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施策・政策

随契米放出が奏功したアメリカ産米の値下げ販売

 小泉進次郎農相は8月1日の閣議後定例会見で、「随意契約による政府備蓄米の放出を行った結果」として、アメリカ産米の値下げ販売に表れたと指摘した。ここで言うアメリカ産米とは、無税の国際約束枠で入ってきたものではなく、枠外で㎏341円の関税を払って民間輸入された米を指す。民間輸入の外国産米は、「最新(6月)の数字だと確か(前年比)250倍もの量が入ってきていることは事実。しかし、この6月の民間輸入2万tがいつ契約されたかというと、2月から4月くらいに契約されたものが多いのではないかと考えられている。当時は国産米が高止まりをしていたのだから、(安い)外国産米を入れたら売れるだろうと考えていたのだろうが、そこへ随契米が出てきて、(外国産米の)優位性が失われた。国民の皆さんが出来れば国産米を食べたいと思うのは当然だから、優位性の失われた外国産米が売れなくなり、これは下げるしかない、となったのではないか」と小泉農相は指摘。その上で、「以前から申し上げている通り、外国産米の流入を防ぐために随契米の放出をしたのだから、生産者の皆さんにとっても(随契米の放出が)プラスなことだと言っていたことが、アメリカ産米の値下げということに表れてきたのではないか」としている。
 一方で小泉農相は、関税交渉の決着を受けてアメリカ産米の輸入増を表明している。一見これと矛盾するようにも見えるが、そうではない。アメリカ産米の輸入増はあくまで無税の国際約束の枠内での話だし、「主食用としては入れない」と明言しているためだ。逆に言えば、民間輸入の増加を防ぐためには、今後の国産米価格をいかに上げないかが重要になってくることになる。

一問一答(8月1日、閣議後定例会見から抜粋)

 大臣 本日、私からは2点ご報告があります。1点は本日の午後、「農林水産物・食品分野に係る米国の関税措置対策チーム会合」、これを開催して、私も出席をいたします。この会合では、アメリカの関税措置に関する日米間での合意を受け、農林水産省が一丸となって、我が国への影響分析、合意の履行状況の進捗管理、そして現場への丁寧な説明を行うことを指示をいたします。
 そして2点目は、現地視察についてであります。まず、先日のカムチャツカ半島付近を震源とする地震による津波被害を受けたカキ養殖施設について、関係方面との調整が整い次第、庄子政務官を現地に派遣をする予定です。さらに、現在の少雨傾向により渇水・高温による水稲の生育等への影響が懸念されていることから、こちらも関係方面との調整が整い次第、これは私自身が現地を訪問したいと考えております。いずれも詳細につきましては、準備が整い次第、本日中にもプレスリリースによりお知らせいたします。今日は冒頭は、以上2点になります。あとは幹事社の方からよろしくお願いします。

 記者 私からは2点お願いします。1点目は、まず本日未明に、(アメリカが)対日関税15%ということでトランプ大統領が大統領令に署名しました。7日後に発動する予定という情報ですけれども、まずこの受け止めをお聞かせください。

 大臣 今ご指摘がありました大統領令ですが、内容をしっかり精査したいというふうに考えております。その上で、今後の輸出への影響については引き続き事業者の方の声、そしてアメリカ内の情報の収集・分析を通じて、より具体的に把握して、事業者が輸出を維持・拡大できるように後押しをしていきたい、そういうふうに思っています。こうした取組を徹底していくためにも今日、チーム会合に出席をして、我が国への影響分析、そして合意の履行状況の進捗管理、現場への丁寧な説明を行うことを指示したいと考えております。

 記者 もう1点が、今の現地視察のお話ありましたけれども、今日久しぶりに雨も降っていて、渇水の懸念ということは引き続きあるとは思うんですが、この辺、渇水・高温の農林畜産物への影響を、改めまして現状の認識をお聞かせください。

 大臣 今、雨が降っているという話がありましたが、今都内は降ったり止んだりしている状況ですが、やはり水を求めている地域は都内以上に深刻になっている地域ありますので、最終的には雨が降ってもらわなければ、この深刻な渇水状況から脱することにはならないということはあると思いますが、だからといって天候次第、もう雨が降ることを願うだけというわけにはいきません。ですので、農水省としてできることは何でもやると、そういった思いで、今までにない補助事業、人件費も50%みますということも含めてやりますし、引き続き、これは現場も見ながら、何ができるかということを考え、そして実行していきたいというふうに考えております。

 記者 トランプ関税についてお伺いしますけども、先ほどアメリカから発表された資料をもとに伺いたいんですが、先般の日本政府が赤澤大臣とか小泉大臣からの発表では15%を超える品目については、元の税率に戻る。例えば牛肉だと26.4(%)に戻るというような話だったと思うんですけども、先ほどの発表を見ると、そのような記述になっているのはEUしかないのかなというふうに思うんですが、改めて今回発表を見て、日本政府側の認識としてはいかがなんでしょうか。

 大臣 これも含めてよく精査をする必要があると考えています。

 記者 去年産の米の需要について、当初より38万トン上振れたと思うんですが、受け止めをお聞きしてもよろしいでしょうか。

 大臣 今ご指摘のところは、去年24年産米(令和6年産米)が結果需要が38万t上振れたと、こういったことについてだと思います。現在これはわかっている数値をもとに、従来同様に機械的に計算をしたものです。この上振れ要因は何かということにつきましては、先日から私が申し上げているとおり、米の関係閣僚会議(米の安定供給等実現関係閣僚会議)、ここにおいて検証を行うことにしています。そして需要の見通しについては、昨日、この食糧部会でも私からも申し上げたとおり、やはりこの検証をしっかりやって、その上でしっかりと、需給見通しについては、この部会の方で出すべきだろうということなので、まずは検証、これが改めて大事なことだと思っております。

