江藤拓農相は2月14日の閣議後定例会見で、政府米21万tの放出を表明した。3月初旬に公示する15万t(令和6年産10万t+令和5年産5万t)の売渡入札を3月上旬に実施、残る6万tの売渡入札の実施時期は、流通状況を見極めて判断する。最初の放出玉は3月末にも店頭に並ぶ見通し。会見で江藤農相は「流通が滞ってスタックしている状況を、何としても改善したいという強い決意の数字と受け止めていただきたい」、「必要であれば、さらに数量を拡大することも考えている」と語った。だが今のところ、スポット市場は無反応だ。価格水準が明らかになるまでは様子見が続くものとみられる。
売渡対象者は、玄米仕入量が年5,000t以上で、卸などへの販売計画を持っている大手の集荷業者(全農、全集連、大規模単協など89法人)に限定する。予定通り、落札業者には原則1年以内の買い戻しを義務づけた。ただし双方協議の上で「延長も可」としている。また卸などへの販売数量・金額の報告(隔週)も義務づけたのは、そもそも「流通の目詰まり」を解消するための異例の放出だから、「効果を確認しなければ意味がない」(農水省)ため。つまり、ある種の〝監視〟だ。報告内容を個別業者名が分からないよう取りまとめ、ホームページで公表することで、透明性を確保する。
最初に放出する政府米15万tのうち10万tは令和6年産だから、一部報道が心配している「古米臭」とは無関係だ。政府米の保管管理は特に厳格なため、令和5年産であっても古米臭がすることはない。
令和6年産の生産量は、前年を18万t上回っている。にも関わらず、「令和の米騒動」に伴う〝早喰い〟があったとはいえ、昨年12月末現在の集荷数量は前年を21万t下回った。これを「流通の目詰まり」と捉え、穴埋めするために同量の21万tという数字を示してみせたわけだ。
最初の放出量を15万tに据えたのは、「大手集荷業者が1か月に販売する量が15万tなので、適量と判断した」(江藤農相)。だが令和6年産政府米在庫17万2,016tからすると、「放出量を抑えた」印象は根強い。その思惑は、「このくらい出せば、〝目詰まり〟分が出て来てくれるのではないか」にある。生産量は上回っているのだから、目詰まりが解消されれば、放出分はむしろ過剰になってしまう。だからこその「買い戻し条件付き」という前代未聞の措置なわけだ。
では、これで農水省の思惑通り、「流通の目詰まり」が解消されるのか。普段はビビッドに反応するスポット市場は、今のところ無反応だ。売り唱えが上がりもしなければ下がりもしておらず、また玉がドッと出てくるわけでもない。ほとんど〝凪〟のような状態。原因は明らかで、売渡価格が不明だからだ。
農水省は今回、売渡予定価格について、「財政法、予算決算及び会計令に基づき設定する」としかしていない。「予定価格は、事前も事後も公表しない」という意味だ。国が行う売渡入札の場合、公表しない「最低落札価格」を設けなければならない。応札する側は可能な限り安く仕入れたいから、この目に見えない最低落札価格へ近づいていくことになる。つまり公表しないとはいえ予定価格は、江藤農相が否定するターゲットプライスにならざるを得ない。低く設定すれば安値誘導と言われるし、高く設定すれば物価高騰を煽っていると言われる。どちらにせよ批判の的だ。
ただ江藤農相は会見のなかで、最初の放出のうち5万tを令和5年産としたことについて、「なぜ古米という方もおられるかもしれないが、5年産であれば、6年産よりも、若干値段を下げて出すことができるので、ご理解いただけると思う」とも。
加えて「公表しない」はずの予定価格も、応札業者側には落札・不落札の別から類推できてしまう。これらを聴き取り、専門業界紙が「予定価格は○○円」と報じるのも通例だ。
「流通の目詰まり」が解消されるか否かは、未だ未知数と言える。
一問一答(2月14日、閣議後定例会見から抜粋)
大臣 昨日、一部報道されてご存知の方も多いかと思いますが、私から(政府備蓄米の)内容について発表させていただきます。販売数量は21万tとします。これは流通が滞って、スタックしている状況を何としても改善したいという強い決意の数字と受け止めていただきたいと思います。今回、21万tと申し上げましたが、必要であれば、さらに数量を拡大することを考えています。
売り先につきましては、5,000t以上の仕入れを行っている大手の集荷業者を対象とさせていただきます。第1回目のロットは、15万tを予定しています。大手の集荷業者が、1か月に販売する量が15万tですので、適量と判断しました。このうち10万tは(令和)6年産米、5万tを(令和)5年産米とします。なぜ古米という方もおられるかもしれませんが、5年産であれば、6年産よりも、若干値段を下げてお出しすることができますので、商社の方々にもご理解いただけると思います。私自身も、5年産米をわざと冷まして、おにぎりにして食べました。どれが6年産なのか、5年産なのか区別がつきませんでした。私も局長も課長も、誰も区別がつかない。食味的にも、香り的にも、十分な品質を保っていると自信を持ってお話ができると思います。
