江藤拓農相は5月20日の閣議後定例会見で、改めて辞任を否定した。いわゆる「米を買ったことがない」発言をめぐる騒動を受けたもの。石破茂首相から政府備蓄米放出の「結果を出して欲しい、しっかりやれと、叱責をいただきながらも、温かい言葉もかけていただいた」とした上で、「私自身が備蓄米の放出を決断した本人でもあるので、お許しをいただいて、最後まで、私が責任を取るところまでやらせていただきたい」と述べた。
だが一般紙報道によると、石破首相は与野党から更迭を求められており、5月21日にも辞任を勧め、後任に小泉進次郎元環境相(元自民党農林部会長)を充てる方針と伝わっている。
江藤農相は去る5月18日、佐賀県佐賀市内で行った講演のなかで「私は、米は買ったことがない。支援者の方々が沢山米を下さるので、まさに売るほどある。私の家の食品庫には」と発言。これが物議を醸した。その後、5月19日になって「『売るほどある』は言い過ぎだった」として発言を修正、同日の国会答弁で全面撤回したが、冷却化には全く寄与しなかった。さらにその後の釈明で「『売るほどある』は宮崎弁でよく言う表現」などと発言し、地元選挙区まで敵に回す失策を犯している。
一問一答(5月20日、閣議後定例会見から抜粋)
記者 昨日のスーパーの販売平均価格が、先週より54円上がっていて、最高値を更新しました。その受け止めと、ブレンド米などを含め価格が再び上昇した要因について、どう見ているかお聞かせください。また、今後、どの程度の価格水準になれば備蓄米放出の効果が十分あったと考えておりますでしょうか。
大臣 非常に難しいご質問だと思っています。正直に言いまして、31万t出るようになり、そして、集荷業者も日に4,200t出せる体制にまで、出荷体制も随分整ってまいりました。ですから、政策効果が出ることを大いに期待しておりましたが、結果としては、54円上がるということで、非常に重く受け止めております。原因については、私は週に2回、いつも申し上げておりますように、スーパーを回っておりますが、最近感じたことは、5㎏の袋のシェアよりも、棚を見ると、2㎏売りの袋が多いなというのは感じておりました。2㎏売りの袋の方が、㎏当たりの単価は高く、当然設定されています。これが悪いと言っているのではなくて、消費者の方々も米が高いので、できるだけ1回で買う金額自体を抑えたいという要望に小売りも応えた結果だと思います。これを批判しているわけではありませんが、2㎏売りによって、㎏当たりの単価が上がったというのは、一つの一因かもしれません。断定的には言えません。
もう一つは、かつて備蓄米を出す前は、ブレンド米の比率は19%でした。これが一連の放出の後、33%まで伸びました。それによって、前回は一定の政策効果が出たのだと私は判断しました。しかし、今回は33%から31%まで、またブレンドの比率が落ちてしまいました。それも一つの要因ではないか。そして、相対のところもストーブリーグですから、特別ではありますけれども、様々な要因があるのだろうと思っております。これが確定的な原因であると言うことは難しいですが、しかし、今回4回目は思い切った見直しも行いましたので、まだ入札まで時間がありますが、ぜひ少しでも多くの方に、まずは応札をしていただき、そして、申し上げておきたいのは、味覚的には全く問題はありませんが、古古米です。この言い方は、私は好きではありませんが、通例使われた言葉は古古米です。ということであれば、集荷の方々も、前回の入札に参加される方々も、前回よりかは低い水準で入札されることを私は望んでいます。これは入札ですから、こうしろということはできませんが、そうなるのが自然であろうと思っておりますので、今後、何とか結果が出せるように、情報収集に努めながら頑張ってまいります。
記者 幹事社からも適正価格についての質問があったと思うのですが、価格にコミットしないと承知する一方で、価格を下げることを目標としていると思います。例えば5㎏3,000円台など、どれぐらい安くしたいと大臣はお考えでしょうか。
大臣 私がここであなたの質問に答えて、例えば「3,500円です」と答えたとすると、「なるほどな」という評価をされる方と、「何だ」というふうに評価される方。それは消費者の方々、それから生産者の方々、それぞれあると思うのです。ですから、この場でその質問に答えるのは難しいですが、これから、概算金が出てきます。これが出揃うのは8月の末ですから、まだ大分時間がありますが、そういったものも、これからの価格水準の一つの目安にはなる。それから、民間の方々も活発に、集荷に努力をさらにしていると。いわゆる全農系ではなくて、それ以外の方々が。そういう報道等もありますので、どこら辺が適当かということは難しいですが、このままの状態が続けば、確実に、やはり「米以外のものを食べよう」ということは、「本当は米を食べたい。でも高いから無理ね」という人が出てきてしまう。その水準はまずい。しかし、生産者の方々が、「今年限りで、もうやめよう」という水準もまずい。ですから、非常に、これからの米の適正な価格を決めることについては、基本的に国が決めるものではありません。市場が決めるわけですが、それにしても、例えば、需給の見通しをしっかりしたものを出すとか、そういった間接的なコミットを我々はしていくわけですから、そういったものの精度も上げ、より検討した上で対応していきたいと思っています。
記者 一方、総理も結果を出すようにというふうにおっしゃっていますが、目標がないと、いわゆる政策の成否という判断は難しいのかなと思うのですが、そちらはいかがですか。
大臣 総理からいくらにしろという話はありません。しかし、総理の御認識としては、今の価格はあまりにも高過ぎるだろうというのが御認識ですので、総理から確定的な数字を聞いたことは一度もありません。
記者 「米を買っていない」の発言について、昨日の報道陣への昼の取材では、「撤回というより修正」とし、進退や責任については疑問を呈されておりました。一方で、昨日の決算委員会以降は、発言の撤回を表明されて、「総理の意向で辞任を求められれば、そのつもりだった」とおっしゃっていましたが、いずれもお考えを改められた理由をお聞かせください。
大臣 どのような言いぶりをしたらいいか考えて、記者ブリには答えました。しかし、私の言い方がまずかったなと思ったので、あのときは、若干後ろ向きの修正という言葉を使いましたが、しかし、あれはやはり適切ではなかったとすぐ思いました。間違っていたものであれば撤回すべきであって、潔くなかったなと思っております。そして、昨日、家に帰りまして、ずっとテレビ関係のニュースは見ておりましたし、夜になって、YouTubeであるとかSNS系を、朝明るくなるまでずっと見ました。それは、国民の皆様方がいかに憤慨されているのか、どれだけ怒っておられるのかということを見ていて、大変自分にとってはきついものではありましたけれども、やはり、そういうものを見ることが、これから大臣を続けるということであれば、そういうことから目を背けずに、しっかりと見た上で職務に励むべきだと思いましたので、明るくなるまでずっと見ておりました。これは余計なことですけれども。総理からは、大変厳しいお言葉もいただきましたが、「ここまで君がやってきて、まだ結果出ていないけれども、政策パッケージをせっかく作って、そして、この入札は月末だと。これによって、何としても結果を出して欲しいと。しっかりやれ」と、叱責をいただきながらも、温かい言葉もかけていただきました。ですから、国民の皆様の中には、様々なご意見がおありだと思いますが、非常に私自身、思うところもありますが、私自身が備蓄米の放出を決断した本人でもありますので、お許しをいただいて、最後まで、私が責任を取るところまでやらせていただきたいという気持ちで、今日、国会にまいりました。