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小泉農相退任会見、米価安定化の流れ「後任に託す」

 小泉進次郎農相は10月21日、図らずも退任会見となった閣議後定例会見で、「過渡期」あるいは「踊り場」にある米価問題を後任大臣に託す考えを示した。これにより高騰米価の行方は、後任の鈴木憲和大臣が小泉農政を継ぐか否かによって左右されることとなった。ちなみに鈴木氏は今年6月、随意契約による政府備蓄米の放出を批判している。曰く、「本来国がやるべきことは備蓄米の放出ではなく、国民へ平等に行き渡る物価高騰対策だ。おこめ券の配布や現金給付などの対策をせず、備蓄米放出に踏み切っている今の農政に、私は疑問を覚えざるを得ない」と発言している。
 小泉〝前〟農相は退任会見で、この時点では決まっていない「後任が誰になっても、新しい大臣を出来る限り縛りたくない。今後の大臣としての方針は後任の方が決めること」と後任に託す考えを示した。ただし「一方で継続性が必要なことが出てくる」とした上で、「米価の安定化に向けたプロセスを辿っているとは考えているが」、「この有事の対応を乗り越えてくれた農水省の職員の力をもってすれば、必ず最終的な米価の安定と、安定供給に繋げていけると思っている」としている。
 また会見では随契米の放出による米価の下落を「一度上がってしまったものを安定化させるには、必要なプロセスだった」と従来の主張を繰り返した上で、「生産者にしてみれば、ようやく米価が上がってきたタイミングでの備蓄米放出を前向きに捉えられないのは当然。生産者を不安にさせてしまうと分かっていながらも、マーケットと対峙するなかでは苦渋の決断だった」と、少しだけ〝本音〟を吐露している。

一問一答(10月21日、退任会見から抜粋)

 大臣 最後の会見となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。本年5月の米における有事ともいえる状況下での就任以来、石破政権の農林水産大臣として、米価の安定を必ず実現するとの思いで、職務に全身全霊を尽くしてまいりました。 米について振り返りますと、新たに立ち上げた米チーム(米対策集中対応チーム)の下で、まずは、米価が高騰する中、国民の皆様が安心してお米を入手できるよう、「必要な米は全て出す」という姿勢の下、小売事業者等へ随意契約による備蓄米の売渡しを行い、就任10日後、5月31日に店頭での販売開始を実現しました。その後も、現場ニーズに応え、中食・外食・給食事業者や米穀の加工事業者等にも対象を拡大しました。さらに、米の流通実態の把握強化や収穫量調査の見直しを進めるとともに、米の関係閣僚会議において、価格高騰の要因や対応の検証を行いました。その結果等を踏まえ、これまでの「生産を抑制する農政」から、「需要に応じて増産する農政」に舵を切りました。POS価格は一時5㎏3,500円台まで低下しましたが、その後新米の流通に伴い、現在価格は過渡期・踊り場にあると思われ、今後も注視していく必要があります。このような中、令和7年産新米の収穫量、作付面積、期末在庫量の全てで近年最大の水準となりました。今後も市場を注視しつつ、需給と価格の安定に取り組んでいく必要は依然としてあるものの、これにより米の不足感が払拭されたといえる新たな段階に入ったと言えます。有識者の方もおっしゃるとおり、世の中の米の不足感を払拭し、米価の安定を実現するためには、一度、供給過剰局面を経る必要があると考えており、その観点では、現在は価格の安定化に向けたプロセスを辿っていると考えています。 これらの重要な局面において、農林水産大臣として、現場の声に耳を傾けながら、最終的な責任は自ら負う覚悟で、2万人の農林水産省職員とともに任務を遂行してまいりました。私が退任した後も、この有事に懸命に対応してくれた農林水産省職員であれば、間違いなく米価の安定・米の安定供給を実現してくれると確信しています。そして、令和7年産新米の収穫量の見通しが立ち、退任会見の場でもあることも踏まえ、ここで生産者の皆様に、改めてお伝えしたいことがあります。随意契約による備蓄米の放出は、これだけ価格高騰したものを落ち着かせるため、その実行はやむを得ず、苦渋の決断によるものでしたが、そもそも備蓄米を放出しないような需給環境が一番なのは言うまでもありません。米価が下がって苦しい時代も経験されてきた生産者の皆様の思いについては、ようやく米価が上がってきたタイミングでの備蓄米の放出を前向きに捉えられないとの思いは当然のことだと思います。一方で、㎏341円の関税を支払ってでも、外国産のお米を輸入することが多くなり、そのことが我が国の米生産の体力を奪っていくことに、強い危機感を抱いてきました。そんな中、時にマーケットと対峙する中で、生産者の皆様を不安にさせてしまうと分かっていながら、敢えて強いメッセージを発信し続けてきたことも事実です。現場での意見交換の際に、オフレコとして本音を話したことはありましたが、マーケットと対峙する中では公言は控えてまいりました。生産者の皆さんにおかれましては、この5か月、様々な思いがあったと思いますが、近年最大の収穫量水準となる令和7年産新米を生産いただいたことに、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。今後も、私がどのような立場にあっても、一人の政治家として、ことあるごとに現場の皆様と言葉を交わしながら、生産者の皆様に前向きに米の生産に取り組んでいただけるよう、食料安全保障の強化と、生産者の皆様の所得向上の実現に尽力してまいる所存です。 改めて、農林水産業・食品産業は、国民の皆様の命に関わる食の基盤であり、必ず成長する産業であると考えています。社会に大きく貢献する業界である農林水産業・食品産業に関わる皆様に対して心から敬意を表するとともに、国民への食料の安定供給に、引き続きご尽力いただけるようお願い申し上げます。 本日をもって農林水産大臣を退任することとなりますが、この濃密な5か月の経験を糧に、今後とも国政の発展、農政の発展に努めてまいります。この激動の日々を支えてくれた多くの関係者の皆様に、改めて心から感謝申し上げます。また、5月21日の就任から、10月21日、本日の退任まで、在任5カ月、154日。この間、定例、非公式を含め155回の会見を行い、マーケットとの戦いのために、積極的な情報発信に努めてまいりました。通常の大臣会見は、年間365日で100回程度行われますが、実にその3倍以上の会見に、朝も晩も対応していただいた記者クラブの皆さん、記者の皆さんにも、改めて御礼を申し上げます。5か月にわたり、皆様、大変お世話なりました。どうもありがとうございました。

