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需給

【インサイト飯稲米】どこにあるのか「消えた21万t」③

 巷間「消えた21万t」などと揶揄されている令和6年産米。産地、集荷、卸、小売、消費者、それぞれに少しずつ滞留している。つまり「全国様々なところにある」が正解である。
 では、「どこ」に「どれくらい」滞留しているのか。家庭内在庫は、あっても多くなさそうだ。中間流通段階の可能性は否定しないが、あくまで第2候補に過ぎない。最期に、いよいよ本丸を繙いていく。

産地滞留示す検査数量。農水省も分かってるはず

 結論から言おう。令和6年産米は、流通の各段階それぞれに滞留している。なかでも最も多く抱えているのは、明らかに産地だ。
 状況証拠に過ぎないが、根拠を示そう。下図は、農産物検査の水稲うるち玄米検査数量の推移(既報)だ。令和6年産は昨年12月末現在までしか公表されていないため、他の年産も全て12月末現在で揃えてある。これによると、令和6年産米の検査数量が、前年同期に比べて6万1,882t減っているのが分かる。言い換えれば、少なくとも6万t程度は、産地に滞留しているのではないかと言える。
 農産物検査には、受検義務がない。それでも最終的に毎年6割強という高い受検率(主食用米収穫量に占める検査数量の割合)を誇っているのは、受検によって産地・品種銘柄名の表示を担保できるためだ。
 主食用米の収穫量は、令和5年産から6年産にかけて18万2,000t増えている。にもかかわらず検査数量は約6万1,882t「減っている」。故に農協をはじめとした集荷業者は「集まらない」と嘆き、監督官庁は「流通が目詰まりを起こしている」と主張する。
 農産物検査を受検しなくても、根拠さえあれば産地・品種銘柄名を表示して販売できる。この未検玉(未検査米)が大量に出回っている可能性もあるが、流通段階だけでなく産地段階(生産者自身)が抱え込んでいる可能性もあるのではないか。
 仮に令和6年産米の受検率が前年産の同期並みだったとすれば、検査数量は16万6,482tほど前年同期を上回っていなければならない勘定になる。足し算すると、22万8,364t。どこかで見た数値と近似値になる。

 だが、こんなことは、監督官庁である農林水産省も分かっている話のはずだ。
 生産者在庫の統計は存在するものの、年1回しかも抽出調査だ。かつては毎月調査していたのだが、人手不足を理由に縮小されていった過去がある。したがって今現在、リアルタイムで生産者在庫を知る術はない。だが食糧法の報告徴求を持ち出せば、対象や頻度を拡大することは可能だ。にもかかわらず農水省は、中間流通の在庫調査対象を拡大することはしても、生産者在庫の調査対象を拡大しようとはしない。
 果たして政府米放出によって、産地から米が出てくるのだろうか。それもこれも、ここまで頑なに触れてこなかった「価格」によると言えるだろう。

《了》

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