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施策・政策

R8生産量711万t+政府買入21万tは減産でなく「トントン」

 鈴木憲和農相は10月31日の閣議後定例会見で、令和8年産の生産量見通しをめぐり、減産計画ではなく「生産現場の皆さんには、トントンと感じていただけるのではないか」との認識を示した。

 この日の審議会(食料・農業・農村政策審議会食糧部会)に諮問した令和8年産の主食用米生産量見通しは「711万t」。まだ確定値ではないが、令和7年産主食用米の生産量は「748万t」で、ここからすれば減産計画にあたるが、前年同期に示していた令和7年産主食用米の生産量見通し「683万t」からすれば増産計画に見える。
 小泉進次郎前農相の「需要に見合った増産」に対し、鈴木農相は就任会見でいきなり「需要に見合った生産」を打ち出していた。「方針転換と捉えるかどうかは受け手の問題」「長期的にみれば、需要を増やすことで増産をめざす」とも。
 この日の鈴木農相の発言は、需給見通し上、「生産量見通し」の〝外〟に置いている令和8年産政府買入数量「21万t」を足せば「732万t」となるため、なお16万tの開きがあるものの、「トントン」と表現したもの。

一問一答(10月31日、閣議後定例会見から抜粋)

 大臣 本日、私から3点ご報告がございます。
 まず1点目は、明日11月1日土曜日に、根本副大臣及び広瀬政務官とともに、石川県に出張させていただき、能登半島地震・豪雨の被災地における農林水産業の復旧・復興の状況について視察をし、地元の関係者の皆さんと意見交換を行います。農林水産副大臣の在任中にも2回、能登地域を訪問させていただきましたが、それ以降も被災地では豪雨災害に見舞われ、復旧・復興の途上にあるというふうに認識をしております。今回は農林水産大臣として、改めて現場の生の声をお聞きし、私自身がこの進捗を確認をさせていただきまして、被災地における復旧・復興の加速化につなげる、こういう考えであります。詳細はこの後、プレスリリースをさせていただきます。
 そして2点目です。第1回「食と農をつなぐアワード」の受賞者の決定についてであります。この「食と農をつなぐアワード」は、ここにパネルがありますけれども、食料・農業・農村基本法や基本計画の理念に即し、優良で模範となる取組を行った企業や個人を表彰するものとして、今年度から開始をいたしました。この度、「食料の安定供給」、「食品アクセスの確保」、「持続的食料システムの確立」、「スマート農業技術等の開発・普及」、この4部門について、それぞれの専門家による審査を踏まえ、大臣賞を始めとした各賞を選定をしたところであります。このうち、大臣賞について少しご紹介をさせていただきます。まず、「食料の安定供給部門」は、「株式会社ちーの」様です。福島県双葉郡浪江町で営農されている農地所有適格法人であり、耕作放棄地を再生するとともに、AIやドローン等を活用した適所施肥により、農業と環境保全の両立を図り、水稲の生産を大幅に拡大をされています。次に、「食品アクセスの確保」部門は、「認定NPO法人セカンドハーベスト・ジャパン」様になります。長年、生活困窮者や被災地への食支援を実施をされており、そのノウハウを活かし、持続可能なフードバンク運営の指針を策定し、活動の横展開に貢献をされています。さらに、「持続的食料システムの確立」部門は、「株式会社グローバルフィッシュ」様です。水産物が、これは天然のものでありますから、大量漁獲されたときに一定価格以上で買い支え、先端技術による高鮮度加工により鮮度保持期間を長期化し、需要に合わせた安定供給を実現をされています。そして最後に、「スマート農業技術等の開発・普及」部門は、「AGRIST(アグリスト)株式会社」様になります。宮崎県でのピーマン収穫ロボットの実証を通じて、ディープテックと農業現場の知見を融合した持続可能な農業モデルを全国展開されています。受賞者の皆様には、11月8日から東京・丸の内で開催をされます「ニッポンフードシフトフェス東京2025」において表彰をさせていただきます。詳細については、またプレスリリースを、後ほどさせていただきます。(略)

 記者 昨日、財務省が公表した貿易統計についてちょっとお伺いしたいのですけれども、今年度上半期並びに先月分の米の民間輸入、急増しています。アメリカ産も増えているというところで、小泉前大臣は価格の高騰を抑えなければ、棚が外国産米で埋まってしまうという、そういった懸念もお話しされていました。今後この高まりが続いた場合、中食・外食等で外米を使われるというところが活発化する可能性もあったり、家庭用も増えていくと思うのですけれども、この市場が外米に取られる懸念等について大臣のお考えをお聞かせください。

