小泉進次郎農相は5月30日の閣議後定例会見で、「米の需給が『足りない』マインドから、『十分あるかもしれない』マインドに変化してきたのではないか」との見解を示した。「今年6月末在庫が200万tを超えるのではないか」との質問に答え、「そうした質問が出ること自体、前向きな変化なのではないか」と、かわした恰好だ。
「令和6年産米は、生産量として足りている。しかし不足感がある。これを払拭しなければ、ここまでの異常な高騰を抑えられない。そのため随意契約による備蓄米の放出に踏み切った。ようやくマインドが変わってきたように思う」と、小泉農相の発言は、真正面から答えたものとはなっていない。ただ、「相当な需要量があることも間違いない」とも発言している。また「生産量が実際には少なかったのではないか」との質問に対し、「生産量の調査に対する不信感は、様々なところで指摘されている。これは払拭していかなければならない。農水省の調査方法を丁寧に説明し、発信していくよう努める。また改善の余地があるのであれば、検討していく」とも応じている。
一方、大手小売を対象とした随意契約による政府備蓄米の売渡にあたって、コンビニ3社が外れた原因を訊かれ、「年1万tの実績(見込)に達しなかったためと聞いている。1万tという基準は、あくまで生米なので、おにぎりや弁当は含まれない。しかしコンビニでの購買需要は確実にあると思うので、随契の形を柔軟にして対応していく」と答えた。また精米能力をめぐっては、「心配があるため先日、全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)と話したところ、全面的な協力を申し出てくれた。どこにどの程度の精米余力があるかを把握し、適切にマッチングさせたい。一方、玄米で流すルートも必要なことから、今回は精米設備を備えている小売店に対する枠を設けた」と応じている。
一問一答(5月30日、閣議後定例会見から抜粋)
(略)
記者 2点お伺いします。1点目は、本日から米穀店や中小スーパー向けに受け付けを始める備蓄米の随意契約について、その狙いや期待について改めてお聞かせください。(略)
大臣 まず、1点目の今日から始まる町のお米屋さんや中小のスーパーさんを対象にした新たな随意契約ですけども、今日の(午前)10時から受け付け開始だというふうに聞いています。あと1時間後ですね。こういった形で、今までの大手の小売りさんの皆さんは既にもう出庫に、そして販売開始もされていますが、そこではカバーできない隅々まで、できる限り広く多くの方に備蓄米が届くように、そんな思いで新たな随意契約を始めます。昨日も、説明会には1,000社以上の方々が参加をいただいていると聞いています。そして、昨日だけでは対応し切れなかったので、今日、11時から2回目の説明会も開催するというふうに聞いております。ぜひ、こういった新たな随意契約に対する理解を通じて、消費者の皆さんにも、しっかりとこれから広く届いていくんだなと、こういったふうにメッセージを受け取っていただきつつ、米農家の皆さんに対しても、こういった取り組みを通じて何とか消費者の皆さんの米離れを防いでいきたい、そういった思いですという両面のメッセージをしっかりとお届けしたいと思います。(略)
記者 おはようございます。米の需給動向について伺います。米の需給動向をはかる指標として6月末の民間在庫量があると思うんですけれど、現在、来年6月末の民間在庫量として178万tという数字が出ていますが、これには、放出された備蓄米であったり、先週公表された4月末の作付意向調査の動向が反映されてませんで、もしそれを反映して単純に計算すると、来年6月末の民間在庫量が275万tとなって、業界から適正とされている180~200万tを大きく超過するような状況になると思うんですけれど、まずこの数字についての受け止めと、あと大臣、今、この米の需給動向をどのように見られているかお聞かせください。
