おこめ業界用語(リンク)
解説 論点

「米価高騰の元凶は農協の概算金」に全中が反論

 農協の全国指導機関、全中(《一社》全国農業協同組合中央会、東京都千代田区)は10月25日、山野徹代表理事会長の名義で、「米の価格・流通に対する本会の考えについて」と題する「会長メッセージ」を発表した。

 米価高騰の要因を農協の概算金(一次集荷価格)に求める声に対し、反論しているもの。概算金額は「需給状況や集荷業者の動向などをふまえ、流通経費(運賃・保管料)等を試算したうえで、生産コストなどを勘案し、各産地で設定している」とする一方、「JAグループ以外の業者がこの概算金より高い買取価格を提示しているため、集荷競争が激しくなり、概算金の見直しや追加払いなどを行い、集荷量を確保している実態にある」と説明している。
 また「JAが自らの利益のために概算金を釣り上げている」との声に対しては、「JAが必要以上の利益を得ることは一切ありません」と反論している。これは事実で、引き上げた概算金の大半は最終的に農家組合員に還元される。

 当初の概算金が〝不当に〟高い水準かどうかは、具体的な額を示していないため判然としないが、その後の集荷競争激化に伴う引き上げ(追加払い)は認めている。農協以外の集荷業者が概算金を上回る水準で集荷するのはむしろ当然。無益な競争を避け、農協が概算金を引き上げなければ、末端の米価高騰に繋がることもない。だが、そこには全く言及していない。
 これらを避けるためには、概算金を形づくる共同計算方式ではなく、一発回答による非公表の買取にすれば、無益な集荷競争を避けることが出来る。つまり農協もリスクをとるべきなのだが、もちろん言及はない。

会長メッセージ
米の価格・流通に対する本会の考えについて

 出来秋を迎え、新米の収穫が全国各地で進んでおります。
 JAグループでは、消費者の皆さまに、おいしいお米を安定的にお届けするために、持続可能な米生産に向けた生産者への支援に取り組むとともに、令和7年産米の集荷・販売に取り組んでいるところです。
 こうしたなか、一部の識者の見解において、「令和7年産の米価高騰は、JAグループの概算金によるもの」、「JAが自らの利益のために概算金を釣り上げている」といった見方がありますが、そのようなご指摘にはあたらないと考えます。
 JAグループが扱う米の多くは、生産者から委託を受けて販売をしており、概算金とは、生産者がJAに米を出荷した際に受け取る一時払い金のことです。米作りは費用の支払いが先行するため、生産者はJAへの米出荷時に一定の収入を得ることが出来るという利点があります。
 概算金額は、生産者の営農の継続と、JAグループとして米の安定供給を実現するため、需給状況や集荷業者の動向などをふまえ、流通経費(運賃・保管料)等を試算したうえで、生産コストなどを勘案し、各産地で設定しております。
 しかし、JAグループ以外の業者がこの概算金より高い買取価格を提示しているため、集荷競争が激しくなり、概算金の見直しや追加払いなどを行い、集荷量を確保している実態にあります。
 米を販売した後は、販売代金から運賃・保管料等の流通経費や規定の手数料を差し引いて、残額をすべて生産者に精算しております。JAは組合員により運営される協同組合であり、JAが必要以上の利益を得ることは一切ありません。
 JAグループは、生産者が安心してお米を作り続けられる農業経営を実現し、消費者の皆さまにおいしいお米を、生産者も消費者も納得できる価格で安定供給していけるよう、引き続き取り組んでまいります。

令和7年10月

タイトルとURLをコピーしました