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【iNSIGHT飯稲米】小泉新農相、就任後いきなり「随契で備蓄米売渡」

 小泉進次郎農相は就任当日の5月21日夜、初登庁した東京・霞ヶ関の農林水産省で初会見に臨み、5月28~30日に予定していた政府備蓄米の第4回売渡入札をいったん中止、随意契約で売り渡す方式に切り替えることで、米価の下落をめざす考えを表明した。江藤拓前農相の後任に指名される際、石破茂首相から受けた指示に基づくもの。

 確かに入札よりも随意契約のほうが、安価に誘導しやすいのは事実だ。であれば最初から随契で売り渡してしまえば良さそうなものだが、そうもいかなかった理由は主に二つある。
 第1に、国家財産(備蓄米)を民間に随契で売り渡すには、会計法その他との擦り合わせ、内閣法制局、財務省といった関係省庁との調整が必要になる。つまり迅速性に欠ける。今回は、31万tも放出しても価格が下がらなかったため、仕方なく踏み切った――かのように見えるが、それでは迅速性を確保できないのは同じことだ。ということは、数日前から農政通(農相経験者)の石破首相と農林水産省との間で随契というアイディアの検討がなされていて、そこへ前農相の失言が降って湧いたため、農相交代と随契への切替を重ねたのではないか――との疑念も湧いてくる。
 第2に、大幅に下げてしまうと、それまでの「高い」令和6年産米との整合性がとれなくなることがある。すでに複数の産地が令和7年産米集荷価格の大幅な引き上げを表明している以上、いったん「安い」令和6年産が消費者に届けば、末端価格は再び高騰せざるを得ない。そこを避けたかったわけだ。「幸いなことに」令和6年産の政府備蓄米在庫は、ほぼ払底している。今後は入札であろうが随契であろうが、主体となるのは令和4年産米以前になる。産年が異なれば、価格が変わっても理解が得られやすい。このような判断が働いたのではないかと見られる。

 「入札によって高めの価格で落札されてしまう」ことから随契に切り替える、との説明だが、これは実は違う。これまで3回の売渡入札でも、予定価格(下限価格)が設定されていたのである。応札する側の意志ではない。これを「○○円で」と指定する随契に切り替えるということは、真正面から「国が安価で売り渡す」意志の表れということになる。
 したがって、随契によって「いくらで売り渡すのか」が、次の焦点となる。

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