「令和9年度(2027)からの水田政策の見直し」検討に向けて、パーツごとに、それぞれの経緯と課題、検討の方向性(可能性)を連載で整理していく5項目目にして6回目。今回は「業界把握」をとりあげる。
業界把握とは、流通業者に対する規制のことだ。古く食管法の時代には許認可制だったから、ある意味で業界の把握は容易だった。許認可を受けていない業者とは、ヤミ米(不正規流通米)業者であり、食管法違反業者、すなわち食糧庁(当時)にしてみれば「犯罪者」に他ならなかったからだ。ヤミ米業者の摘発は、それはそれで骨の折れる仕事ではあったが、全体の流通量を把握できないことに比べれば大した悩みというわけでもなかったと言える。
その後この流通業者規制は、「登録」制の時代を経て、平成16年(2004)の改正食糧法施行を機に、「届出」に落ち着き、現在に至っている。規制という名のクビキが解かれたことは、規制緩和の流れからして当然のことではあったが、実際に解かれてみると、流通量と流通価格を把握する手段が心許ないことに気づかされることになる。
特に流通価格は、この当時だと半官製市場であるコメ価格センターがあったから、その加重平均落札価格を追えば把握は可能と考えられていた。ところが平成16年(2004)施行された改正食糧法には、平時の流通規制の全面撤廃に伴い、売り手(全農をはじめとした大手集荷業者)に対するセンターへの上場義務撤廃、相対価格に対するセンター価格±いくらの規制撤廃も含まれていた。センター価格をいくら追いかけても大宗を占めていた相対価格の全体像は掴めないし、そのセンター価格にしてからが上場・落札数量の減少に伴い信用できないものに変容していた。
慌てて食糧法の報告徴求義務を持ち出し、現在のように月1回、相対価格を公表するようにしたのは、2年後のことだ。相対価格の銘柄別一覧は、平成18年産からしか存在しない。
流通量のほうは、同じく食糧法の報告徴求義務を持ち出して、扱い量5,000t以上の届出業者を対象に毎月在庫を報告させ、500t以上の業者には毎年6月末在庫を報告させるようにした。
当時の農林水産省は「これで十分」と考えていたわけだが、最近になって思わぬ落とし穴に気づかされた。言うまでもなく「令和の米騒動」の発生だ。原因は様々だが、一つにはこの「流通の把握が不十分だった」ことがあげられる。
そのため今回の「政策見直し」を待つまでもなく、今次通常国会――いや、冒頭で解散してしまったので、本日から始まった特別国会に提出予定の食糧法改正案のなかで、「届出対象の拡大」+「調査対象の拡大」を盛り込むことになったわけだ。

公表ベースでは、食糧法改正案はまだ影も形もないので、今のところは上記のイメージに頼るのみだが、わずかながら追加的な情報がある。去る1月18日の東米商(東京都米穀小売商業組合、東京都中央区)「流通研修会」のなかで、農林水産省農産局穀物課の小川英伸米麦流通加工対策室長が明らかにしたところによると、「届出については現行の名簿をリセットして改めて届出を求めることになるだろう」としている。
加えて3日後の1月21日、日本チェーンストア協会(東京都港区)が農相に提出した「食糧法見直しに関する要望」のなかで、以下の表現によって「調査対象の拡大」に反意を示している。
――在庫数量等の定期報告は、流通実態の把握が困難とされる特定の流通段階や事業者に焦点を当てて検討されるべきであり、小売・中食・外食事業者を含め、流通の最終段階に位置する事業者まで一律に報告義務を課すことには、制度の目的との関係で合理性に疑問があると考えます。加えて、事業者の実務負担が角に増大することにも大いに懸念されます。
20年以上前になくなったはずの規制の復活を望む者などいるはずもない。といって「令和の米騒動」の再来など誰も望んでいない。目の前には二律背反の茨の道が立ち塞がっていると言える。