 記者 先ほど、新たに取り組まれた米政策、いくつか挙げていただきましたが、まだ道半ばなものもいくつかあると思います。特に注目を集めた流通の可視化、これまだ実態解明できていない部分もあると思います。それと備蓄米の放出に関して、課題などを検証したい、検討会を設けて検証することも考えているということもおっしゃられていましたが、これもまだ結論が出ていないと思います。この2つについて、後任に引き継いでいくのか、それとも一旦白紙にして、これを続けるかどうかの判断も含めて後任に委ねるのか、考えを聞かせてください。

 大臣 後任がどなたになっても、これは新しい大臣のことをできる限り縛りたくないという思いからすれば、今後の大臣としてのどのような方針でやっていかれるかというのは、後任の方が決めることだというふうに思います。一方で、まだこの米の状況は最終的に、今価格の安定に向けた正常化のプロセス、安定化に向けたプロセスを辿っているとは考えていますが、今ご指摘のあったような継続して、明らかにしていかなければいけないようなマーケットの状況や、注視をしていかなければいけないことはありますので、おのずと継続性が必要なことが出てくることはもちろんだと思います。そういった中で、新たな大臣の下で、大臣らしさを発揮して、必ず、この有事の対応を乗り越えてくれた農水省の職員の力をもってすれば、私は必ず最終的な米価の安定と、安定供給につなげていけると思っています。

 記者 米と、米以外についてお伺いしたいと思います。まず米についてなのですけれども今、ご挨拶の中でもありましたように、生産者の中には、自分たちを無視して消費者を優先した5か月間だったというような声も聞かれております。先ほどのご挨拶の中で、大臣としても様々な思いがあったとお言葉があったと思うのですが、様々な思いというのはどのような思いを抱えて、この5か月間、生産者に対してなど、どういう思いを持たれていたか、まずお聞かせください。