 大臣 昨日(10月30日)公表されました財務省の貿易統計、これによりますと米の民間輸入数量について、本年9月は6,534t。本年度上半期4月から9月の累計は86,523tということになっております。これについては7月以降は減少傾向にあり、ピークの7月からの4分の1に減少はしているものの、例年に比べれば、まだまだ高い水準であるというふうに認識をしております。今なぜ減少しているかということについて分析を先にさせていただきますが、その背景としては、9月に国内輸入された米は、海上輸送等の期間を考えると随意契約による備蓄米の売渡しの開始の時期が含まれる4から6月頃に契約されたものが多いことが影響しているというふうに考えられます。引き続き、外国産米の需要の意向に注意を払い、国内の米の今後の価格や販売数量などを注視してまいりたいと思いますが、私としては何よりも国産米の市場が、この外国産によって置き換わるという、これ奪われるということになりますから、そうしたことがないように需要に応じた生産を推進し、米の安定供給の実現に努めてまいりたいというふうに思います。

 記者 民間輸入の件で一点お伺いします。大臣、先日の会見の方で米の価格について、備蓄米を出し入れすることによって価格に影響を与えるということではなくて、需給の安定を図るということで、結果として価格の安定をというお話をされていたと思うのですが、江藤元大臣も3月4日の閣議後の会見で、価格にはコミットしない、備蓄米によって流通が改善することで価格が安定するという旨のご発言をされています。その結果として今、政策結果というべきかはちょっとまだ早いかもしれないですが、民間輸入が増えていて、これ大臣も今お話されたように、消費者だけではなくて農家さんにとっても、中食・外食等の市場というのは、一度外国産米に取られてしまうと取り返すというのが難しい面があると思うのですが、そのあたりも踏まえた上で、改めて価格が上がった場合のお考えを教えてください。

 大臣 農林水産省といたしましては、特に外国産のお米の輸入というのは、どこと競合するかといえば、低価格の、要は特に業務用、こうしたお米との競合関係にあるというふうに思っております。ですので、これから我が省として、低価格帯も含めた多様なニーズに応えられるような多様な生産を確保することが、これが何よりも重要だというふうに考えております。現状で海外のお米を使おうという決断された皆さんも、国産でそれに見合ったものが供給可能になれば、それにまた戻していただけるというふうに信じておりますので、そうしたことに我々行政も、そして生産現場の皆さんと一緒になって、そこの需要にしっかりと応えていける形で生産するということを推進をして、結果としてそれが米の安定供給、そして価格の安定ということにトータルでつながっていくというふうに考えております。

 記者 大臣としては、その辺りの低価格帯の生産というのは、どれくらいの長期計画で見られて、何年ぐらいかかると見られているのでしょうか。

 大臣 これはできれば今年の状況として、まず外国産のお米をこれだけ輸入が増えている訳ですから、そこに対してこれは当然生産現場の皆さんもその状況というのは、当然よく認識をされていただいていると思っています。そこに対して、私は今の技術であったとしても、来年の生産から応えていただける現場というのもあろうかと思いますし、このことについては、生産者団体の皆さんともよく話し合いを、我々としても需給見通し、これから正式に示すことになりますが、それも踏まえて一緒にやっていきたいというふうに思っています。

(略)

 記者 先週(10月24日)の自民党の委員会で大臣、さっき少しおっしゃいました需給見通し、公表されまして、それで拝見をさせていただいております。来年の主食用米の生産見通し、この711万tとの見通しが示されて、今年の見通しからは減少するかと思います。前政権が増産の方針を打ち出した中での今回の主食用米の生産減少ですけれども、これをどのように考えていらっしゃるのか、どういうふうに判断をされたのかということについてお願いいたします。

 大臣 先日の自民党の会議でお示しをさせていただきました令和8年産米の生産見通し711万t、これはまず需要の見通しを最大711万tとするのに対し、生産量の見通しは余裕を持って設定するとの考え方の下で、その一番上位の値に設定をさせていただいたということになります。需給見通しについては、本日15時から開催予定の食糧部会において、委員の皆様に諮問をさせていただいて、ご議論をいただくこととしております。

