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施策・政策

鈴木農相、米の民間備蓄導入へ「ご意見は真摯に受け止める」

 鈴木憲和農相は今年最後となった12月26日の閣議後定例会見で、米の民間備蓄導入に向けて「いただいたご意見を真摯に受け止めて、実際にオペレーションを担う可能性のある民間事業者との意見交換もしっかりとやらせていただきながら、制度の詳細について検討を深めていきたい」との姿勢を示した。12月24日の食糧部会で、政府案に対する不安や懸念の声があがっていた。

一問一答(12月26日、閣議後定例会見から抜粋)

(略)

 記者 2024年の農業の売上げを指す農業総産出額が、28年ぶりに10兆円を超えたと思います。この要因と受け止めをお聞かせください。また、今日が今年最後の閣議後会見ということですので、大臣の今年の振り返りと来年の抱負をお願いいたします。

 大臣 本当に今年は、1年間ではありませんけれども、ここにいらっしゃる皆様にも大変お世話になりまして、たくさんのご意見やご質問を頂戴をいたしましたことを、心から感謝を申し上げます。
 最初の点について申し上げます。農業産出額の件でありますが、23日に公表いたしました令和6年の生産農業所得統計では、農業総産出額は、主食用米や野菜などの農産物価格が上昇したことなどにより、前年から比べますと、1兆3千億円増加をして、10兆8千億円となりました。また、農業生産活動によって生み出された付加価値である生産農業所得は、前年から7千億円増加をいたしまして、3兆9千600億円となりました。令和6年の農業総産出額、そして生産農業所得は大きく増加をいたしましたが、農業総産出額を分母として生産農業所得を分子とする、この所得率というので見ますと、36.8%と直近10年で令和4年の最低値が34.5%、ここから見ると上昇はしているものの、平成28年の最高値、これが40.8%でありましたので、そこにはまだちょっと及んでいないということになります。これは何が要因かと言えば、生産資材価格などが高止まりしているという状況が伺われるかというふうに考えております。農業が稼げる産業となっていくためには、農業の収益力そのものを高め、農業者の所得の確保・向上を図っていくことが重要でありますので引き続き、これから農地の集約・集積、そして大区画化、スマート農業技術の導入加速化等による生産性向上、また農産物のブランド化等による付加価値の向上などの取組を進めてまいりたいというふうに考えております。
 そして、今日これで本年最後の記者会見となります。大変今日で最後かなと思うと、ちょっとほっとしているところでありますが、まず本年の振り返りと来年に向けてということでお話をさせていただきます。私自身も農林水産大臣の職責をいただきまして、2か月が経過をしたところであります。大変重大な職責をいただいたというふうに思って、改めて年末に向けても気を引き締めているところであります。高市内閣の一員として本年を振り返りますと、やはり「先の見通せる農政」を実現をしたいというお話を多くの場面でさせていただいたと思っております。その「先の見通せる農政」の私の描く姿というのは、生産者からも、そして同時にこれは消費者の皆さんからも、納得感のある農政の姿だというふうに考えております。そして今直近で見れば、食料品の価格を始め物価高騰に直面をしておりますので、補正予算成立をさせていただきましたから、まず直近では、この食料品の高騰に自治体の皆様と一緒になって、物価高に少しでも生活者の負担を和らげるということをスピーディーにできればというふうに考えております。その上で、来年に向けてということになりますが、昨日、この農林水産行政の戦略本部の一つのWGである、フードテックWGを立ち上げることができました。戦略本部は、私としては「攻め」の分野と「守り」の分野、どちらも大事だというふうに考えております。特に「攻め」の分野については、昨日立ち上げましたフードテック、そして輸出、こうしたことを重点的にやらせていただきたいと思いますし、「守り」の分野としては、中山間地域のこれをどのように支えていくかということについて、しっかりと骨太の議論を来年はしっかりしたいなと、現場に出させていただいてやりたいというふうに思っております。結果として、食料の安定供給と食の分野での稼げる日本というのが実現ができるのではないかというふうに考えておりますので、私としては、来年は農林水産省として「稼げる日本元年」になるように、職員の皆さんと一緒になって、やはり現場の皆さんの気持ちに立って、農林水産行政が前に進んでいけるように来年も努力をさせていただきたいと思っております。来年もよろしくお願いします。

