小泉進次郎農相は9月16日の閣議後定例会見で、自民党総裁選への出馬の意向を明らかにした。「先週土曜日(9月13日)に地元の横須賀、三浦の市議や県議の皆さん、私を支えていただいている後援会の役員の皆さんに、私の意向をお伝えしたのは事実。これから正式な表明に向けて、関係者、陣営の皆さんと一つ一つ積み上げていきたい」としている。
なお小泉農相は同日、都内で予定されていた日本酒イベントへの出席(9月17日の現地視察)をとりやめた。「諸般の事情」と説明している。
一問一答(9月16日、閣議後定例会見から抜粋)
記者 2点お伺いします。いずれもお米についてです。1点目は価格です。(9月)12日発表のPOSデータでは、3か月ぶりに(5㎏)4,000円台となりました。新米の流通が進んでいるのと、備蓄米の販売数量が落ちている両面が指摘をされていますが、この受け止めと今後の対応について、まずお願いします。
大臣 今ご質問のありました、まず価格のデータについてですが、3つとも上がるということになりました。新米の出回り等を背景として、販売数量に占める、政府備蓄米を含むブレンド米などの比率が低下傾向であることが要因として挙げられます。一方で、7月28日の週と9月1日の週を比較すると、平均価格が3,542円から4,155円へと約2割上昇する中で、販売数量を見ると1,175tから853t、約3割減少しています。この状況がどういうことなのか、どんな要因なのか、さらに分析をしていく必要がありますが、こうした点を含めて、引き続き今後の価格や販売数量などの需給の動向について注視しながら、マーケットに対してしっかりと情報提供を行っていく必要があるだろうと思っています。さらに随意契約による政府備蓄米について、引き渡しが済んでいない約10万t程度を、約束どおり流通させるとともに、需要に応じた増産に向けた取り組みを進めて、米の安定供給と安定価格の実現に努めていきたいと考えています。
記者 もう1点ですけれども、集荷業者に対して報告を求めている概算金や、買取金額について、通知の発出は8月18日でしたが、その取りまとめの状況と、その公表のあり方で、情報の活用方法については、経営に関わるので慎重に取り扱いたいと、以前発言がありましたけれども、この方向性について固まったものなどあれば教えてください。
大臣 今ご指摘のあった概算金は、順次報告をいただいているところです。8月末までの報告の取りまとめでは、令和7年産米の概算金は昨年より3割から7割程度高い価格で設定されている傾向が確認をできています。今後とも概算金の設定や変更は決定後5日以内、買取価格は対象月の翌月の5日までに報告をいただくことから、今後も状況を取りまとめて、米の流通実態の把握に努めていきたいと思います。
記者 今の米の関係ですけれども、2点お伺いします。大臣、かねてからまず来年6月末の民間在庫が、相当な量になるというふうな発信をしてきましたが、それは米価へのアナウンス効果というか、そういったものも狙っているのかなと思いますけれども、相当な量になるといった場合に、米の価格が下がりすぎる懸念はどういう見通しをしているのかというのが1点と、もう1点は民間在庫が相当な量になるという局面で、やはりこの備蓄水準を戻す、戻していくという判断もあってもいいのかなと思いますけれども、その辺は令和7年産でいくのか、それとも8年産以降でまた考えていくのか、その辺の判断の基準を教えてください。
大臣 今お話しのありました、米の需給については、今期の需要量が令和6~7年の需要実績711万tと同程度となり、生産量が昨年より約56万t増加するとすれば、令和8年6月末の民間在庫量は玄米ベースで200万tを超える見込みです。作柄や需要動向によっては、今ご指摘のあったとおりの直近10年程度で最も在庫水準が高かった、平成27年の226万tに匹敵する水準となる可能性もあるところです。現在米の店頭価格が高止まりをしている状況にある中、外国産米のこれ以上の流入や、消費者の米離れを防ぐ意味でも、まずは価格を落ち着かせることが大事だと考えています。そのためにも、全体の需給動向などについてマーケットに対してしっかりと情報提供を行うとともに、今後の価格水準や販売数量への影響を注視しつつ、米の安定供給と安定価格の実現に努めていきたいと思います。その上で、最後の方にご指摘のあった備蓄米、これの水準についてですけれども、需給環境が大きく変化をして、備蓄米の買い入れ、または買い戻しの環境が整った場合には、備蓄水準の回復に向けて計画的に行っていく考えを持っています。
記者 米の価格について、大きな下落というのはあまり想定していないということですか。
