令和7年産米スポット相場が、再び下落を始めた。なかには〝岩盤〟のはずの概算金(一次集荷価格)をすら割り込む銘柄すら出はじめている。一体どのようなカラクリになっているのだろうか。また、いずれ反転上昇するのは誰しも分かっていることだが、その時期と底値の水準に、熱い注目が集まっている。
既報の通り、11月の3週目から4週目にかけて、新潟こしいぶきのスポット価格が「+500円」ながら反転上昇した。その原因が「噂話」にあることも既報した通りだ。曰く、「全農新潟県本部が、売りを止めた」との噂話だ。よくよく聞けば「相対価格を下げない」(相対価格を下げてまでは売らない)との意思表明だったわけだが、意味は同じである。スポット価格は即座に反応、新潟こしいぶきが500円上げ、新潟一般コシヒカリが下げ止まった。
だが翌週になると、新潟玉も含め全銘柄が再び下落基調を再開。今週に至っては、さらに下げている。新潟の「噂話」という相場の〝神通力〟は、1週間しかもたなかったのである。今や60㎏30,000円台にとどまっている銘柄は、道産米ゆめぴりかや新潟一般コシヒカリなど、いわゆる高級銘柄だけで、数えるほどしかない。スポット相場は、20,000円台後半を舞台にしている。

12月に入ってスポット相場が下がるのは、決して異常な動きではない。むしろ「年末の換金売りが増えて相場が下がる」のは、通例通りの動きと言っていい。問題なのは、下がるにしても下げ過ぎなのと、にもかかわらず買い引き合いは全く入らない点だ。
11月の相対価格は初めて下がったものの、スポット相場は輪をかけて下がっているため、相対との乖離幅を60㎏7,000~9,000円に拡げつつある。特筆すべきは、〝岩盤〟であるはずの概算金水準すら下回る売り唱えが散見される点だ。宮城ひとめぼれと栃木コシヒカリは、値上げ前の概算金を割り込むほどではないからまだしも、茨城コシヒカリは値上げ前の概算金水準すら割り込んでいる。スポット市場からすれば、明らかに「損切り」の売り唱えである。
ごく一部ではあろうが、こんな話を聞いた。ある商系の集荷業者が、「去年の儲けを財源に、損切りで売りに出している。去年と今年あわせてトントンなら御の字」というのだ。
もともとパイの少ないスポット市場で、ごく一部といえどこんなことをされたら、下げ基調になるのも頷ける。だが、売り唱え価格が下がれば下がるほど、買い手は離れていく。むしろ逆効果だ。
誰しもが、底値の水準と、そこへ至る時期を見計らって、じっと様子見を続けている。年内はもはや動きようがあるまい。
こうした動きを知ってか知らずか、新潟の一部農協が、この期に及んで概算金の追加払いを決めた。その額、60㎏3,000円。これが事実なら新潟玉だけが、スポット価格と概算金との〝距離〟を、60㎏6,000~7,000円に拡げたことになる。逆に言えば、スポット価格に下げ余地を与えた恰好だ。
既報した通り業界は、商系集荷玉が払底し、JA系統玉の出番になる来年2~3月頃の〝変動〟をにらんでいる。未だ2月を決算期に据えている農協も多いため、この頃は在庫整理に入る時期でもある。その頃になっても相対価格が落ちなければ、そこからはスポット需要といえど、相対価格で取引せざるを得ない。
それまでには、スポット相場も底を打つはず。その〝底〟が、60㎏25,000円なのか、20,000円なのか。ここのところをじっと注視しているのが、現況の偽らざる実態といったところだ。
仮に25,000円が底であれば、いま買わなければ儲け損なう。20,000円が底なら、まだ買わないほうが得策。あと2週間で年が暮れる。まだまだ目の離せない相場だ。