大臣 まず、(令和)6年産の生産量や民間在庫の水準、これまで売り渡した備蓄米の量を踏まえれば、全体として米の供給量は足りているというふうに考えています。一方で、流通関係者、そして消費者の不足感、これはまだ払拭されていませんが、ようやく少しマインドが変わってきたと思うので、こういったマーケットの中の不足感の払拭が進んでいけば、今のこの過度な米の値上がりは落ち着いてくる、そういった可能性があると思っています。この不足感を払拭しなければ価格は下がっていきませんので、ご理解をいただきたい、この随意契約の備蓄米の放出にもご理解をいただきたいというふうに思います。今後、価格の高止まりが解消されて、国が備蓄米を買い戻す環境が整った場合には、今回の小売業者への放出分も含めて、備蓄米の放出量と同数量を買うなど、柔軟に対応していく考えです。まずは国民の皆さんが早く安定した価格でおコメを手に入れて、これ以上の米離れを防げるように取り組んでいきたいと思います。
記者 今の点に関連で、数字だけを見るとかなり米が余るような、そういう数字になると思うんですけれど、そこについての受け止めはいかがでしょうか。
大臣 これは、今まず大事なことは、米がない、そして足りない、この声が圧倒的に多いですよね。今、ようやくそれが、まさに日農さんがご指摘のように、これ、もしかしたら変わるんじゃないかって思っていただいているから多分このお尋ねになっていると思うんですけど、まさにそうやってマインドを変えていく、大丈夫だ、足りるんだ、そういったことになっていくことによって、結果、今の価格高騰が収まっていって、農家の皆さんの求める納得価格と、そしてまた再生産が可能な価格、そして消費者の皆さんが安心して買い求めることができる価格、こんな議論に進んでいけると思うので、日農さんから今みたいなご質問がとうとう出していただけるようなマインドになってきたというのは、私は一つの前向きな変化だと思って受け止めています。ありがとうございます。
記者 昨日、大手小売向けに発表をし、随意契約についての申請件数61件と出ました。大手コンビニチェーン店さんは申し込んだけれども、入れなかったっていう報道も出ています。備蓄米を広く早く届けるという意味では、コンビニチェーン店さんほど有効な手段、ツールじゃないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
大臣 これは私も確認をしたんですけども、この1万t以上に当たらなかった。ていうのが、今回、コンビニさんが対象じゃなかったっていうことなんですよね。この1万t以上って多分一般的な感覚としては、いや絶対コンビニさんはそれぐらい扱っているだろうと思うじゃないですか。ただ、今回その1万tというのは生米の扱いが1万t以上ということなので、おにぎりとか、お弁当とか、こういったものが1万tという換算の中に入っていないということだと思うんです。一方で、このコンビニさんで備蓄米を提供されたいという声があったのも事実で、そして、いろんなアイディアをお持ちなので、今、まずはお米屋さん、町のお米屋さんとそして、中小のスーパーさん、新しく始めます。一方で世の中の状況などを見ながら、随意契約の形は柔軟に変えていくつもりはありますので、よくそこは状況を見て、柔軟に対応したいと思います。数量は相当、仮にコンビニさんが取るとしたら、相当出てくるはずなので、そこの部分も含めてよく見ながら対応したいと思います。
記者 柔軟に対応ということですが、そもそも今回放出する予定である30万tについては、もう20万tは確定し、今回22万トンを確定し8万tはもう、今回中小、小売ということで固まっています。それ以外の枠も考えるということですか。
大臣 言っているとおり無制限に出すつもりですから。そして、今、中小のスーパーさんと町のお米屋さん。説明会には1,000社以上参加をいただいていますけども、実際にどれぐらいの数量が、これから申し込みがくるかっていうのは見ないとわかりませんので、新しい随意契約でどれぐらい消化されるか、こういったことも見ながら対応することだと思います。
(略)
記者 先ほどの質問にもかぶっているんですけども、大臣お答えの中で米はあるんじゃないかというようなお話もありましたが、実際に最初の就任会見のときには本当に米があるのかというような発言もありました。実際に昨年産米も含めて、米の需給として生産量は足りているのかということについて、大臣のお考えをお答えいただけないでしょうか。