申込数量は特定の者による買い占めや、応札価格の高騰が起きないよう、集荷実績に基づき上限を設けることとします。価格については、会計法令の規定に基づき、適正に設定したいと考えていますが、この場で申し上げることはできません。
これまで申し上げてきた買い戻しは、原則1年です。これは変わりませんけれども、(令和)7年産米がどういう状況になるか、全く見通せないです。年度をまたぐ、1年をまたぐこともあり得る。1年を超えても、まだ全部を買い取っていない状況もあるということです。1年にこだわらないとご理解いただければと思います。なお、今後のスケジュールについては、週明け月曜日から関係者への説明し、買受資格に係る審査の受付を始めます。入札公告は、3月初めを予定しています。1週間後には入札を行い、入札結果はしっかり国民の皆様方に発表します。3月半ばには備蓄米の引渡しを開始します。
また、売渡しをした備蓄米がちゃんと流通に乗っているか確認しなければなりません。売渡し先には、隔週ごとに、販売数量、金額といった販売状況を農水省に報告することを義務付けます。これらの情報は農水省でとりまとめた上で、皆様方に発表します。
今回の備蓄米の売渡しが米の流通の円滑化、ひいては国民生活の安定に資するようになるよう、迅速に手続を進めてまいります。詳細は、事務方から報告させていただきます。《略》
記者 備蓄米の関係で、放出のねらい、期待する効果と、先ほど引渡しの時期が3月半ばとおっしゃっていましたが、実際に流通する時期は、どれぐらいを見込んでいるのかお願いします。
大臣 生産者の方々はしっかり作っていただきました。需要に見合うだけの米の量は、確実にこの日本の中にはあります。しかし、流通がスタックしていて、消費者の方々に高いお値段でしか提供できていない。流通に問題があるということです。21万7が集荷業者のところに、足りない分があるということで、それに見合った数字を用意することにしました。そして、一気に出すという考えもありました。5万tずつとか、少しずつ出した方がいいのか、10万tにしたほうがいいのか、さまざま検討しましたが、インパクトがない数字を出しても仕方がないということが一つ。それから、供給過剰になって、急激な価格の変動をもたらすことも、市場的にはあまり良くないかもしれません。熟慮を重ねた末、役所の中で相談を重ねて、15万tとしました。出回りの時期は、3月の半ばに備蓄米の引渡しを開始しますので、仲介業者の皆様方は、大体そのあと1週間程度で、卸の方々に売渡しを始めることになると思います。卸に届けば、そこから先は、数日から1週間程度で、スーパーの方々の手元に届くと思います。ただ、スーパーの方々も、現状、高い値段で仕入れたお米を在庫としてお持ちですから、その販売が終わるまで、手元に届いてもすぐに値段が下がるかどうか。私が価格にはコミットしないとずっと言ってまいりました。私が考えているのは、流通の改善です。正直なところ、上昇した価格が落ち着くと、当然期待しています。
記者 21万tのうち、15万t出し、残りの6万tはいつぐらいまでの間に、どういった状況を見極めて出していくことになるのか、説明いただければと思います。
早朝、アメリカのトランプさんが相互関税をかける話を発表されました。日本からアメリカへの農産品の輸出について、水産物は、大臣が(前回在任時に)やられた日米貿易協定でも除かなかった品目だと思うので、若干関税が残っていると。あるいは、米の重量課税は、少し論点になると思っているのですが、そういったことも踏まえて、日本の農業への影響をどう考えるのか、伺えればと思います。
大臣 需給については、なかなか難しいです。物があるところに、国が出すことになれば、それぞれが個別にご判断をされるでしょう。これは緊急的な措置ですので、あくまでも、一気に出すよりも、若干バッファーを持っていた方がいいのだろうと。機動的にやります。もう準備はできているわけです。一度やれば、2度目は迅速にできますので、そのタイミングがいつかは、需給の状態をみて判断する。買い取っていただいた集荷業者の方々にも、しっかり流通に乗せているのか、農水省に報告する義務を課すので、その状況を見極める数字を持っておきたいということです。そして、6万t出し終わった後も、さらに必要な状況、需給が改善せず、流通がまだスタックした状態だと、当然、それにまた追加的な措置は考えています。
