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施策・政策

小泉農相「トランプ関税の影響調査中」

 小泉進次郎農相は7月8日の閣議後定例会見で、25%の〝トランプ関税〟による影響を聴き取り調査していると明らかにした。幅広く農林水産物・食品の輸出に関わる生産者、食品製造業者、輸出事業者などから聴き取りを実施しているもので、対象は7月7日時点で延べ497件にのぼる。ただ小泉農相は〝トランプ関税〟の「最大のポイントは、交渉続行ということだと思う」との見解を示している。
 また米穀機構DIの急落(既報)に対しては、「政策効果が出ているということ」と指摘しながらも、「今ここで手を緩める状況にはない」とした上で、「マーケットの環境が落ち着けば、備蓄水準を戻す。併行して農家の皆さんの経営安定に繋がるセーフティーネット構築に向けた議論を進める」と、従来の主張を繰り返した。
 一方、去る6月20日の意見交換で農協に「概算金から買取へ」の基本路線変更を求めた点(既報)を「これから農家の方がリスクを負うのでなく、農協がしっかりリスクを取って売っていきましょうね、というメッセージ」と表現し、「買取に反対する声ばかり報道される」とチクリ。「実態として令和5年度(2023)米を扱った472農協のうち、222農協が買取集荷を実施している。47%だから、あと4ポイントで過半数」と指摘した上で、「こういった状況が正確に世の中に伝えることが大事」とも。

一問一答(7月8日、閣議後定例会見から抜粋)

 大臣 本日、私からは1点ご報告がございます。明日(7月)9日に茨城県及び埼玉県、そして11日に三重県において、米の生産現場で取り組んでおられる方々を訪問し、現地視察・意見交換をしてまいります。消費者の皆様が安定的に米を買えるようにすることと、意欲ある生産者の皆様の所得が確保されること、これを両立させる新たな米政策の実現に向けて、現地を見せていただきながら、率直な意見交換をさせていただく予定です。今後もこうした機会を積極的に作りたいと考えております。詳細は、この後プレスリリースいたします。今日は、私からは以上です。

 記者 アメリカの関税政策について、1問お伺いさせていただきます。アメリカのトランプ大統領が日本への関税について、8月1日から25%を課すと通告しました。この交渉期間が延長されたことと、この関税率に対する受け止め、また農林水産物や食品に関する交渉の状況や影響についてお願いします。

 大臣 まず、トランプ大統領が今回書簡を日本含め、各国に発信をされて、最大のポイントというのは、交渉続行ということだと思います。8月1日、そして今日も発信をされていますが、8月1日で100%確定かというとそういうこともないということですから、まさに国益をしっかりと守るために、石破総理、赤澤大臣、守るべきものは守る断固たる決意で交渉に臨んだ結果だと思います。引き続き、しっかりと交渉に対して、日本が守るべきものは守るという姿勢で取り組むべきだと考えております。なお、この影響に対する分析、そしてまた対応ということでありますが、今、農林水産物・食品分野におけるアメリカの関税措置による輸出への影響について、7月7日時点で延べ497件の聴き取り調査を実施をしています。直近本年5月のアメリカ向けの輸出額は対前年比プラス10%となっているものの、事業者からは総合関税がこれ以上の水準になれば輸出への影響は避けられない、こういう声も伺っておりますので、今後の輸出への影響はしっかり見ていかなければならないと思っています。アメリカは世界第1位の輸出先国であります。昨年の輸出額は2,429億円ということで、全体の17%をアメリカが占めています。影響を受ける事業者の声やアメリカ内の情報を集約・分析をして、必要な対策に万全を期してまいりたいと、そういうふうに思っております。

 記者 今お話があった497件の聴き取り調査というのは、農林水産物・食品の輸出業者に対する聴き取りということになるんですか。

 事務方 幅広く輸出に関わる生産者や食品製造業者や輸出事業者などから聴き取りを行っております。

 記者 米の需給と価格の見通しについて伺います。米穀機構が先日公表した米の需給と価格の見通しなんですけれど、統計を始めて過去最大の下げ幅ということで、50を基準に、高ければ価格が高くなる、需給が締まるということで、50も下回って、フェーズがちょっと変わったようなタイミングだと思うんですけれど、これについての受け止めと、もう一つ、今備蓄米の放出はじめ、米の価格を下げるための対策をとられていますが、これのゴール、これを転換する上での大臣の判断基準をあれば伺わせてください。

 大臣 ご指摘があった米穀機構が毎月公表している調査結果において、前月から30ポイント下降し、43となったと承知をしています。今回の調査結果では、米の取引関係者が判断を行うにあたり考慮した要因を国の政策とする回答が49%になっていますので、随意契約による備蓄米の販売が考慮されたことと、政策効果が出ているということだというふうに思います。今回、私が大臣に就任した当初は、本当に下がるのかと、そういった声が圧倒的で、この米価高騰を何とか抑えられるのかということの指摘から、今まさにご指摘があったとおり、本当に下がってきたという新たな受け止めの中に入ってきたというのは、政策としては、方向性として、しっかり目標に向けて、現場の実態が変わってきたということだと思っています。結果が出ていることだと思います。今、この備蓄米の放出によって消費者の米離れ、そして、海外から120倍入ってきている外国産米が棚を占めていくということを食い止める。こういったことに加えて、しっかりと生産者の皆さんに、まずはこの米価を落ち着かせることによって、生産者の皆さんの、安心して所得を確保していけるような方向性を両立をさせていくんだと、こういったことをしっかりと伝えていきたいと思います。現時点でここで、例えばPOSも昨日(5㎏)3,600円台になりましたけども、3,600円になったとはいえ、昨年と比べたらまだ、あまりに1年間で比べたときに高いという水準は変わりはありません。ですから、ここで手を緩めるかというと、今その手を緩める状況にはないと思いますが、いずれにしても、今までずっと言っていることは、このマーケットの環境が落ち着いたときには備蓄水準は戻していきますと。こういったことに加えて、農家の皆さんの経営安定に繋がるようなセーフティーネットを構築をする。この議論というのは、令和9年度(2027)以降の新たな水田政策の構築に向けてやっていきますので、しっかりとそこの議論も進めていきたいと思います。

