。それで集荷が21万t落ちる。集荷業者の方々の価格の提示の仕方や、様々な商環境の中で、取引の多様化もあって、ビジネスベース、流通ベースにしっかり乗っていないという意味であれば、足りないのは正しい判断だと思います。米がないのかと言われれば、間違いなくあるわけです。今回21万tを出すことにしましたけれども、卸売業者から小売業者に渡す段階では、しっかり精米してと、はっきり申し上げています。精米すれば、美味しく食べられるのが1か月ぐらいしかありません。最長3か月ぐらいもちますけれども、1か月ぐらいで食べた方がいいです。政府備蓄米については、スタックすることは不可能ということになります。(卸売業者は)市場に出すしかないということであれば、そういったものは解消されていくと思っています。流通全体を見れば、スタックしている部分はどこかに隠れてしまっていますから、足りないということですけれども、総量として足りないという認識は持っていません。
記者 生産量の目安を出して、需要ぎりぎりの供給という声も上がっていますが、生産量を見直す考えは現時点でありますか。
大臣 平成30年(2018)に生産数量の張り付けはやめました。これ以降は、食糧法に基づいて、必要な情報を、法律に基づいて提供することによって、各県において生産者の方々が、需要と供給のバランスを見ながら、自主的なご判断で米を作るのか、飼料用米を作るのか、WCS(発酵性粗飼料)を作るのか、畑作に転換するのか、ご判断されたということです。国がかつて、批判ではないですが、民主党政権時代に戸別所得補償を行っていましたが、生産数量を守った人にだけ戸別所得補償を行っていたわけです。そういう厳しい縛りは、国はかけてないです。これからどれだけ作るかというのは、今、農水省で掴んでいる状況では、4万haぐらい主食用米の作付が増えそうな雰囲気です。それは、全国にある水田協議会が、それぞれ農家の方々と話し合って考えることであって、数量とか、これぐらいの需要があるとか、人口動態は、高齢化も進み、少子化も進んでいるわけで、インバウンドとか変数もあります。そういったトレンドは現場にお届けした上で、総量は決められるものだと理解しています。
(略)
記者 業者間での譲り合いのような形で調達するスポット価格について、これまで上がっている銘柄もあるなか、やや数字的には下がった銘柄もありました。これからの備蓄米の買戻し条件付きの販売も含めて、今の動きと、今後の足元での取引価格についての見解、受け止めを聞かせてください。
大臣 価格はあくまでも市場で決まるべきものという姿勢は変えていません。食糧法のどの条項を読んでも、価格の上昇時に備蓄米を放出するということは、書かれていません。財政法上も、いかがなものかとの指摘もないわけではありません。備蓄米は国民の財産ですから、出すということであれば、法律上、整合性があるのか、農水省としてもしっかり検討しなければなりません。
スポット価格についてですけれども、数tとか、数十tの話で、あまりにもごく一部なので、これがトレンドを表しているとはとても言えません。どう受け止めるかと言われても、余りの量の小ささですから、そういうのもあるのか、くらいの話です。これについてコメントすることはできないと思います。