 大臣 ご指摘のあったような声も含めて必ず出る声だろうなというのは、わかりながらもここは腹を決めて、割り切って対応しなければ、メッセージを発信しなければマーケットに変化は訪れないと、ここは飲み込んで対応せざるを得なかったところが、やはり新米の収穫量が確定をするまでの間の大臣としての葛藤。そして、本来であれば、農家の皆さんが、安心をするメッセージを出すべき立場であるものの、マーケットの安定に向けていくには、そのバランスを取るということをあえて封じなければ、これだけ不足感が根付いてしまって、そしてマーケットも高止まりをさせたいという、この力が非常に強いですから、そこの局面は変わらないと。なので、そこは全部飲み込んでやってきたというのが本音のところであります。北海道新聞からぜひ北海道の米農家の皆さんに、そういったことも伝えていただければなというにも思いますし、私もこれからどのような立場であっても、農家の皆さんと関係者の皆さんとの交流の中で、そういう局面だったんだというお話は、率直にさせていただければと思います。

 記者 米以外についても、麦とか大豆とか、その他生産者の方々は、この5か月間ずっと、大臣は「米担当大臣」と当初自認されたとおり、米一辺倒の政策で、自分たちは置いてけぼりにされたんじゃないか、というような声も聞きました。先ほどのご挨拶の中でも、米の成果がたくさんあり、それ以外はちょっと聞かれなかったなと思ったのですが、その点について何かやり残したこととか、反省点などございますでしょうか。

 大臣 農林水産業、農業・林業・水産業、幅広い分野にわたりますので、これは誰が大臣になっても、全部の分野をカバーするというのは不可欠だから、いかに職員との連携が大事かということだと思っています。私は農林水産省の職員を誇りに思うのは、この緊急登板という形で、米が有事ともいえるような状況下で、米に最大のリソースを割くという、これだけ割り切った、そしてリソースを割く分野をかなり限定した形で、そこに農林水産省の資源を投下する。こういったことに理解をしてもらいつつ、私が見られないところというのは、職員や副大臣、政務官がサポートしてもらうというのは当然のことです。大臣が全部やるというのは、そもそも不可能ですから。ですから、この局面の中での私の大臣の就任というのは、ある意味プロジェクト型大臣というぐらいの認識で、とにかく米だと。他のところは農水省の職員や副大臣、政務官を信頼して任せる。これぐらいの割り切りもないと、このマーケットとの向き合いというのは、またスピード感のある米の取組というのは、できなかったのではないでしょうか。そういった中でのご批判が出るのは当然です。全体、バランスを見て、皆がそこまで不満が出ないようにやるという、平時であれば、そういったことはできたかもしれませんが、それは平時であったならの話だと思います。ご理解いただけるように、今後も私なりに説明を続けられればと思います。

 記者 米の有事というのは今5か月振り返られて、どういう状態に今なったとお思いでしょうか。

 大臣 先ほど申し上げたとおり、今これだけ不足感が出たマーケットに対して、新米の供給量は過去9年間で最大。作付面積、民間在庫、これも含めて最大と。もうこういった状況は間違いなく、安定供給・安定価格に向けた正常化のプロセスを辿っていると認識をしていますので、この先行きについては、本当に生産者の皆さんのおかげで、私は必ず安定化に向けた軟着陸を、農水省の職員と新たな体制の下で実現をしていただける。その道筋はつけられていると思います。

 記者 掲げられた「需要に応じた増産」という米のテーマと、あとは新大臣に期待することについてお伺いしたいと思います。需要に応じた増産に向かっては、まさにこれから農地バンクや担い手の確保など、解決しなければならない課題がたくさんあると思います。それについて、今後どのように新しい大臣に取り組んで欲しいのか。また、需要に応じた増産というテーマは今後も変わらないものとして、小泉大臣は捉えられているか、お考えをお願いします。

 大臣 基本的な大きな方針については、自民党の総裁選においても大きな議論にならなかったほど、共有されているとは思います。是非そこは、新たな大臣が来られたときに聞いていただくのが一番ではないかなというふうに思います。おそらく農政のアンケートも、需要に応じた増産についてどう思うかという質問ではなく、単純に生産調整か増産かという、かなり大きく聞いていますから、そういった需要に応じたとかも含めたことは、新たな大臣のもとで確認いただいたほうがいいのではないかなというふうに思います。