大臣 もちろん行政としてはあらゆる想定を頭に入れながら備えるということは当然だというのが前提の上で、ただ現時点で見れば、新米の価格が相当上がっていると。一方で、私も繰り返し申し上げていますけれども、この新米の価格という一時点の価格だけではなくて、これからの新米の一年のシーズンで見ていただきたいと。そういった中で繰り返し、過去10年と比較をしても、最も在庫水準が高かった平成27年と匹敵するぐらいの水準になる可能性があること。そして、仮に我々が見通しを持っている生産量も昨年よりも約56万t上昇したとすれば、増加したとすれば、こういったことになるということも含めて、やはりマーケットに対して、この数字をしっかりと届けること、そしてマーケットが冷静になっていただくこと、こういったことも必要なのではないかなと思います。なので、現時点はまずそういった状況を関係者・マーケットの皆さんとも共有をするということが、まずは大事な局面なのではないかなというふうに思っています。
記者 8月21日の吉村知事・維新代表との万博同行の、万博視察なんですけれども、後ろめたさはないんでしょうか。公務と政務を兼ねた総裁選に向けた事前選挙運動と見られても仕方がないのではないでしょうか。実際、視察関連の報道を見ると、親密な2人と、吉村知事とお互い評価し合ったとか、蜜月関係という見出しの記事が出て、要は総裁選で維新とのパイプが太ければ、小泉総理・総裁、政権ができたときに、維新が連立入りして長期政権化する、安定化するプラスの要因になるというふうに受け止める人がいると思うんですけれども、後ろめたさはなかったんでしょうか。公務と政務兼ねた事前選挙運動に見えるんですけれども。
大臣 後ろめたさは全くありません。そしてぜひ横田さんも、万博行きましたか。
記者 行きました。
大臣 私が行ったEARTH MARTっていう、食を一つの題材にしているパビリオンなんですけれども、そちらへは行きましたか。
記者 あ、そこはまだいってないです。
大臣 ぜひ行ってください。行っていただくと、我々農水省が進めている、食の魅力、そして生産者の皆さんが苦労して、我々が毎日食べているものを作っていただいていることに対する感謝、こういったことも含めて、本当に伝わりやすい、素晴らしいパビリオン、展示となっています。これは農水大臣としても見ておくべき展示だったなと、大変公務にとっても資する内容でありました。
記者 吉村知事が同行したのは、大臣側からの要望だったと。吉村知事が閣僚の万博視察に同行するのは初めてだったという報道もあるんですが、これはまさに政務・政治的利用というか、総裁選に向けた選挙活動にもなるという意図にも見えるんですけれども。違いますか。
大臣 これは、知事や首長さんが同行すると、政治との混同だというふうに言われるのであれば、先日鹿児島の大雨の被害の現場にも、塩田鹿児島県知事、そして地元の市長さん、同行いただいております。
記者 維新代表も兼ねている吉村知事だから、特に問題ではないかと。
大臣 だとすると、もう維新の代表を務めている吉村さんと会える国会議員がいなくなる、大臣とかがいなくなるということになってしまうので、そこはそこで、大阪の府知事として万博のご同行をしていただいたというふうに理解するのが普通だと思います。
記者 お米のことに戻って恐縮なんですが、お米の価格、大臣、このところ踊り場という表現をずっとされていたと思うのですが、現状、今、POS価格のグラフを見ると非常に上がっているのが見えるんですが、これは上昇局面に転じたという認識でいいのかというのを教えてください。
大臣 これは慎重に見極めたほうがいいなと思っています。現時点3つ上がったということをもってみれば、上がったというのは間違いないです。それはそのとおりだと思います。ただ一方で、上がった局面の前には、2週上がった後に下がる、こういったことも見られました。あとは今回はですね、9月の1日から9月の7日ということで、備蓄米を延長するのかどうかっていうことの局面の中で、最終的に延長しましたけれども、そういった状況も一定の影響がある可能性もあります。ですので、販売延長を決めて、マーケットもその動きの中で、次のデータは9月の8日から14日ということになりますので、そういったことも冷静に見ていく局面ではないかなというふうに思います。
記者 分かりました。あともう一点、お米のことで、これはすでに出た話ですが、概算金の報告のことなのですが、これ公表のあり方は、先ほどおっしゃられたように、毎月末の数字、前年との比較の数字を出していくということで、数字というか、伸び率を出していくということでしょうか。
大臣 公表のあり方はよく考えたいと思います。やはり先方の経営上の様々な考え方もありますので、地域によって、公表しているJA(農協)もあれば、非公表という扱いをしているJAもあります。そういったことも踏まえて、よく慎重に考えたいと思います。
記者 ただ、つまりJAにとっては、やはり価格決定権を握りたい、握っておきたいので、なるべく公表されたくないというのがあると思います。で、そういったJA側への過剰な配慮が概算金の不透明さ、米市場の不透明さに繋がったという指摘もありますが、その点はどう考えてらっしゃいますか。
