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需給

【インサイト飯稲米】どこにあるのか「消えた21万t」②

 大前提が長すぎた。
 巷間「消えた21万t」などと揶揄されている令和6年産米。産地、集荷、卸、小売、消費者、それぞれに少しずつ滞留している。つまり「全国様々なところにある」が正解である。
 では、「どこ」に「どれくらい」滞留しているのか。いよいよ、これらを繙いていく。なお、くどいようだが、「価格」を語るのは別の機会に譲る。以下では一切触れないのでお断りしておく。

中間流通段階に滞留の可能性。ただし第2候補

 川下からいこう。まず消費者在庫、家庭内在庫だ。これは公的な統計がある。米穀機構(《公社》米穀安定供給確保支援機構、東京都中央区)が毎月1回公表している「消費動向調査」のなかで、家庭内在庫数量が分かる。平均家庭内在庫数量(精米ベース)の推移を示したのが下図だ。これを見る限り、〝令和の米騒動〟以降、とりたてて家庭内在庫が増えているようには見えない。少なくとも全体需給に影響するほど大規模に滞留しているとは考えにくい。

 次に、中間流通段階だ。これも統計がある。下図の「民間在庫」のうち、「出荷段階」が農協などの集荷業者、「販売段階」が卸・小売などの販売業者と考えてくれていい。これらも軒並み前年比「▲」が並ぶ。ただし販売段階の当年産(つまり令和6年産)だけが、12月末現在で前年同期を9万t上回っている。このあたりを「流通の目詰まり」と考える向きがあるわけだ。

 その可能性もないではないが、特に卸売業者などが、販売先が決まっている商品を在庫しておくことは、通常の商行為だ。昨年の〝令和の米騒動〟の再来を恐れて、やや余分に持っているきらいはあるものの、売値が決まっている在庫なので、抱えていても値上がりすることはない。
 ただ上記の農水省の統計は、対象が出荷段階で年5,000t以上(県域。地域段階は500t以上)、販売段階で年4,000t以上と、比較的大手業者に限られている。これで「民間流通量の8~9割をカバーしている」とはいえ、それでは世間も納得しない。そこで、今回の政府米放出の判断根拠として、小規模業者も在庫調査の対象に加えることにしたわけだ。
 とはいえ、この中間流通段階だけで、滞留が21万tに達するとは考えにくい。多少は滞留しているのだろうが、少なくとも第1候補ではない。

に続く》

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