 記者 増産の方針の転換かという見方もされているかと思うのですが、その点については大臣、どのようにお考えですか。

 大臣 これは今まで何度も申し上げておりますとおり、中長期で見れば、需要をしっかりと拡大をして、これは海外マーケットも含めてやっていくということで増産トレンドというのを作りたいというふうに私としては考えておりますがただ、今年と来年の、今の直近のこの状況を見れば、今すぐに大幅に増産ということに踏み切れば、それはなかなか需給の安定というのを、バランスを崩すというふうには私たちは認識をしております。もう一点は、さっき711万tという来年の生産量の目安というのをお示しをしましたけれども今、我々は備蓄米をもうかなり放出をして、残りが少なくなっています。備蓄は本当に足りなくなったときに、いざ放出ができるべき体制を整えていくべきものだというふうに考えておりますから、来年は通常どおり買い入れを21万tですかね、20万t程度やらせていただくということで考えますと、711(万t)に21(万t)を足すと732(万t)ということになります。今年から比べれば、少し減るというように見られるかもしれませんが、ある種でもこれは生産現場の皆さんにとっては、トントンかなというふうに感じていただける量かというふうに考えています。

 記者 飼料用米の生産についてお伺いします。今年の飼料用米の作付は、昨年と比べて半減以下という状況になっています。これ主食用米の価格の上昇によって、そちらに転換したということが大きく影響していると思うのですけれども一方で、現場では飼料用米の生産と畜産農家の結びつきで、だいぶ飼料用米の定着というのも進んできた中で、この主食用米の上昇でさらに飼料用米が減るとなると、今まで進めてきた取組にもかなり影響が出るかと思いますが、今後の飼料米の安定供給の課題と政府としてどのように対応すべきかとお考えでしょうか。

 大臣 今おっしゃっていただいたとおり、令和7年産の飼料用米の作付面積が、主食用米の価格高騰の影響によりまして、前年産から5.3万ha減少して、4.6万haとなったところであります。特にこの作付面積の減少幅、今おっしゃっていただいたとおり、大変大きいものですから、飼料用米を利用してブランド化等に取り組んできた畜産農家からは、正直これは安定性がないというような不安の声を、私のところにもたくさん直接いただいているところでありますし、昨日も畜産のネットワークの皆さんいらっしゃっていただきましたけれども、皆さんからもそうしたお話を、昨日もお伺いをしたところであります。このため、令和8年度予算において、飼料用米を含めて、各品目を安心して生産いただけるよう、水田活用の直接支払交付金と関連予算について、その推進に必要な額を要求しているところであります。また、地域の中では、例えば耕種農家と畜産農家との結びつきを維持するために、産地交付金等を活用して支援を上乗せしている地域もあるというふうに承知をしております。農林水産省としては、十分な予算を確保するとともに産地交付金の活用も促しながら、戦略作物の安定生産を支援をしてまいりたいというふうに考えております。特に現場では、顔と顔の見える関係の中でこれまで飼料用米もそうですが、酪農家の皆さんにとってみれば稲のWCS、こうした取り組みも行ってきたわけですけれども、昨年のこの一年間の米価の高騰によって、それがやっぱり主食の方がいいじゃないかということで戻ってしまって、様々な課題が生じているというのは十分認識をしておりますので、今後私たちとして責任を果たすべきなのは、そういった皆さんに安定性をもう一度確保していくということ。それが水田政策の大切な柱であるというふうに考えております。

 記者 今回、トランプ(アメリカ大統領)、高市さん会談の中で、アメリカ産の米の購入拡大が75%増えると、先ほど他の記者さんの質問の中で海外の安くておいしいようなお米が回っていった場合、なかなか日本産のものに戻らないんじゃないか、こういう懸念、どういうふうにここら辺は払拭するつもりなのか。それから増産トレンドの方向は否定しないということですが、700万t、私がインタビューした元水産官僚なんかは1,400万tぐらい作れる能力があるのだけれど、それをやはり半分ぐらいに抑えて、それゆえの食料自給率が低いというようなお話もしていました。食料自給率を上げる必要があるという指摘がある中で、どのぐらいのペースで、700万tから1,000万tとか1,200万tとかを上げていくことを、大臣が何年ベースで考えているのかということと、もし、1つだけ言えば、物価高をお米券で対応できるという言葉が、結構ネット上でもかなり拡大しているのですが、こども食堂などではやはりなかなかお米がもう食べれないという状況があって、お米が見つからないという話もあります。ここがどういう真意でいったのか、もう一度お願いします。