記者 イメージとしては21(万t)というのは、とりあえず枠として21あるので、15やるのは決まっていると思うのですけれども、残りの6は発動されない可能性もあるし、逆に言えば、6万tやって、さらにプラスアルファーもあり得るかもしれないと。21というのは、当面の上限だという理解でよろしいでしょうか。
大臣 いえ、上限は考えていません。ただ、21万tはしっかり準備ができているということです。ですから、それから先は、もちろん(令和)5年産米もしっかりありますし。食べたけど美味しかったです。もう全然(違いが)わかりません。是非、皆さんも食べてみたらいいと思います。やるからには効果がなければ、全く意味がありません。今まで農水省として、食糧法に基づいて、こんなことはしたことがないです。しかも、我々はマーケットを相手にしているということですので、正直、どうなるか。いつも何度も申し上げていました、価格は市場で決まるべきものだという考え方は変わっていませんので、このメッセージを受け取っていただいて、市場が正常化すること、流通が正常化することを願っています。
アメリカの対応については、どの国にもやるという話ですけれども、どの品目にやるかは、私もニュースでしか見ていませんが、4月ぐらいにかけて、検討するとあります。米は(関税を㎏あたり)341円かけています。逆に牛肉でいうと、米国が36%(※正しくは26.4%)かけて、日本が22.5%ということは、逆にこっちの方が低い。そこはしっかり、こちらの立場を主張することも必要になってくるでしょう。それから、水産品についてもさまざまありますが、関税自主権があるアメリカがどういうオファー、考え方を出してくるかを見極めないと、日本がこうしますということは、今の段階では言えませんので、今のところ待ちという態勢だと思います。
記者 今回の放出をめぐっては、様々な難しい判断だったと推測しています。その中で、価格に介入しないと。食管制度をやめた後に、農水省が行ってきた政策について、今回の件が前例となり、コロナの時などはそうだったと思うのですが、逆に(米が)余った時に買ってくださいという話はいつも出てくる中で、また食管制度のような状況に戻らない保証があるのか、そこに向けた考え方、決意を伺えればと思います。
大臣 米の歴史は、非常に財政負担を伴って、在庫を処分した時代もあります。全量買い取りをして、売渡価格を決めて、それが税金を投入される形で、大きな国民負担になっていた。そういう時代に戻ることは、決してあってはならないと思っています。食管制度は、うまくいかなかったことは、歴史が証明していますので、そこに戻ることはあってはならないと思っています。
しかし、米は主食です。今回、マネーゲームとまでは言いませんが、投機の対象だと一部で言われていますが、こういったことは健全ではないとやはり思います。今ちょうど水田政策の見直しを根本的に行っていますので、流通も含めて、農水省として、この米政策は、やはり中心に置いて考えていかなければいけない大きな議題だと、今回は大変教訓として思いました。そして、今回売渡しをしたことによって、逆に下がった時は、この備蓄米として買い増しが出来るのではないかとご指摘が出てくるかもしれません。そういうご指摘が出てくることは、極めて私は正しくないと思います。ですから、一貫して価格にはコミットしないと。あくまでも流通の問題であって、食糧法を条文ごとに読んでいただければ、価格の高騰時にはこうするということは、どこにも読める条文はありません。逆に言うと、価格が下がった時に買うという条文もないです。法治国家であって、立憲主義です。法律に基づいて、制度を運用されることが当然ですから、それは守っていきたいと思います。
記者 備蓄米について、昨夏の米の品薄から米の高騰まで、当時から、国民から放出して欲しいといった声がたくさんありました。そこからこういった判断に至るまで半年ほどかかり、その間の混乱については、農水省としての責任はどうお考えでしょうか。
買戻しについては、1年以内と先日おっしゃったものが、また時期が変わると。買い戻すことで、市場に流れる供給量を調整する形と捉えていたのですが、微調整が可能になった理由について教えてください。
大臣 これだけ、国民の皆様方が高い米価で困っていらっしゃることは、農水省はもちろんですが、政府として、総理も大変責任を感じていらっしゃるだろう。直接聞いたわけではありませんが、物価の安定に対して、総理は非常に心を砕いていらっしゃいますので、そういう気持ちはあります。この約半年あまりの期間に、何でもっと早く決断できなかったというご批判は、甘んじて受け止めます。私が農水省の責任者ですから。
