農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)は10月24日、「稲の埋蔵糖質資源」の掘り起こしに成功したと発表した。稲藁や籾殻といった稲の地上部ではなく、地中部にエタノール原料となる糖質が多く含まれていることを発見したもの。単純計算すると、国内の刈り株のなかに200万t超の有用糖質が眠っていることになるという。

食料生産と併行して、茎や葉といった稲の非可食部分から発酵性糖分を抽出し、エタノールに変換することで、SAF(持続可能な航空燃料)などのバイオ燃料に活用する手法は、古くから知られてきた。実際、世界的には、北南米を中心に活用が進んでいる。ただしこれらの原料は主に大豆で、日本の稲では正直なところ活用が遅れているのが実状だった。原因は、抽出できる糖分が大豆などに比べて少なく、抽出などの手間やコストを考えると、結果的に燃料効率が悪くなることにあった。
今回の農研機構の研究では、高バイオマス水稲品種「北陸193号」を使って、刈り株に含まれる糖分を調べた。その結果、「北陸193号」の刈り株の乾燥重量は、稲藁(茎葉部)の7割強に達し、含有糖の量も、稲藁含有量の約6割に相当することが分かった。特に、刈り株の8割以上を占める地際部・分蘖基部では、適切な処理を施せば、稲藁と同様、糖を効率的に回収できることを確認している。この「適切な処理」とは、気相塩酸を用いた前処理の後に酵素糖化処理することを指す。
この研究結果に基づき、「地域資源の活用を進める企業などと連携を図り、刈り株の糖化利用プロセスを開発する」方針だ。