(略)

 記者 令和8年度の予算が閣議決定されたということで、この点について改めて受け止めをお願いします。

 大臣 今朝の閣議において、令和8年度当初予算が閣議決定をされまして、農林水産関係では、総額で前年度から当初予算はということですけれども、250億円増額の2兆2,956億円を確保できたところであります。懸案だった農業構造転換集中対策では、日本中央競馬会からの財源拠出を伴う法案の成立を、これを前提とした臨時・特例の措置として、当初予算に250億円を追加的に措置をされたところであります。改めて、日本中央競馬会のご協力に感謝を申し上げるとともに、通常国会における予算と法案の審議に真摯に対応して、農業の構造転換を始め、農林水産業の持続可能な成長を推進していきたいというふうに思います。先に成立をしました補正予算と合わせて、現場、施設整備なんかも含めて待ったなしの状況がかなりあるというふうに思いますから、しっかりと丁寧に、この予算が来年活用されるように、我々として努力をさせていただきたいと思います。

 記者 重点支援地方交付金に基づいたお米券の支援なのですけれども、先日私も取材に行きましたが、埼玉県では一部もう配布が始まっておりまして、おそらく今日にも住民の手元に届いているかと思います。現時点でどれだけの自治体がお米券を選択したのか、分かっている範囲で自治体数などを把握しているものがあれば教えてください。

 大臣 私から申し上げると、埼玉県の2つの町、これは埼玉県吉見町、そして埼玉県の川島町、この2つの町が今週既にお米券の住民への発送を始めたほか、複数の自治体がお米券の配布を決定した旨報道されているということは承知をしているところであります。食料品の物価高騰への支援としては、いわゆるお米券に限らず、プレミアム商品券や地域ポイントなど、住民の方々に速やかな支援が届けられるように各自治体がご尽力いただいていることに、改めてこの場をお借りして感謝を申し上げたいというふうに思います。数十程度の自治体からお米券の配布について、農林水産省に問い合わせをいただいておりますが、このうち支援方法も含めてまだ検討中という自治体も相当数あるというふうに承知をしておりまして、現時点でこのお米券の配布意向に関して、自治体数に言及することは差し控えさせていただきたいというふうに思います。ちなみに細かく申し上げれば、重点支援(地方)交付金の推奨事業メニューに関する令和7年度実施計画については、令和8年(2026)1月23日までに、各自治体から内閣府へ提出されることとなっておりますので、それ以降に、農林水産省としても活用状況なんかはフォローアップする予定であり、この中で各自治体の取組状況の把握、また何かサポートできることがあれば、これお米券に限らずしっかりやらせていただきたいと思います。

 記者 食糧法の改正について伺いたいのですけれども、中核の一つが備蓄米の放出と吸収について、今まで以上にはっきりと定義をするということだろうと思うのですけれども、これはお米の価格を安定的にするために、いわば広い意味では備蓄米制度を使った介入をするということだと思うのですけれども、一見するとこれは、大臣常々言っておられるお米の価格はマーケットに任せるということと矛盾するようにも聞こえなくはないのですけれども多分、賢明な大臣はその辺のことが分かっておられてやっておられるのだと思うので、国民にわかりやすく、この備蓄米介入制度と、米のマーケットに委ねるということはどういうことなのか、ご説明願えますか。

 大臣 ご質問の趣旨がよくわからないのですけれども、まず食糧法の改正については今まさに議論をしているところでありまして、党の方も含めて様々なご議論をいただいているところであります。その中で私から間違いなく申し上げさせていただくのは、やはり需要に応じた生産、これが大事ですし、需要に応じた生産、需給を安定させることによって結果として価格の安定がなされるということについては、その方針で我々としては検討をしているところであります。ですので、備蓄米の買い入れとか、備蓄米の出し入れによって需給をコントロールするということについては、基本的には食糧法の改正の中で何かそういう検討をするということはありません。

