小泉進次郎農相は8月29日の閣議後定例会見で、随意契約による政府備蓄米の未引渡玉10万tをめぐって、引き続き大半の業者がキャンセルではなく引き続き全量配送を希望していることを明らかにした。
〝随契米〟の未引渡は8月20日時点で「251社」約10万tが8月26日の公表だったが、「改めて精査したところ『260社』だった」ことが判明している。発表によると8月28日の正午現在までに234社(+21社)の意向を確認できている。それによると「引き続き全量配送を希望」が215社(+16社)、「全量キャンセルを希望」が11社(+4社)、「一部配送、一部キャンセルを希望」が8社(+1社)で、「前回(8月26日)お話をさせていただいた(際と)傾向は変わらず、引き続き全量を配送希望される方が圧倒的」とコメントしている。
〝随契米〟の募集は本来の引渡期限である8月20日で受付を停止。この時点で契約ボリュームは28万tに達しているものの、うち10万tが引渡できていなかった。このため農林水産省は8月末までとしていた販売期限を「引渡後1か月以内」に延長。同時に未引渡玉の扱い(このまま引渡作業を続けるか、キャンセルするか)の確認作業を進めていた。
一問一答(8月29日、閣議後定例会見から抜粋)
記者 私からは令和8年度(2026)の概算要求について伺います。8月末の提出に向けて、今最終の取りまとめの状況かと思いますが、農政の転換点である今、どういったところに重点を置いて求めていかれるのか、大臣の考えをお聞かせください。
大臣 令和8年度概算要求については、米の需要に応じた増産の実現、そして森林資源の循環利用を進める「森の国・木の街」の実現、そして、将来にわたって資源の持続的利用を確保する水産業の強靱化、この3つなどを柱とする予算要求をこの後、省議で決定をいたします。その上で、農業構造転換集中対策等について事項要求として予算編成過程で検討してまいります。特に農業について触れると、今回、米の需要に応じた増産の実現という関係で言えば、新規で40億円、米の需要拡大から、この中には輸出、そして米粉、また、昨日私は福島で乾田直播、この現場の視察もしておりますけども、こういった新しい取り組みについても後押しをする予算を計上、要求する予定です。そして、今回、特に令和の米騒動といわれる、この局面の中で問われた、我々自身にも突きつけられた一つは、いかに精度向上を、統計やデータ、しっかりとやるかっていうことです。こういったことについても8億円要求をして、まさにデジタル技術の導入や、生産者の皆さんのデータを活用していく方向、こういったことについても予算としても表れた形になっています。そして特に、これから、昨日も福島の米農家さんとも大分話題の中心の一つになりましたけども、本当に農村で人がいなくなる。昨日、40歳の農家の方が参加してくれましたが、その地域でその彼が最年少だというふうに言ってました。まさにこの地域の中でしんがりを勤めるような、本当に大変なご苦労の中でやってくださっている方が何とか次の時代にもつなげたい。その中で直接言われたことの一つは、やはり(田の)枚数が多過ぎる。もう一人で100枚、こういったところではなくて、やはり、畝を取ったり、より大きな効率的な形の区画整理などもやって、そして基盤整備もしっかりやって、少ない人手でも、これからも米づくりを営める環境を作りたい、その後押しをして欲しい。これがまさに基盤整備や集約化に係るところですから、今回予算としては集約化の中間管理機構の関係もそうですけれども、約4倍予算を要求しています。こういったことに加えて、私は大臣になる前に水産調査会長でしたから、水産について一言触れば、今回のポイントでは明らかなように、資源調査や評価の高度化、こういったものを一番最初に持ってきている、ある意味、攻めの水産庁の政策に切り替えるということを、調査会長時代からも言ってきたことを形にしているつもりです。こういったことをしっかりと、最終的には財政当局の理解を得ていくのが、これから農水省の職員の皆さんと頭一つになって向かっていきたいと、この後省議で正式に決定をしたいと思います。
記者 大臣の意気込みと、それから期待は今のお話でよく分かったんですけれども、概算要求を見る限りは、水田の転作奨励制度などもしっかり残っていて、40億円とおっしゃいましたけれども、それに使われている金額は、それを上回るものではないかと思いますし、概算要求の、概要発表になったものを見る限りでは、どこが変わったんだろうというふうに受け取る国民の方々も多いと思うんです。なぜ転作奨励金がまだ残ってるのか、急に全部止められないのかもしれませんが、そこのご説明はきちんとしていただかないと、誤解を受けるのではないかなと思います。