 記者 農地の大規模化についてお伺いします。米増産への転換には農地の集約であるとか、大規模化を進めて生産性を高める努力が必要だと思います。これまでも農地バンクの取組などで成果が上がりつつあるところだと思いますが、まだ道半ばの部分もあると思います。現状の課題と今後の対応の方向性について、基本的な大臣の考えをお聞かせください。

 大臣 大規模化・集約化というのは、これは与野党、今選挙真っ最中で、時に違いを際立たせるような主張が繰り広げられる局面ではありますけど、大規模化・集約化については、これは与野党共通の思いだと思います。一方であたかも、大規模化・集約化を語ると、小規模な農家や棚田や中山間地に対しては切り捨てるのかっていう、相変わらずの報道や、受け止めというのが流されるというのは、これは誰の得にもならない、誰の幸せにもならないことなので、全くそんなことはありません。大規模化を進められるところ、そして分散されているところを集約をしていくこと、これは間違いなく必要なことですし、それをもって集約できないところまで全部集約をしに行くとか、そういったことではなく、小規模なところは小規模なところで守り方というものがありますので、こういった理解がちゃんと進むようにしなければいけないなというのは、まず思います。その上で、農地中間管理機構、農地バンクがしっかり機能して、集約化などが進むのが課題ですが、やはりここの評価については現場で相当地域間でばらつきがある。やはり農業者の方からは、もっとしっかりとこの農地バンクが機能するように改善をしてもらいたい、この声が相当上がっています。ですので、やはりそういったところに向けて、我々として見直すべきは見直す、こういったことが必要だと思います。そして将来地域計画を見れば、全国平均で3割の農地に耕作者がいない。こういったことを考えても、やはり農業者が少なくなる、減るということを前提に、それでもなお農地を守る、そして次の世代につないでいくっていうことを考えたときに、より効率的な農地のあり方、そして農業者が働ける環境、これがいかに必要かっていうことは、これは強調しすぎることはないぐらい重要なことだと思います。将来の担い手が不足する地域では、重点的に新規就農や他の地域の農業法人、企業の参入といった、外部からの担い手の誘致と新規就農や外部からの参入のハードルを下げるべく、機構が農地をまとめて引き受けて、基盤整備等の条件整備を同時並行で進めることとして、機構の機能発揮に向けた仕組みを含めて、必要な対策を検討していきたいと思います。

 記者 (7月)9日に茨城県の方でJA(農協)の組合員さんと意見交換を行われるということですけれども、大臣は今までJAの改革ということにもたびたび言及されていますが、JAグループのどのようなところに課題があって、どうまずは変わっていくべきと考えていらっしゃるか、改めてお願いいたします。

 大臣 これは今回JAの皆さんとも一緒になって意見交換会を開催をさせていただきますし、JAの青年部、全青協といいますけれども、こういった皆さんとも今までも対話を重ね、そして今回、私が今、選挙で全国を回っている中でも、例えばこの前秋田県では、秋田県の青年部の方が、意見書をまとめていただいて、それを直接私に渡してくれて、そのあと私は電話で秋田県の青年部の会長とお話をさせていただきました。また、昨日は徳島県にも行きましたが、元徳島県(農協)中央会の会長、中西さんというんですけども、中西さんわざわざ駆けつけてくれましてね、頑張れと。特に、私が昨日行った阿南市は、徳島の中で一番お米を出す地域なので、あと早場米でもう今月末から出すと。こういったところで頑張っている方々との意見交換は、これからも重要なことだと思っていますし、その地域で求められている、地域の農業者から求められている農協が多く存在することも事実です。一方で、例えば私が最近ですと、概算金から買い取りへと、こういったお話をしている中で、報道に出る部分は買い取りに反対をしている会長さんの声ばかりを出すんですけど、実態は全く違いまして、皆さんにも提供できればというふうに思いますけど、今、令和5年度において、米の取り扱いのある農協、これ全部で472農協あるんですが、この約半数にあたる222農協において買取販売を実施しているんですよね。なので、まるでこの概算金を、もう絶対守らなければいけないんだという人たちに対して、概算金はやめて買取にしましょうって言っているんじゃなくて、もうすでに約半数が買取になっていて、これから農家の方がリスクを負うんじゃなくて、農協がしっかりリスクを取って売っていきましょうね、というメッセージの中で、私が言っていることは、実はすでに半分の農協はそれをやっていると。あと4%(ポイント)で過半数を超えます。今、買取と委託と両方含めてやっているのが47%ですから、こういった状況が正確に世の中に伝えることが大事だなと思います。

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