 記者 一方、米の調査結果で流通の目詰まりは確認されなかったとしていますが、今回のこの価格高騰の要因を現時点でどのように考えていますか。

 大臣 やはりこれも何度か指摘をしていますけども、やはり流通全体が多様化しているということと、農水省としても把握しきれてないところがあったことは事実だと思っていますし、また、歩留まりも影響しているところが一部あるということなどあります。ただ、全体としてあらゆる要因をしっかりと検証した上で、この高騰の要因は何だったのかということをお示しをする必要がありますので、今、最終的にその詰めの作業をやっておりますので、そこを全体像を関係閣僚会議でしっかりと報告をし、そして新しい方向に同じような米価高騰が起きないように対応していく施策をしっかりと強化していく。こういったことが大事なことだと思っております。

 記者 3点お伺いしたいんですが、まず関税の影響について、農林水産物・食品については多くが今年4月まで無税だったものが10%になって、また15%になると。こうした輸出への影響は、生産者からも懸念する声がありますが、どのように向き合っていきたいとお考えでしょうか。あと、お米のミニマム・アクセスについてなんですけれども、中粒種を増やす方向は示されていたんですけれども、この入札方法については、産地を指定せず入札をするのか、または国指定を検討しているのか。また、先ほどお話があった渇水の視察については、なかなかお米が実らないと影響が見えにくい部分もあると思うんですが、今どのようなことを把握できたらとお考えか、以上3点です。

 大臣 まず輸出につきましては、この前、食糧部会でも、生産者の立場で、また輸出を長年頑張って歯を食いしばって、輸出先国のマーケットを開拓してきた方からも、今後の輸出に対する不安、そしてまた、国としてはどういうスタンスかということも含めて、お話がありましたので、私からは、今まで積み上げていただいた努力を無にしないと。これから15%ということがあっても、最終的に中長期を見れば、日本が人口減る中で、海外のマーケットをとっていくということは、農林水産業にとって極めて重要なことですので、その方向性には全く揺らぎはありません。しっかり強化をして、そして15%の影響も含め、今後どういったことが必要かということはきめ細かく把握をしなければいけないと思いますので、今日のチーム会合の、出席にも状況把握の指示をしっかり出しますし、今後の影響をよく見て、必要とあれば、どういったことができるのかを農水省としても考えるのは当然のことだと考えております。
 そしてMA米、これを産地指定をするのかしないのかということでありますが、結論から申し上げると、それは最終的に農水省の責任において、その時の需給の状況を勘案して判断をするということになります。
そして3つ目が渇水。これは全国的な状況を、アンテナ上げて、例えば一部のダムで貯水率がゼロとか、こういったところも出てきている中、実際に何が起きているか。特に米、そしてまた他の農林水産業関係にどういった影響が出るかは今、全省を上げて状況把握に努めているところです。ただ一方で、やはり早めに対応して、この日照り、渇水などが最終的に、特に米について申し上げれば、最後に出てくる全体の生産量に対して、どこまでの影響が出るのか、こういったところが多くの皆さんの関心事でもあると思いますし、私自身もこの米の問題に特に注力している中では、やはりそこが一つの、よく見なければいけないポイントだろうというふうに思っていますので、そこの影響ができる限り出ないように対応していくための農水省としての補助事業ですとか、さまざまな支援措置、こういったことは、出来得る限りやっていきたいというふうに思います。なので、最終的にやはり雨が降らなければ、この状況から脱することはないということはあるかもしれませんが、そこまで何もしないということは全くありません。ですので、よく現状を見て、そして、私だけではなく政務三役含めて、よく現場の状況を把握しながら、スピード感を持って対応していきたいと思います。

 記者 2点目についてなんですけれども、主食用米ですけれども、大手小売では、アメリカのカルローズがなかなか売れずに大幅に値引きをする動きも出ています。他国の中粒種と比べてアメリカ産の優位性が低いとあれば、産地を指定せず中粒種を入札をするのが妥当と考えますが、いかがでしょうか。

 大臣 今ご質問のあったアメリカ産米が700円の値下げ、これが起きているということは、私は、一つは随契米の放出の効果だと思っています。やはり昨年と比べて250倍、今最新の数値で言うと、米の民間輸入が、あるんですよね。これが実際6月の民間輸入の2万tがいつ契約されたかというと、その前の2月から4月ぐらいに契約されたものが多いのではないかというふうに考えられています。だから当初、それだけ高止まりをしているから外国産米入れたら売れるだろうと、そういうふうに考えたと思うんですよね。だけども随契米が出てきて、価格優位性があまりなくなって、国民の皆さん、できれば国産米食べたいという方がいるのは当然ですから、そこに対してのピンポイントで玉を放っていくという形になった結果、なかなかアメリカ産米は売れないな、ということで、これは下げるしかないということになっていると思いますので。ずっと言っていますけども、外国産米の流入を防ぐために随契米の放出をしていて、これは生産者の皆さんにとってもプラスなことだと言っていることが、こういった明確なアメリカ産米の値下げということに出てきたことは、その現れなんじゃないでしょうかね。

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