大臣 これは実際に概算金を決めているのは国ではないので、概算金の今のようなご指摘に対して、よく説明をしていただくのはJA側の説明が必要なんだろうというふうに思います。一方で、この概算金はこれだけ今米についての関心が高まっている中で、事実上、公表とされているような地域も、そして非公表とされているような地域も、結果としてはもう情報が相当世の中に出ていることも事実ですよね。こういったことも踏まえて、やはりお米の価格について、適正な値付けとなっているかどうかっていうことについては、これは流通全体、マーケット全体の中で、我々、今見える化の取り組みも進めていますが、そういった中でも、よりご理解いただける環境を作っていくのも我々農水省の責務だと思っています。
記者 政務の話に戻って恐縮です。大臣、先週の会見でも、地元の寄って立つところは自分の地元、横須賀・三浦にあるとおっしゃっておりまして、この週末、我々どもの取材でも、地元との集会をこなしてらっしゃったと。その中で取材の中で、支援者の方の話を聞いておりますと、大臣が総裁選に向けて、強い意思を示していらっしゃったと受け止めていらっしゃった方もいるようです。改めてこの週末、寄って立つところとおっしゃった支援者の方々と話をされて、そういった方々の期待などを受けて総裁選の出馬への意欲、意思はどうなっておりますでしょうか。
大臣 週末土曜日に地元の横須賀で横須賀・三浦の、市議県議の皆さん、そして私を支えていただいている後援会の役員の皆さんに私の意向をお伝えしたのは事実です。意向を伝えたということをもって、これから正式な表明に向けて、関係者、また陣営、そういった皆さんと、一つ一つ積み上げていきたいと思います。
記者 今、出馬をされるということをおっしゃったんですけれども、陣営という中で、加藤財務大臣が陣営につかれるという報道も出ておりますが、これについてご所見等お願いします。
大臣 私から加藤財務大臣に選対本部長を依頼したのは事実です。そして、お受けいただいたということで、私としては大変力強く、心強く思っているところです。
記者 最後に一点だけお願いいたします。色々な自民党今ですね、岩盤的な保守層の票の離れだとか、色々指摘されております。そんな中であっても色々意見の分かれる、選択的夫婦別姓のテーマだとか色々あると思います。こういったところ、今回どういったスタンスで、またどういったスタンスで臨めば、有権者の支持が戻るとお考えでしょうか。
大臣 まずは自民党が置かれている状況は大変厳しい状況にあります。党内が一つにならずして、野党の皆さんのご協力も得られる環境にはありませんので、大きなことを言うよりも、まず党内がしっかりとまとまること、そして皆が一つになれる、そういった環境をつくれるかどうかが、私は今回は非常に重要なことだと思っています。
記者 引き続き政務について、総裁選について伺いたいと思います。総裁選に出馬されるということですけれども、総裁選で主に何を訴えていきたいのか、公約について現時点でのお考えを伺いたいのと、石破政権で進められた防災庁あるいは農政への転換について、これはどう取り組んでいきたいのか、この2点伺えますでしょうか。
大臣 これ農水大臣の会見の場なので、政務について詳細を語ることは控えますけれども、今お話をしたのが全てです。党が一つにならなければいけないと。そのときに、しっかりと皆がまとまれる、そういった環境作りをする。そういう総裁を選び、そしてまた野党と向き合って、政治の課題を前に進めていく。国民の皆さんが物価高も含め、不安に感じていることと向き合い、とにかく課題を前に進める、そういったことが私は一番大事なことだと思っています。
記者 お米の話に戻りますけれども、POS価格で3つの調査のうち、2つで4,000円台に戻った局面だと思います。大臣仰るように、しばらくどういう値動きをするか注視するというのはそのとおりだと思うのですが、大臣就任の日だったと思いますけど、石破総理が党首討論で米は3,000円台でなければならないということをおっしゃって、3,000円台に平均で下げるんだというのが当初の目標で、大臣の備蓄米の放出の取り組みで、それをこれまでキープしてきたところだと思います。この前、石破政権の間とそのあとも含めて、この3,000円台をキープするということは今もその政策目標として意識されているのかどうか、そこをちょっとお伺いします。