しかし、食料・農業・農村基本法の改正をして、食料安全保障を確立しようと。担い手を育て、農業基盤を守っていこうと。今国会には、合理的な価格形成のための法律を出そうと。農家の所得、収入を増やしていこうと。そういうことを一生懸命やっている時に、一番やりたくなかったことは、農家の方々の生産意欲を削ぐことです。やはり国が介入して、下がってしまった。昨日も、地元の方が来られました。地元の方々も、今の値段は困ると言っていました。今の値段が続くと、さすがに米は食べなくなると、宮崎弁で。今の値段はちょっと下げてもらわないと困ると。下がり過ぎても困る、せっかく上がったのにと。ずっと米は儲からないと言われ続けてきて、それでも一生懸命米に取り組んできた方にしてみれば、この米高はやはり嬉しいわけです。それはそうじゃないですか、丹精込めて作ったものが高く売れれば、それは嬉しいです。ただ、今の問題は、農家の手取りにしっかり繋がっているかという問題です。農家の手取りが、ドカンと収入が増えていれば、そういった理屈も理解できますが、買い取った方々が利幅を取っている状況は、正常な状態ではないと申し上げました。農家の方々から見れば、今回のことは評価する方もいらっしゃるでしょうし、評価してくれない方もいらっしゃると思います。何度も言いましたが、すごく悩みました。胃に穴が開くぐらい悩みました、どうしたらいいのかと。私は田舎の政治家ですから、生産現場を守りたい気持ちが強くあります。しかし、このままの状態を放置すれば、これから先、主食である米が、マネーゲーム、投機の対象になってしまうかもしれない。これは日本にとって、決してよくないです。そして、生産者にとっても、極端な米高になれば、米から離れていって、毎年10万tずつ減ると言われて、今はインバウンドで若干がペース落ちていますけれども、人口動態はどんどん下がって、子どもも生まれないと、米の消費も下がるのです。とんでもない値段で、逆に米離れが進んで米価が落ちてしまえば、農家(の意欲)も冷えてしまう。
今度のことで、私が期待しているのは、消費者の方々も、これぐらいの値段だったら納得しようと。生産者の方々も、今年の概算金、精算金といったものが、期待しているより若干下がったとしても、これぐらいであれば良いだろうと。マーケットの話ですから、私が期待している数字に落ち着くとは全く思いませんが、そこに落ち着いてくれればと期待と期待しているところです。
記者 今回の備蓄米の放出によって、相対取引の価格といった米価が下がった場合に、国民生活にとって、米価の今の高さが厳しいのは、重々承知しているのですけれども、視点を変えると、農家、JAの視点から見ると、米価が下がることで、経営にとってはマイナスになる側面もあるかと思います。例えば、相対取引価格など、米価が下がったときに、何か対応を取ることは考えていますか。
大臣 とにかく今は、正常な状態ではないのです。正常な状態でないものを、正常な商取引の水準に戻すために、備蓄米の放出をするということです。決して今の米価は農家のためにもなりません。やはり、今のことだけではなくて、安定的に将来にわたって再生産が可能となり、利益もしっかり確保できる水準であることが、農業にとっては大切な要諦であると思います。ですから、相対がどうとかについては、まずは、今回の措置を市場がどう受け止めるのか。今回は、これまで米の取引に全く参入してなかった方が、多数参入してきていることも、大体わかりました。農家、取引業者の方々についても、今調査を進めています。大体の調査結果が上がってくるのが2月末ですから、3月中旬以降ぐらいには結果を皆さんに報告します。米は難しい、本当に。先輩たちも本当に苦しんできた。ほんのちょっと前まで、安くてたまらないと言って苦しんできたじゃないか。今は本当に考えられないようなことが起こっているので、とにかく今の正常でない状況を、正常な状態に戻す。米に限らず、流通がどこかでスタックして、特定の人が、利益を享受するのはよくないです。生産者の方々も利益を享受し、流通業者の方々も利益を享受し、消費者の方々もそれに対して納得していただくことが大事なこと。今の段階で相対が下がったらどうするということは、申し上げることはできません。米政策は大事なことなので、しっかり今回覚悟を決めてやったので、どのような批判が飛んでくるか私もわかりませんけど、覚悟を決めてやった以上は、結果にも責任を持ちたいと思います。
記者 政府が売り渡す価格と買い戻す価格は、価格が変わってくるという認識でよいのか。価格が変わってくる場合、政府側の差益や差損が生じると思いますが、例えば差損が生じる場合、税金がかかってくることになり、財政にも影響がある話だと思います。そのあたりの認識を確認できればと思います。
