小泉進次郎農相は7月24日、関税交渉の結果としてMA(ミニマムアクセス=最低義務輸入)米の枠内で輸入拡大することになったアメリカ産米を、「主食用に回さない」方針であると明らかにした。同日午後2時頃、X(旧ツイッター)に投稿した記事のなかで明言したもの。
米に対する日本の国境措置は、一律㎏341円の(関税〝率〟ではなく)関税で構成されている。ただし、これとは別に、WTO(国際貿易機関)協定によって年76万7千tのMA枠が設けられており、こちらは無税。このうち主食用に仕向けられるのは最大でも年10万t(SBS枠)で、残る66万7千tは主食用以外の用途に仕向けることになっている。小泉農相が「主食用に回さない」と明言したということは、SBS以外のMAの枠内でアメリカ産米の輸入割合を拡大する――ことになる。
これが意味するところは、もちろん外国産米の輸入量を拡大するわけではないから「国内農業を犠牲にしない」ことに繋がるのだが、もう一つ重要な意味がある。
ここまで62万tを放出した政府備蓄米の在庫が払底しかかっており、令和7年産米生産量の大幅増加が見込まれるなか、生産者団体側から政府買入の増加、政府備蓄米在庫の回復を迫られることが確実視される。しかし政府買入によって過剰米を隔離すれば、せっかく備蓄米の放出によって「冷やした」国産米相場を再び高騰させることになる。
そこで国産米に近い中粒種「カルローズ」を主体としたアメリカ産米の輸入を増やし、しかも即座に主食用には仕向けず在庫しておけば、備蓄米在庫の補填材料にはなる。これなら生産者団体側から政府買入の増加を迫られても、「在庫は十分にある」「まだ買い入れる環境(相場)にない」と突っぱねることが可能だ。
小泉農相が投稿したX記事(全文)
今朝の朝刊各紙。日米合意のコメについて「輸入拡大」「輸入促進」と大見出し。誰のためにこんなメッセージを強調したいんだろう…。合意の最大のポイントは「77万トンの総量維持」「主食用米にも回らず」「更なる輸入米増加阻止」です。日本の交渉チームは「農業を犠牲にしない」という交渉姿勢を有言実行で最後まで守り切ってくれました。アメリカのコメは増えるけど、今まで通り77万トンの枠内であり、外国産米の輸入量は全く変わりません。主食用米にも回りません。農家の不安にどう向き合うのかといつも質してくるメディアが農家の不安を煽る報じ方になる。農業分野に限らず「不安ビジネス」は誰も幸せにならない。赤澤大臣を筆頭に、交渉チームの皆さん、本当にお疲れ様でした。