大臣 生産量だけ見れば増えているのは、数字は明らかなんですよね。ただ残念ながら、これ昨日の国会でも説明しているとおり、生産量は昨年と比べて増えているけども、全農に対しての集荷の流れが減っている。そして増えているのは全農以外のこちらに流れていて、このスポットの価格などが高止まりをして、結果マーケットが、店頭価格が上がって、そしてこの流通関係者、そしてまた、消費者の皆さんの不足感、こういったものに繋がっているというのが現在の認識なんですけども、ただ、こういった状況、民間在庫の水準、そして備蓄米を今世の中に提供していることを踏まえれば、供給量としては足りていると。ただ、やはりこれ需給、こういったことを見ると、相当な需要があるということも間違いないので、この需給が今、需要の方が上回っている状況があるから、これだけ上がってんですよね。ただ、先ほどの日農さんのご指摘もあったとおり、今まではもう足りないっていう、こういったことのマインドから、これ、もしかしたら、十分あるんではないか。ていう、こういった今の朝日新聞さんのご指摘もそうですけど、こっちの方の指摘に入ってきたっていうのが、まさにマインドが変わってきた一つだと思うんですよね。私としては、やはり、このマインドを変えていくっていうことを抜きに価格は下がらないと思っていますから、ようやく今度そちらの方に移行していけるとしたら間違いなくまずこの価格を抑えるっていうことについては、動きが出てくるんだろうと思います。そしてその後の様々な動向に対応する我々、農水省としての対応というのはもちろん、併せて様々な検討をしなければならないとは思います。
記者 もう一点、昨年の秋から取材をしていると、米の農家さんとかに関しては、農水が出している生産量に関して、ちょっとずれがあるんじゃないかというような声も出ていました。そこに関して改めて正確な調査をするとか、把握をし直す予定とかありますでしょうか。
大臣 これは国会でも言われますし、いろんな方から言われます。カメムシの被害が大きくなって、結果として、良い質のお米が見立てよりも減っているんじゃないかと、こんな声や、やはり高温障害、いろんな声があります。この現場がなかなか農水省のデータに対して、共感を持てない、そして信頼感を感じない。こういったことは払拭していかなければ、農家の皆さんと我々行政との信頼というのは結べないと思います。なので、まずどういった調査を我々はやっているのか、しっかりとこの統計の手法に基づいてやっているんですけども、そこについての丁寧な説明と発信をしつつ、もし我々の中で改善すべきことがあれば、そういったことも含めて、これから水田政策のあり方も大きく変わっていきますので、しっかりと省内で検討する一つかなと思っています。
記者 本日、食料システム法案が参議院で審議入りします。米の適正価格が社会の関心を集める中ですけれども、どんな価格形成の仕組みを目指していくのか、法成立後の制度設計も含めて、方向性を教えてください。
大臣 今日から審議入りですので、この後、本会議場で私も趣旨の説明、そして質疑、臨みます。この法案が参議院で審議をされ、仮に成立した暁には、今度はコスト指標の作成ということになってまいります。コスト指標の比較作成にあたっては、業界の関係者、そういった皆さんの取り組みをしっかり農水省として後押しをして、結果、これは先ほどから申し上げているような消費者の皆さんの納得と、そしてまた生産者の皆さんが、これなら次に向けてもやっていける、しっかりと物価の動向や、生産資材の高騰、人件費の高騰、こういったことも含めて、ちゃんと価格転嫁も含めて、できると。こんな安心感を持っていただけるような方向に向かっていく、背中を押す法律にしなければいけないと、そんな思いで丁寧に法案審議に臨んでいきたいと思います。
記者 大臣が掲げておられる農政改革とは具体的にどういう改革なのかについて2点質問します。まず、JA、農協の改革ですが、これはお父様である小泉純一郎元総理が掲げたような構造改革的な発想の改革なのでしょうか。郵政民営化と同じように農協民営化を果たし、最終的には株式会社化するというようなイメージ、理解でよろしいでしょうか。またその場合、外資の参入も認めるのでしょうか。もう1点、大臣はかねてより、農地を集約化するということをおっしゃっていますが、そのためには、農地法などで定められた農地売買に係る制約を取り払う必要があります。大臣は個人、法人に関わらず、外部からの参入を認め、また、農業従事者を外国人労働者へ開くなどして大規模化を図るというお考えでしょうか。