 記者 2点お伺いします。1点は予算についてなのですけれども、大臣、緊急登板ということもあって、今後策定される補正予算であるとか、当初予算の編成という部分には結果的に関わらなかったということで、概算要求はありましたけれども、そういった点で5か月間やって、農林部会長の経験もありますけれども、農林水産予算というのは、ちょっと漠然とした質問ですけれども、どうあるべきかというお考えを改めて伺いたいのが1点と、今回の新たな内閣の発足で、日本維新の会と正式に政権合意ということで、連立政権という形になりましたけれども、大臣、以前政策に関わるのであれば野党も政権に入って、責任を共有して負うべきだという話もありましたが、今回正式に連立政権ということになって、改めて自民・維新の連立政権というものの成立について、率直にどうお考えか教えてください。

 大臣 予算については、この前、日農さんにも一面で書いていただきましたけれども、乾田直播など、こういった新たな技術への投資という側面は、やはり、かなり大臣の思いだったり、そういったことを強く出していかないと、ここまで増えなかったとは思いますし、例えば、私は酒米についての支援も入れました。やはり、予算面でどのように政策についての改善をしていくのかという、農水省の職員、担当とのコミュニケーション、そして現場視察を踏まえて、現場の声も聞きながらの予算要求、また予算の計上や、最終的には予算を執行していく。このところにおいては、私は改めて概算要求を作り上げることはやりましたから、職員と大臣の思いとのすり合わせ作業というのは、極めて重要なことだなというふうに感じています。今後、予算については、やはり重要なポイントは、令和9年度以降の米の政策の転換、そして構造転換の5年間の別枠、こういったものが大きなテーマとなるのは、次の体制がどなたのもとになっても変わらないことだと思います。そして、これは維新との連立の話にも繋がることですが、維新との連立の今回の合意書の中においても、特にここについて触れられていることはありませんが、ということは、そこまで両党で考え方が違わないということでもあると思っています。食料安全保障を強化するということは、一部触れている文言見ましたけれども、そこの大きな思いを共有しながら、農政にとってはやはり、私は自民党が一日の長があると思いますから、そういったことをむしろ引っ張っていくというぐらいの思いで連携をしていければ、お互いの相互理解を踏まえた上で、いけばいいのではないかなというふうに思っています。

 記者 米についてお伺いできればと思ったのですけれども、大臣、何度も軟着陸を目指されてということを言及されてこられたかと思うのですけれども、これからまた備蓄米の買い戻しだったり、新しいフェーズに入っていくことも予想されるかと思いますが、どういった着地の仕方を目指してこられたかというのを改めてと、次の大臣にどういうような姿勢で、米の問題について取り組んで欲しいかについてのお考えをお願いできればと思います。

 大臣 軟着陸に向けては、まさに有識者の中の一人で荒幡先生が、NHKの日曜討論で言ったとおりです。これだけ不足感が一回浸透してしまったマーケットを変えるには、一回過剰局面を作らなければ、安定化はしないと。そういったことをなぞれば、間違いなくそのプロセスに入ったというふうに思っていますので、私はこの大臣就任期間中に一部、とにかく不安に目を向けたいことに対して不安ビジネスだと言ったことがありますけれども、これからまた、そういった下がる下がるということで、この過剰になった局面を、あまり不安をあおるのではなくて、冷静に、大きなマーケットの高騰から価格の安定に向けた全体の流れの中で見れば、この過剰局面は必要なプロセスだという理解が進んでいくように、私としてはこれからも農水省の説明は必要だろうし、そしてメディアの皆さんも含めて、お互いのそういった全体の過程を理解し合う、こういったことが過度に不安をあおらない、不安ビジネスに陥らないようにするためにも大事なことではないかなというふうに思っています。そして今後の大臣について、この米の農政にどのような思いで取り組んで欲しいかという2点目の質問については、農林水産省の職員を信頼してもらえれば大丈夫だと思います。

 記者 水田政策の見直しがこれから予定されている中で、大臣、セーフティネットに言及されるところもあったかと思うのですけれども、令和7年度の水田政策の見直しで、やり残されたことだとか、心残り等あればお伺いできればと思います。

 大臣 この局面は、米価高騰を落ち着かせるという職務、そこが私にとっては最大に求められたことでしたから、先ほどプロジェクト型の大臣だったと思うという総括もしましたけれども、令和9年度のあり方については、もうしばらく時期としてはかかるのだろうと。具体的なセーフティネットとか。ただ、実際、令和9年度以降にどのような制度を見越しながら今を歩むのかという、そういった思考は間違いなく必要なので、そこの議論は農水省の中でやってきました。それはまだ対外的に言う段階ではありませんので、頭の体操を含めた議論の積み上げをやっていますので、そういったことも含めて、新たな大臣に引き継いで、その中で状況を見ながら、適切なタイミングと、そして大臣の考え方と、そういったものが一つとして与野党でこれから議論をされて、令和9年度以降のセーフティネット作りの具体化が進んでいくのではないでしょうか。

