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需給

【インサイト飯稲米】どこにあるのか「消えた21万t」①

 巷間「消えた21万t」などと揶揄されている令和6年産米。政府米放出が奏功して出て来たところで、価格が劇的に下がるわけではないので、売れるとも思えない。ならば放っておいてもよさそうなものだが、そうもいかない。消費量は年々減っている、つまり普段は関心などないくせに、「足りない」「高い」となると騒ぎ始めるのが〝世間〟の悪い癖だ。以下、令和6年産米が「どこ」に滞留しているのかを繙いていく。ただし、「価格」を語るのは別の機会に譲る。以下では一切触れないのでお断りしておく。

先に結論。令和6年産は様々なところにある

 先に結論から申し上げると、「令和6年産は様々なところにある」が正解だ。
 江藤拓農相自身が、去る2月21日の閣議後定例会見で、まさしくこの正解を口にしている。既報を引用してみよう。

 ――江藤農相は「昨日(2月20日の衆議院予算委員会で)田村議員から(21万tの米を)東京ドームに集めたら、6mの高さになるとご指摘があった」と引き合いに出した上で、「1か所に集めているわけではない」と皮肉り、「全国様々なところにある」とした。

 逆に言えば、流通〝だけ〟に滞留しているわけではない。産地、集荷、卸、小売、消費者、それぞれに少しずつ滞留している。つまり「全国様々なところにある」が正解なのである。
 では、「どこ」に「どれくらい」滞留しているのか。これらを探っていく前に、大前提をおさえておく。

 まず、「農林水産省の統計(生産量)が間違っている」との指摘がある。確かに、例えば作況指数の弾き出し方に問題点がないではないが、全体需給に影響するほどの誤差とは考えられないし、そもそも統計が誤っているのだとすれば、「21万tの不足」だってアテにならなくなってしまう。したがってここでは、統計に誤りがないことを大前提に置く。
 次に、「農林水産省の需給見通しが甘い」との指摘。ふるさと納税の返礼品やインバウンド需要を指すものとみられるが、それこそ各種統計を見る限り、「米が捌けている」証左はどこにも見当たらない。需給見通しそのものに問題なしとはしないが、ここでは「消費は増えていない」ことを大前提に据えておく。
 もう一つ、「いま令和6年産が不足しているのは、〝令和の米騒動〟による〝早喰い〟の影響ではないか」との指摘もある。これはいささか論外と言わざるを得ない。下図は、既報した令和6年産米の集荷・契約・販売進度だ。販売数量の前年比が9月+8.2%、10月+31.8%、11月17.8%、12月+11.4%と推移している。これが、いわゆる〝早喰い〟だ。だが集荷数量と販売数量は、令和6年産の最初、9月から常に「▲」が並んでいる。農林水産省が「目詰まり」と表現しているのは、まさにここだ。〝早喰い〟の影響で令和6年産が不足しているのではない。むしろ令和6年産が集まらない事態が、〝早喰い〟という名の〝貯金〟を喰い潰して進行しているわけだ。

 明日2月28日、農水省は今年1月末現在の集荷・契約・販売進度を公表する予定だ。ここで万が一、販売数量が「▲」に転じる(つまり〝早喰い〟という名の〝貯金〟を喰い尽くす)ようなことにでもなれば、いよいよもって逼迫感が高まることになる。

に続く》

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