水田などの土壌から発生する温室効果ガスを抑える手法に、一つの光明が見えた。温室効果ガスの一つであるＮ2Ｏ（亜酸化窒素）を消去する微生物の活動が、土壌条件によって大きく左右されることが明らかになったもの。愛媛大学と農研機構（農業・食品産業技術総合研究機構）の研究グループが１月16日、東北大学との共同研究の成果として発表したもの。水田からの温室効果ガス発生抑制技術としては、すでに「中干し期間の延長」が有効と国も認めているが、今回の研究成果はこれとは別の根源的な手法の開発に向けた第一歩として期待される。
Ｎ2Ｏは、強力な温室効果ガスでありオゾン層破壊物質。その最大の人為的な発生源は、窒素肥料が大量投入される水田などの農地土壌だが、「土壌は非常に複雑な物質」のため、Ｎ2Ｏ発生・消去機構には未解明な点が多い。愛媛大学らの研究では、Ｎ2Ｏ消去微生物（別名Ｎ2Ｏ還元菌。Ｎ2Ｏガスを無害な窒素ガスに還元変換する微生物のこと）の講堂が、一定の土壌条件下で群集化し活性化することを突き止めた。
一定の土壌条件とは、微生物の棲み家となる土壌団粒（土壌中の微粒子が結合して粒子状になった物体）の孔隙（隙間）の別による。土壌団粒の孔隙は、オープン孔隙（団粒外大気と繋がった孔隙）とクローズド孔隙（団粒外大気と繋がっていない孔隙）に大別できる。このうちクローズド孔隙が多い団粒内部だと、無酸素環境となるため、Ｎ2Ｏ消去微生物の群集割合が大きく上昇することが分かった。
愛媛大学らは、今回の研究成果が、以下の応用に向けた重要な知見になるとしている。
①不明な点が多い土壌のＮ2Ｏ発生メカニズムの解明
②Ｎ2Ｏ発生抑制に向けた土壌管理技術の開発
③微生物を使ったＮ2Ｏ消去資材の開発