 記者 1人の政治家として、これからも現場の方と会話されたいというようなことだったのですけれども、農林部会長の経験等もありますが、党では今後、米の問題を中心に農政に引き続き関わっていきたいというような思いはございますでしょうか。

 大臣 (思いは)ありますね。ありますし、これから見続けなければいけない責任が、これだけ有事の経験をしたものとして、そしてまた、本来であれば、役所の行政運営というのは、継続性というものは極めて重要で、まさに現場の皆さんからすれば、大臣が変わったごとに政策が大きく変わることなんか、誰も望んでいないわけです。私だってそれはやりたくてやったわけではなくて、この局面を安定化するには、スピード感を持って変えざるを得ないところはあるという思いの中でやってきましたから、きっとこれから安定化に向けては、一回大きく変えたその部分が、安定化に向けて難しさを生む局面もきっと出てくるのではないかなというふうにも思います。ただ、それはある意味、新たな農政の時代の、安定した時代に向けての、産みの苦しみのような部分もあると思うので、そこに向けて携わった私が、これから例えば党でとか、他の立場であったとしても、この5か月間、農林水産省の職員と濃密に議論をさせていただいた、そして一緒に仕事をした、この具体の部分まで理解をさせていただいたところの経験を、しっかり党の中にも共有をするということは、私がやらなければいけないことだろうなと思います。

 記者 大臣にとっては、環境大臣に次いで2つ目の大臣職ということで、かつ、2年間(農林)部会長をやられた、土地勘のある分野の農林水産大臣のご就任ということで、有事の中で、特に政治のリーダーシップが発揮される局面での緊急登板という、ある意味でいうと満を持して登板されたタイミングだったのかなと思います。備蓄米の放出の方針であるとか、米の増産であるとか、ある意味で政治決断によって前に進めるということを実行された5か月間だったと思います。途中では参院選の敗北とか、自民党総裁選という、ある意味イレギュラーな政治状況もありましたけれども、この5か月間というのが、大臣にとっては、一政治家としてはどういう5か月間だったのか、お考えをお聞かせください。

 大臣 なかなか、まだ最終日ということですから、ゆっくりと振り返る時間もない中ですが、今すぐに頭に浮かぶことは、日本の、今、政治が不安定化の局面に入りつつある、多党化とも言われますけれども、そういった中でも、是非多くの国民の皆さんに安心していただきたいことは、政治の安定を実現する上で極めて重要な、霞が関との信頼関係、安定した行政をこれからも続けるという、政治がいかなる状況にあっても。この部分において、私は5か月間、農林水産省の職員と仕事をさせていただく中で、その信頼は格段に上がりました。これが日本の行政の底力だなと。日本の誇るべき人材力の一つは、日本の官僚の力であると。思いのある官僚と思いのある政治家がともに仕事をしたときに、政治の世界での政策の飛躍が実現をすると。私は今までもそういうふうに思ってきましたけれども、やはりこの5か月間、政治の決断というものが外向きには見えたかもしれませんが、それを支えてくれたのは、これだけ急激な激動の農政の日々の中を、大きな方向転換の中でも、何事もなかったようにとは言いませんが、歯を食いしばってでもこの局面を、今までの経験なども活かして支えてくれた、そういった農林水産省の職員の力です。それと、やはり私もこの5か月間、記者クラブの皆さんがご存じのとおり、相当、スピードを重視して対応してまいりましたので、スピードを重視した分、どこかで大きなミスなどが起きかねない、このリスクというのは一定取った上での、大臣としての決断をしてまいりました。だからこそ、何か起きたら自分の責任だなと思いながら常にやってきた中で、様々、十分ではなかったところというのは、現場の皆さんにご負担をおかけしたことというのはあると思いますが、大きな荷崩れなどがない中で、この5か月間を歩ませていただいて、最終的に農家の皆さんのご努力のおかげで、新米をこれだけ出していただいたところにつなげていけたのは、間違いなく農水省の職員の力のおかげです。私としては、総括として、まず、今の現時点で申し上げることができるのはこの点です。

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