 大臣 トランプ大統領との間で、これまで日米の合意があって、その中で、アメリカからのお米の輸入を増やすということについて、合意がされているということはよく承知をしております。これはMA米を輸入する中で、我々のスタンスとしては、需要に基づいて、国内の需要を考えて、結果としてアメリカ産のお米が増えていくということになるんだというふうに思っておりますので、そうしたことでMA(米)の枠内で運用しますから、トータルとしてのアメリカからの輸入量が激増するということでは全くありませんので、是非そこのところは生産現場の皆さんによく伝えていきたいというふうに思いますし、トータルでの需給には影響しないということだというふうに考えております。
 そしてもう一点、将来輸出も含めてマーケットをどのように作っていくかということであります。当面は基本計画、これに基づいて、直近の目標というのがありますけれども、その先も世界は人口が増えていますから、そして経済成長もしています。食生活も一定のものから、もっと多様なものを食べたい。特に日本食、これはお寿司も含め、またおにぎり、こうしたものも含めて、これはおにぎりというのは海藻と米が一緒に、海苔と米のコンビネーションですから。海藻なんかは今大変アメリカ(では)、ブームが起きていて、やっぱり健康的だということなんですよね。こうした流れもしっかりととらまえて、どのぐらい私たちは海外マーケットをこれから本気になれば開拓ができるのか、その点をよく考えてやっていきたいというふうに思っております。
 そしてもう一つ、外国産のお米が輸入された際に、今、今回例えばそれを使うことになった外食事業者の皆さんが、なかなか戻らないのではないかというご懸念を今、望月さんおっしゃっていただきましたけれども、おそらくですが品質で見ると、おいしいかおいしくないかで見れば、それはやっぱり日本産のお米の方が圧倒的に私はおいしいというふうに認識をしていますから、あとは、その美味しさと海外からの価格とどのようなバランスで外食事業者の皆さんが特にこれなら国産にやっぱり戻ろうというふうに思っていただけるか、この点もこれから私自身も、様々な事業者の皆さんのお考えを、いろいろ農林水産省としてもお伺いをさせていただいて、どういう姿が我が国の米供給に一番最もいいのか、それが結果としての需給の安定ということだと私は考えておりますから、そこに向けて努力をさせていただきたいと思います。
 最後にお米券の話です。我々、この一年間備蓄米を放出をしました。しかしながら今、現状で申し上げれば、もうすでに備蓄米、かなり放出をしましたので、残っているものは相当古いものということになります。正直言ってもうこれ以上、なかなか品質的におそらくは厳しい、食べるにはちょっと厳しいというものについて、さらにここから残っているものを放出するということは難しいのかなと正直思っております。もちろん様々な検査も必要になりますしこれ以上、備蓄米でどうこうというのが難しい中で、それでも私たち政府の責任は、特に農林水産省の責任は、国民の皆様に食料の安定供給、特にこの主食である米については、やはりこども食堂も含めて、食べたい、もしくはこのぐらいやっぱり必要だという方が、高値だから買えないという状況は何としても防がなければならないと思っています。なので、今すぐにこれからできることというのは、高市総理からご指示のあった経済対策の中で「重点支援(地方)交付金」、これを今検討しておりますから、その中で本当に困っている皆さん、ここにお米券をある種行き渡らせることによって、結果として、負担感が和らいで、もっと買えるよねという状況を作る。まずこれが当面できることだというふうに私としては考えております。

 記者 昨日(10月30日)、クマ対策の閣僚会議が初めて開かれましたけれども、農水省としてどういう取組、今後強化されていくのか教えてください。

 大臣 私自身も昨日、クマ(被害対策)の関係閣僚会議へ出席をさせていただきました。自分自身も、私は山形県の南陽市の金山という地区に住んでおりますが、何回も私は家から出るときに、家の集落のそばでクマに出会ったことがあります。もちろんそのときは、車の中でクマがいるなというのを認識をするので、クマもそのときは山にすぐ、道路で見つけるんですけれども山に戻っていったという状況ですが、この10年間の中でこんなに私自身が、自分の地元でクマを見たということはありませんでした。こんなによく会うということがありませんでしたので、これはやっぱり農業現場、特に山沿いのクマが住んでいる地域のそばで農業をされている皆さんにとってみると、本当に自分は農作業に行ったときにクマに会わないんだろうか、出会ったときに大丈夫だろうかという不安感が、本当に大きくなっているというふうに認識しておりますし、実際に人的被害もたくさん出ているところであります。ですので、これから農林水産省としては、このクマ対策として、まず捕獲活動による「とる」。そして侵入防止柵の整備により集落、生活を「まもる」。そして緩衝帯の整備により「よせつけない」。この3本柱の取組をさらにちょっと強化をして、前に進めていきたいと思いますし、同時に官房長官から、昨日は「クマ被害対策施策パッケージ」を11月中旬までに取りまとめるよう指示がありましたので、我々も関係省庁の皆さんとしっかり連携をとって対応させていただきたいと思います。

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