 記者 価格の安定のためではないとすると、備蓄米の買い入れとそれから放出、それぞれはどういうタイミングで、どんなふうに行うべきだとお考えなのですか。

 大臣 備蓄米については、前々からこれ申し上げていることでありますけれども、全体として供給量がなければ放出をさせていただく。要するに量が市場に足りないという状況であれば備蓄米は放出をいたしますし、逆にそうでなければ備蓄米で何かするということはありません。

 記者 買い入れるときはどうなんですか。

 大臣 基本的には備蓄米は年を通して安定的に買い入れをしておりますから。

 記者 今はやっていないですよね。

 大臣 これまで、年間大体20万tずつ買い入れをしてきました。現状について申し上げると、今年かなりな量を放出をしてしまったので、現状として十分な備蓄水準が確保できているという状況にはありません。備蓄米は、いざというときの備蓄米、大切な備蓄米でありますから、そうしたことをよく踏まえて、これから備蓄水準どのようにしていくかというのは、需給状況をしっかりと見ながら対応させていただきたいと思います。

 記者 農業関係者、これは卸の方なんかも含めてですけれども、表に出ている中では新潟の方が3,500円5㎏でね、ぐらいまで下がっちゃうんじゃないかという話で、私が取材してる限りでは急落するんじゃないかと思っている方がほとんどなのですけれども、すごくじゃぶじゃぶで下がるだろうと思って、大口の需要者、これは飲食とかになると思うのですけれどもチェーン店など買い渋っているという状況だと思うんですね。だからもうみんなこの下がるのを待っているような状況ですけれども、常々、大臣の発言の中にも急落懸念をされているのかなと思うご発言が感じるときあったのですけれども。これは私の感じ方かもしれませんけれども、急落した場合はきっと備蓄米のね、これじゃぶじゃぶにしたことの反映ですので、あとで当然買い入れなければならないのではないかと思うのですけれども、それはどのタイミングでどんなふうにとお考えなんでしょうか。再開するときに。

 大臣 再開というよりは、これ要は放出をした備蓄米をどのような形で買い戻すのか、というご質問ということで私、今理解をさせていただきましたが、そこについても全体の需給状況を見ながら、適切に対応させていただきたいと思います。

 記者 価格を見て決めることはないということですか。

 大臣 全体の需給状況見ながら、適切に対応させていただきます。

 記者 でも価格に反映するわけですよね、需給状況は。

 大臣 全体の需給状況を見ながら適切に対応させていただきます。

 記者 残念です。ありがとうございます。

 記者 民間備蓄制度についてお伺いします。先日の食糧部会では、民間備蓄制度について実効性等々、少し不安の声というか懸念の声も上がっていて、特におそらく事業者が担うことによるメリットですとか、負担ですとか、そういったところの不透明感だとか、あと導入の最大の目的である放出のスピード感みたいなものについても、実効性を問う声があったのですけれども、大臣はそういった声にどのように応えていくご予定でしょうか。

 大臣 (12月)24日に開催をされました、この食糧部会におきまして、米の安定供給に係る短期的な対応策や、これを踏まえた食糧法の見直しの方向について、委員の皆様から様々なご意見をいただいたというふうに報告を受けております。この中で今お尋ねの民間備蓄につきましては、まずこの見直しの方向性に異論はない、そして不足時に迅速に対応するために民間の在庫を活用することは理解ができると、などの前向きなご意見の一方で、この放出の手続や支援の内容など実施に向けて詰めるべき事項がたくさんある、そして具体的な制度設計がよくわからないため、影響も分からないなどのご意見もいただいたところであります。ですので、民間備蓄については、政府備蓄の課題である機動性を補完するものとして、どのような仕組みとすれば、その実効性が高まるのか、民間事業者のご意見も伺いながら、現在制度の詳細を検討している段階であります。委員の皆様からは、これまでもそうですが、これからも様々なご意見いただくというふうに思いますから、いただいたご意見を真摯に受け止めて、実際にオペレーションを担う可能性のある民間事業者との意見交換もしっかりとやらせていただきながら、制度の詳細について検討を深めていきたいというふうに思っております。私どもとしては、最初に申し上げましたが、やはりこの度の備蓄米の放出については遅かったのではないかという、当然これは国民の皆様からのご批判がありますから、そうしたことによく踏まえられるような制度にさせていただきたいというふうに思っています。