大臣 今の土屋さんのご指摘は、令和9年度(2027)以降に米政策を大きく転換をしていくと、これは政治の中のスケジュール、そして現場の農村地域、農業者の皆さんとも共有されているスケジュール感でもあります。仮に今、土屋さんがおっしゃったような、これは水活(水田活用の直接支払交付金)と言われるものですけれども、この水活を変更するということは、まさにこの在り方とセーフティネットの在り方を、同時にこれから議論をして、令和9年度から動かしていくということになりますので、この今回の概算要求は今そこに向けての最終年度に近い発想でやっていくものですから、土屋さんのご指摘のように、まだ大きくそこは動かすときじゃないと。ただ、大きく動かすときは令和9年度ですから、そこに向けての一歩として、先ほど私が紹介をしたような、40億円の予算なり、そして集約化の予算の4倍だったり、こういったことは位置付けています。おっしゃっていただいたように、大きく変わるというところが、この農業現場で政策的には転換点ですけども、様々な制度が今までも歴史的に続いている中で、いかに現場の混乱を大きくしない形で新たな方向性に繋げていくか、そういったことからすれば、今回の予算もそのように見ていただければ、正当な評価が得られるのではないかなというふうに思っております。いずれにしても丁寧に説明したいと思います。
記者 もう一つ、米を輸出すると、そこも大きく舵を切るんだということをおっしゃっているわけですけれども、これは首相ですかね。輸出手続きが余りに煩雑であるという声が関係者の中には非常に強いと思うんですけれども、その点について簡素化する、あるいは無くすというようなことは、お考えの中にあるのでしょうか。
大臣 まず輸出を後押しするというのはこれ間違いなく必要で、これは政府としてもしっかり進めますし、全農なども相当これから気合いを入れてやっていくっていうことは既に発表されています。一方で、自ら歯を食いしばってマーケットの開拓を頑張ってこられた事業者さんもいらっしゃるので、そういった方々が、今回の日米合意で15%の関税がかかったとしてもなお、それを乗り越えていけるだけの後押しをしっかりやりたいと思っています。その中の一つに、様々な手続きの簡素化なり、後押しができるところがあるかは、これからよく現場で何が起きているか、これ国ごとによって、税関当局の扱いだとか、いろんなことが変わりますから、そこはよく現場を理解をした上での対応だと思います。無くすっていうふうに土屋さんが言われましたけども、その無くすということは、一体何を無くすということを言われてるのかというのが分からないですけど。
記者 農水省への届出制ですね。
大臣 農水省への届出制をなくす、それは輸出をする上での届出を、もう全部なくしてくれっていうことですか。
記者 まあ簡素化なんでしょうけれども、でも無くすことも視野に入っていってもいいかもしれないと思うんですね。
大臣 仮に、そのような事業者さんがいて、土屋さんに今そういうお話をされているとすると、どういった状況に直面をされている中でのそういった想いなのかっていうのは、我々もどういうことなのかっていうことは把握する必要があるかもしれませんが、いずれにしても、この前私も出席をしたアメリカの日米合意の説明会、こういったことについては、リアルとオンラインで約600名参加をいただいていますが、そういったことや、様々な説明会なども通じて、よく輸出に取り組んでいる方のお話を聞いた上で、必要なことがあれば対応したいと思います。
記者 今の質問に関連して、先週も聞いたんですが、何で前倒ししないのかというのが疑問なんですが、福島で農家の方に聞かれてですね、来年度から直接支払とか所得補償など、大胆な米増産に舵を切ると政策を打ち出すという声は出なかったんでしょうか。
大臣 出なかったですね。
記者 40歳の方が最年少でですね、今すぐにでも若い世代にいかに引き継ぐかが重要な課題になると思うんですが、それでも前倒しして欲しいとか、直接支払をすぐにでもやって欲しいという声は出なかったんですか。
大臣 出なかったですね。
記者 必要性も感じてないと、大臣自身が。
大臣 横田さんはそこに想いを持たれているのはよく分かるんですけど、昨日もしも現場に来ていただいていたら、どういった意見交換だったかの一端はご理解いただいたと思います。昨日は、特にやはり福島の中でも本当に気候が変わってきて、暑いという、この暑さが今までとは違うので、いかに高温耐性の品種に切り替える後押しができるかという話題だったり、それとあとは農家さんからすると、横田さんのような、この今の令和9年度(2027)っていうことを前倒しをして欲しいっていう声は本当にそこの前倒しの声は直接はあまり無くて、むしろ、米価の安定を求めてますよね。だからこの米価の安定で、今ものすごい高止まりをしていますけれども、この一時期は高いけどまた安くなるっていうことではない、長期的な見通しが立つような、安定した今後の環境作りをやってもらいたいと。そのためには、やはり今のまずこの米価が落ち着くような状況を作っていくために、私は備蓄米の放出も含めて、今、目の前の課題解決に向けた取り組みをやっています。