大臣 この、いくらかっていうところを私が言うべきかというのは、この前、あれはBS-TBSでしたかね。そこでもお話をしたとおりなのですが、どのような農業経営をされてるか、どのような生産費か、コストか、このことによっても適正価格というのは変わりますので。最近ですと、大手の卸の会社の社長さんも、これはまさに日経さんの記事だったと思いますけれども、3,500円が適正だと言うお話もされてました。一方で小規模の方とかは4,000円が適正だという声もあれば、大規模でやられている法人協会の方は3,000円が適正だと言う方もいらっしゃると。そして、いくらかというのではなくて、今が現状4,000円だとしても、先ほど朝日新聞さんの質問にもお答えしたとおり、この量をしっかりと冷静に受け止めていただければ、日農さんにもお答えしましたけど、昨年と比べても最大で56万t、そしてこの10年間で民間の在庫水準も、最大に匹敵するぐらいの民間在庫になる可能性もあるということになれば、やはり今の価格だけで、これから1年間それがずっといくという判断をするのも私はちょっと早すぎるというふうに思います。改めてですけれども、この全体の様々な数字、状況というのをよく受け止めていただいて、そして、もう9月の下旬に入りますけれども、もうすぐしたら、新米の収量の確定をするわけで、そういったことをもって改めて冷静に見るっていうことが、現時点では大事なことではないかなと思っています。
記者 米のことについてなんですけども、現状4,000円を超えているということで、備蓄米を放出する大体前の水準にほとんど戻ってしまっている状況だと思うんですけれども、この事態というのは、大臣、まず想定されていましたでしょうか。
大臣 これは当初から価格を安定化させるというのは相当難しいという中での就任でした。その中で、異例のことではありますけれども、随意契約という形をとって、実際に下がってきました。この下げの要因というのは、ここ3か月強を見ていると、やはり、随意契約による備蓄米の販売数量、これと、銘柄米、その他の銘柄米、ブレンド米、こういったものの販売数量、こういったことにも、この平均価格の動向ってのは左右される、こういった傾向がありますので、今、新米というのが新たに出てきて、その新米自体が一定、高いですから、この価格に一回こう上がってくるというのは、ある意味、この中の傾向どおりともいえるかもしれません。一方で、今ちょうど過渡期にある、この今の現状だけで、水準が当時の4,200円に近いところまで戻ってきたからといって、これがそのままずっと上がり続けるかともまだ言えない状況だと思いますので、先ほどのお答えにも重なるんですけど、やはり今、もうすぐしたら収量確定しますので、ここをもって、実際の民間在庫がどれぐらいに積み上がることになる新たな1年になるのか、やはりそういった判断の上に議論したほうが、何か今の一時のどちらに行くかわからない状況の中で、確定的なことを申し上げるっていうのは、控えたほうがいいんではないかなというふうに思っています。
記者 現場取材しますと、やっぱり大臣、必要な情報提供を今する段階だということを常々仰られていると思うんですけれども、頭ではわかっていても、なかなかこう、米があるという実感がないと、現場としてはなかなかこう米を確保するということにどうしても動いてしまうという声を聞きます。こうした状況、もう2週間3週間もしかしたら続いてるかもしれませんが、これはもう今の段階ではメッセージを伝える以外にはなかなかもう打ち手はないような状況なのか。そのあたり、どのようなお考えですか。
大臣 これは一回出た不足感を拭うっていうのはものすごい難しいことだっていうのはそのとおりだと思います。先日、NHKの日曜討論に出たときは、私の隣の荒幡先生という学者の方からは、一回出た不足感を拭うには一回過剰感を演出をしなければいけないという発言がありましたよね。それぐらいこの安定化に向けた取り組みというのは、かなりの労力がかかるっていうのは事実だと思います。ですので、今、当面、とにかくこの不足感の中では確保しなければいけないっていうことで、取り合いが、価格合戦、買い取り合戦になって、価格がつり上がっていくという状況にあるかもしれませんが、これ何度も申し上げますけど、収量が確定をした先に冷静になって、今年は本当に例えば約50万t出たと。これは荒幡先生も悪くて50万tじゃないかとは言ってましたけども、それは我々は楽観視はしません。ただ、仮に50万tだとして、一回世の中に確定をした数字が出る。そして民間在庫、これも10年の中で最大の匹敵する226万tだというぐらい出るということになったときに、相当マーケットの心理、そして消費者の心理、こういったところにも、あぁ今年からはしっかりお米が出てくるんだと。こういったことになっていくと、安定化に向けた、鎮静化に向けた一歩ではあると思うんですね。そうなってから、では、じゃあどの段階で備蓄を戻していくのか、こういったことの議論ってなると思うので、今のところは、この全体としてこれから見通される可能性のある数字などをしっかりとご理解いただきながら、我々としてはそういった段階を越えた先にもセーフティーネットづくりとか、備蓄米全体の政策の検証とか、令和9年度(2027)の新たな米政策に向けて、連続して政策をしっかりと作っていく。こういったことも改めて伝えていく大事な機会ではないかなというふうに思っています。