米価高騰の要因は、生産量(出回り量)と需要量見通しの読み違いにあり、特に目立った流通の目詰まりはなかった――小泉進次郎農相は8月5日、米の関係閣僚会議(米の安定供給等実現関係閣僚会議)に、「今般の米の価格高騰の要因や対応の検証」結果を、そのように報告した。その上で、今後は「余裕を持った需給見通し」を作成し、「増産へ舵を切る政策への移行」を改めて表明した。
米価高騰の要因
生産量の読み違いは、令和5年産、6年産と2年連続して「精米歩留まりが低下」している事実を考慮していなかったことが原因。その量は、令和5年産で▲10万t、令和6年産で▲6万t。
需要量の読み違いは、主に3点に及ぶ。第1に、「精米歩留まりが低下」したことから、必要な玄米量が増加したこと。その量は上記の裏返しで、令和5年産+10万t、令和6年産で+6万tとなる。第2に、インバウンド需要の増加。令和4/5年2万1千t、令和5/6年5万6千t(+3万5千t)、令和6/7年6万3千t(+7千t)と推計した。第3に、家計購入量の増加。総務省・家計調査結果(二人以上の世帯)で令和4/5年215万4千t、令和5/6年217万4千t(+2万t)、令和6/7年228万1千t(+10万7千t)と推計した。
以上により、単年需給で見た場合、令和5年産で▲23万t、令和6年産でも37万t「不足していた」。
一方で民間在庫は、「多くが既に売り先が決まっているものであり、緊急事態に対応できるバッファになり得ない」。この民間在庫の減少に伴い、流通段階では、翌年度の端境期に米が不足するとの不安から競争が発生。特に大規模集荷業者から仕入量を削られてしまった卸売業者が、新規の調達ルートを開拓したり、スポット市場から、比較的高値の米を調達せざるを得なかった。
ところが農林水産省は、「生産量は足りている」(玄米ベースで考えているため、精米歩留まりの低下を考慮していない)との認識の上、「需要量が増えた翌年は反動で需要が減少する」との過去の経験則から「中長期的な需要量は減少トレンドにある」と思い込んだ。そのため、「流通実態の把握に消極的であり、マーケットへの情報発信や対話も不十分」だった。また「『不作時にのみ放出する』ルールに縛られ、政府備蓄米の放出時期を遅延」させてしまった。こうした対応が、特に卸売業者の不安感を払拭できず、「さらなる価格高騰を招致してしまった」。
今後の方向性
①需給の変動にも柔軟に対応できるよう、官民合わせた備蓄の活用や、耕作放棄地も活用しつつ、増産に舵を切る政策への移行
②農地の集積・集約、大区画化や、スマート農業技術の活用、新たな農法(節水型乾田直播など)を通じた生産性の向上
③アメリカの関税措置による影響を分析しつつ、増産の出口としての輸出の抜本的拡大
④精米ベースの供給量・需要量や消費動向の把握を通じた、「余裕を持った需給見通し」の作成と消費拡大
⑤流通構造の透明性の確保のための実態把握や流通の適正化を通じた消費者と生産者の納得感の醸成
⑥作物ごと生産性向上への転換、環境負荷低減に資する新たな仕組みの創設などを通じた水田政策の見直し(令和9年度)