一方で、それだけでこの状況が安定化をするとは私も思いませんので、今後まさに総理も言っているような中長期に向けて、需要に応じた増産、この中で、量について、世の中も、お米、これは十分あるんだな、そういうふうに思っていただけるような環境をしっかり作ることだと思います。そうでなければ、これは、今日の日農さんの一面でも書かれていますけども、1ヶ月で、海外からの米の輸入が2.6万t、この数字は内訳を見ればですね、私今までずっと120倍とか言ってきましたけど、最近は250倍って言いましたが、何と今の数字300倍ですよ。その300倍の内訳の中で、特に顕著なのはアメリカのお米がその内の9割で何と2,000倍ですから。今、世の中で、棚を見れば国産米の方が圧倒的に多いっていう現状は変わらないと思いますが、外国産米は業務用として流れて、我々がどこのお米かなというふうに意識せずに食べている様々なご飯物の商品、この中に静かに入っている可能性があります。こういったことで、一度棚を奪われたり、一度商流ができてしまったら、そこを置き換えるのは大変なことです。だから、高ければ高いほど農家の皆さん(のため)になるんだっていうふうなことではなくて、この1年間に2倍、2.5倍、ハイパーインフレに近い状況で米の価格が上がっていることを、今の賃上げと物価が2%、3%でなだらかに上がって手取りがちゃんと農家の方にも届く、残る。そして、再生産が可能どころか、再投資が可能な米の状況を作っていく、農家の皆さんのために。そして、消費者の皆さんも安心して買える。この状況に向かっていくことが、私は一番農家さんも求められることだと思いますので、横田さんが言うような、もうとにかく前倒しを求めてるんだという声は、正直、現場と向き合っていたり、また一昨日はJAグループの幹部の皆さんが、山野会長はじめ来られましたけども、そのいただいた要望書、要請の中に前倒しというのは入っておりません。
記者 そういう事態だからこそ前倒したほうがいいんじゃないかと個人的には思うのですが。最後の質問で、総裁選前倒しについて、先週、質問が出ましたけれども、最終的には総理の判断だと考えたというふうにおっしゃいましたが、総理は報道によると、続投の意思が固いということは、前倒しの必要も無くて、とにかく米増産など政策実現に邁進するべきではないかというのが、大臣自身の考えと理解してよろしいでしょうか。
大臣 私もこの記者会見前倒しで終わっていいですか、って言いたくなるような。いや横田さんすごい持っていき方をするなと思いましたが、昨日の福島でも発言をしたとおり、一議員としてもしっかり対応を考えていきたいと思います。
記者 備蓄米についてお伺いします。先日の会見で引取りが進んでいなかった10万t、250社について38社の意向がまだ確認できていないという説明がありましたけれども、その後の意向の確認状況というのはいかがでしょうか。
大臣 前回そこについては、251社というふうに26日の段階で申し上げたんですが、20日の期限ぎりぎりの引き渡しなどを改めて精査したところ、260社だったということです。そして、現在この260社の買受者への連絡調整を進めていますが、8月28日12時時点で、234社の意向を確認をして、引き続き全量を配送希望が、前回は199社と申し上げましたが、215社、そして全量キャンセル希望が11社、一部キャンセル・一部配送希望が8社ということで、前回お話をさせていただいた傾向とは変わらず、引き続き全量を配送希望される方が圧倒的だという状況は変わりません。
記者 もう一点、米価、特に前年比ではまだまだ高騰している中で、その備蓄米の引き合いの状況というのは、現時点でどのように感じていらっしゃいますでしょうか。
大臣 これは様々な現場の状況があると思いますが、もう棚に並べれば必ず売れるという声も届いていますし、引き続き、今のところ新規の受け付けはしていませんけれども、新規でも扱いたいという声が届いているところがあることも事実です。そして例えば、この介護であったり病院であったり、こういったところについても、食費が相当上がっているので、やはり、備蓄米が、結果、給食の皆さんに対しても売り渡しの対象にしていますけども、そこがありがたかったっていう声に加えて、これがもしも切れたときに、例えば今介護の現場なども聞くと、今までよりも量を抑えて利用者さんにお米を提供したり、一部、他のものを混ぜたりっていう形もご苦労されている現状を聞きます。そういった状況をやはり聞くにつけ、この備蓄米の放出の中で、様々世の中の状況を見ていれば、米の価格をそこまで気にせずとも買える方だけではなくて、やはり2,000円じゃないと苦しい、経営もやはり安いものがないと、なかなか苦しい、そういったところがあることを受け止めて、政治としてやらなければいけない課題が大きいなと。農水省としては、今備蓄米の放出はしていますけども、これが備蓄米のことだけではなく、様々なところで、この物価高に対する、苦しい状況があるからこそ、参議院選挙において物価高の対策があれだけ多く問われたわけですから、そういったところは政府全体としてもやっていかなければいけない。このことは感じているところであります。