 記者 先ほど予算について質問があったので、予算についてお伺いするのですけれども、全体額が増額ということで、あと構造転換の予算も確保したという一方で、水田活用の予算は少し減っているということになりますけども、この要因と、あと全ての田畑をご活用するという点においても、この予算の減少の部分はどのように見ていくのですか。

 大臣 基本的には我々、全ての田畑をフル活用していくということについては方針として変わりませんし、そこに向けて十分な予算額を取っているというふうに認識をしております。ですから、これ水田活用の、特に現状の制度の交付金というのは、主食用でないものがある種増えれば、増える見込みであれば、必要な予算額が増えますので、そうした点もよく加味をして来年度の予算を組んでいるところであります。

 記者 令和5年産をめぐる秋田県とのやり取りのことについて質問いたします。前回の会見で、当時の農水省のご担当の方から聞き取りを行ったというふうに報告があったと思います。この聞き取りに関してお伺いするのですが、この聞き取りでは、当時の農水省の担当の方が、交付金の削減について、やり取りの中で秋田県の方にこう伝えたかどうかというのは確認しているところでしょうか。

 大臣 私も報告をいただきましたけれども、報告によればまず申し上げさせていただくと、当時の担当者は日頃から各県と電話等を行っている中で、秋田県にも当然電話をさせていただいております。そのことについてはしっかりと確認をさせていただきましたが、その内容は実は電話の記録というのは残しておりませんので、詳細まではこれ数年前のお話ですので、正確に申し上げなければならない中で、正確に現時点で申し上げるということは、なかなか詳細までは分からないということでありましたが、ただその産地交付金については、今お尋ねの、当時秋田県を含めた各都道府県に対して、前年度の配分実績やそば、なたねなどの作付面積に応じて資金枠を配分するなど、配分方法の考え方は説明をしていたというふうに報告は受けているところであります。

 記者 この間の会見の中でも、制度上意図的なこの減額というのは難しいと、できない状況にあるということだったかと思うのですけれども、今回圧力を感じたと証言している前知事であるとか、県の担当者の方というのも、農水省の皆さんと同じぐらい水田政策については精通している皆さんなんじゃないかなと思うのですが、おっしゃるように制度上交付金の意図的な削減ができないのであれば、何故今回のようなこの行き違いといいますか、発生したというふうに、大臣はお考えになっていらっしゃるでしょうか。

 大臣 今の質問について申し上げる前に、制度上のお話をもう一度させていただきます。この産地交付金というのは、あくまでも各都道府県における作付転換の実績や計画等に基づきまして、配分をさせていただいております。年度途中に産地交付金の対象となる作物の作付面積の実績が減少することが判明をし、当初配分した額から減額することも当然これはあり得るわけです。これはあくまでも、その対象作物の作付面積の減少という事実が先にありまして、その結果として減額されるということになります。ですから、私も当時どのような、本当にやり取があったのかまでは記録も残っておりませんし、私としては何度も申し上げているように、制度上こういう制度でありますから、ただ、もう今何か国が生産調整みたいなことを割り振ってやるという権限も我々にはありませんし、そういう運用もしておりませんから、そういう中で県のご担当の皆さんが圧力だというふうに受け止めたことについては、本当にそれはあってはならないというふうに思いますから、今後もそういうことがないように、もうこれは秋田県に限らずどの都道府県に対しても、今後そういうことがないように、それは徹底をさせていただきます。

(略)

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