大臣 まず1点目の農協を株式会社化するのかっていうのは全くないです。そして、農政改革っていうことは何かっていうのは、まさに昨日JAグループの山野会長など、幹部の皆さんとお会いをして、まずは、目の前お米の価格の高騰を抑えていかなければ、農協の皆さんも心配をしている消費者の米離れを加速させかねないので、この今、随意契約によって安いお米をマーケットに流していくっていうことは理解できる。その一致を見たと。そういうふうに昨日、お話をしたとおりです。なので、こういう状況になると、みんな大体対立を演出しなくなるというのが分かりやすいし、多分読まれるんですよね。なので、そういったことには全く私は思いはなく、純粋に米のまず異常高騰を抑えたい。そういったことにあらゆるプレーヤーと、一緒になって取り組みたいと思っております。もしも、1点目についてそういうご懸念があるとしたら、全くそんなことはありません。そして2点目、この大規模化とか、そういったことですけども、大規模化とか集約化、大区画化については、これは与野党皆さんから理解得ています。食料・農業・農村基本計画の中に位置付けられている、その取り組みであって、そして、これから5年間で集中的に構造転換を進めていこうという、この方向性は与野党一致なんですよね。なので、これも様々な、何でもそうなんですけど、不安を煽る方が記事とか読まれるんですよね。なので、そういったことはビジネスとしては理解をしますけども、我々はビジネスじゃないんで、しっかりと農政、農業者、そして、日本農業の発展のために、純粋に喜んでいただけて意欲を持って将来に向けて、農業に営んでいただける、その政策の遂行に邁進していきたいと思います。
記者 今日からまた再開する備蓄米の受け付けに関してお伺いします。卸売業者を含めて、精米能力があるところも、なかなかこれまで備蓄米を精米してきたという経緯もあって、どこまで余力があるのかという懸念の声も聞かれます。マッチングという言及もこれまでにされてきましたが、そうしたあたり、今後の精米能力、精米への対応についてどのようなお考えでしょうか。
大臣 その心配もあるのはそのとおりなので、先日、卸の業界団体全米販の皆さんともお話をさせていただいて、全米販の方からは全面的に協力をすると、そういうふうにお申し出をいただいておりますので、農水省と卸の関係の皆さんとも一緒になって、どこでどれぐらいの余力があるか、こういったことについても一緒になって進めていければというふうに思っています。そしてもう一つ、この精米の課題を解決する手法の一つは、玄米のまま受け入れていただける方には、そのルートを作るっていうことだと思います。なので今回、今日から始める新しい随意契約の対象に、店頭に精米機をお持ちの町のお米屋さんには玄米を提供して、この引き渡しをして、店頭でお客様の需要に応じた扱い方をしていただくということになっています。なのでこういったことも見ながら、精米の稼働がさらに高まって、結果、世の中に備蓄米がより早く、そして多様な選択肢が広がることを、私としては後押しをしていきたいと思います。
記者 昨日、随意契約の説明会が行われたかと思います。その質疑応答の中で消費者と事業者の違いに関する質問が相次いだ際に、農水省の職員と思われる方から、「しつこく、しつこく聞いてこられるので」や、「定義をもう一回言ってあげて」との趣旨の発言があったと取材でわかりました。不信感を抱きかねない発言かと思いますがこの事実確認と大臣の受け止めをお願いいたします。
大臣 昨日、開催された政府備蓄米の売り渡しに係る説明会において、職員同士のやりとりの中でご指摘いただいたような不適切な表現があったと聞いています。当該職員には、上司から厳重に注意を行って、本人も大変反省しているというふうな報告を受けています。私としては、この職員の発言によって、すごく嫌な思いをされた参加者の方がいらっしゃったとしたら、大臣として、私がお詫びをします。本当に申し訳ありませんでした。私としては、職員の皆さんが、私が就任以降、本当にこのスピードと、大変な業務量についてきてくれている中で、感謝の気持ちしかありませんが、疲れもわかります。だけど、対応は丁寧にしなければいけません。しっかりと今回のことを反省を胸に、前を向いて頑張っていただきたいと。そして改めて、このことについて、もう二度とこういったことがないように、今日の説明会も真摯に誠実に対応するように、私から改めて、職員全体に徹底させたいと思います。