大臣 先ほど「1年をまたぐこともある」と申し上げました。例えば、そんなことがあってはならないのですが、大型の台風が来て、米作地帯がやられて作況(指数)が90になるようなことになれば、当然米価は上がるでしょう。米価は急騰しているけれども、1年という期限があるから、必ず買うということであれば、これはさらに逆に上げ圧力になりかねない。そういう状況であれば、私は需給の状況を見極めてと申し上げました。逆ざやになることは、決して良いことではないと思っています。利益を得ることはもちろん考えていませんが、売渡価格よりもはるかに高い価格で買戻すことは、今、断定的なことは申し上げられませんが、できるだけ避けたい気持ちもあって、1年を超えることもありますと述べたものです。食農審(食料・農業・農村政策審議会)の方からは、1年という答申でしたけれども、私の判断で1年を超えることもあると、変えさせていただいたものになります。
記者 先ほどから「健全な状況ではないことの是正のために備蓄米を放出する」と仰っていますけれども、一方で備蓄米を出すことによって、多少なりとも市場価格に影響してくるような話になってくると思います。それが果たして市場が健全な状態を保てるのかという一方の疑問もあると思います。そのあたりの考えを伺えればと思います。
大臣 いい質問だと思います。やはり市場に対して、公の立場の者が価格に影響を与えるような行動をすることは、私は王道ではないと最初から申し上げています。やると決めた瞬間から、今でもそう思っています。しかし、他に手がないのです。そして、あまりにも高い。私も週2回はスーパーに行きますが、必ずその度に写真を撮るのですが、写真を見返せば見返すほど、実体験としてこんなになっているのかと思います。これだけのことが事象として国内で起こって、打てる手があるのに、そのカードは切らないのかと言われれば、切らざるを得ない。決して、正しいとか、当然とか述べるつもりはありませんが、このカードよりほかに手がないということなので、私の責任をとるという覚悟の下に、カードを切ったということになります。
記者 1年以内の買戻しを柔軟にすることは、1年以内にすると、2025年産米の供給減や、集荷業者の競争激化といったことが懸念されるから、ご判断をされたという認識でよろしいですか。
大臣 競争激化にならないために21万t出すので、競争激化を想定している訳ではもちろんありません。どれだけの米が供給されるか分かりません。作況が90とか、かつて大冷害の時は74ということもありました。相手は自然です。特に、米はハウス(栽培)ではありません。そういうとき、約束なので市場から買い上げることになれば、当然価格は上がってしまうではないですか。今回何のために市場に放出したのだということになります。そうならないように、しっかり市場の動向、需給の動向を見極めながら、買戻しについては慎重に行おうと考えています。決して、先延ばししようということではありません。落ち着けば、早速買い戻すこともあります。数か月で買い戻すこともあります。買戻しの数量についても報告します。
とにかく国民の皆様に情報を隠すことなく、集荷の状況、流通の状況、大手の集荷業者はだいたい90社くらいになりますが、そういった方々がきちんと流通に乗せたのか、どれくらいの値段で売ったのかということまで報告していただければ、適正な利益は、当然それに乗せることについて、阻害するものではありませんが、とんでもない利幅を乗せることはないだろうと考えています。
記者 品薄になった昨年と比較して足りない21万tを放出するということで、今夏も品薄になる懸念がまだ残っているのではないかと思うのですが、21万tで足りるかどうか、どのようにお考えですか。
大臣 私の期待だと思って聞いていただければと思うのですが、国が21万t出して、そして公告をすると。入札までの期間が約2週間あるので、その間に在庫として持っている方々がどういう経済判断をされるのか、私からは、具体的には申し上げません。しかし、15万t出てくることを予測すれば、ずっと持ち続けようという気持ちになるでしょうか。誘導はしません。経済行為ですから、それぞれの業者の方がご判断されればいいことだと思います。そういった方々が一定量を市場に出して下されば、21万tのプラスアルファーになるので、不足することはないだろうと予想はしていますが、仰るように、相手は市場で、マーケットですから、どのように動くかは私にもわかりませんので、これでも効果がない場合は21万tを超えても出そうという、農水省としての意思を今日は示しておきたいと思います。