4月4日に既報した「【iNSIGHT飯稲米】契約不履行の7業者は転売ヤーではない」に対し、当サイト「お問合せ」を通じて、相当数のご意見を頂戴した。これらご意見は、ほぼ共通した趣旨だったため、この場を借りてレスポンスさせていただく。
既報は、昨年の令和6年産政府米買入入札で落札した業者のうち7業者が引き渡さず、入札参加資格停止処分と違約金を科せられた件をめぐる指摘だ。このなかで、7業者が違約金を払って売り渡さなかった行為を「『健常な商行動』であり経営判断」と結論づけた。ここにご意見を頂戴した。そのいずれもが「『健常な商行動』とは言えない。商行為上、世間から誹りを受けるのは当然」との指摘で共通している。
既報では「『健常な商行動』であり経営判断」とした根拠として、契約価格と引渡時の相場との大きすぎる乖離をあげた。だが、あるご指摘では、「A販売業者が事前に納入価格まで決めて契約していたBスーパーに違約金を払って、もっと高く買ってくれるCスーパーに納品する」などという商売人にもとる行為は、世間から誹りを受けて当然ではないか――という。
結論から申し上げると、確かに「『健常な商行動』であり経営判断」は言い過ぎだったと言わざるを得ない。ただし、世間から後ろ指を指されるような行為では断じてない。まして無関係な第三者から誹謗中傷を受けるなどもってのほかである。
まず上記のパターンは、例がないわけではない。数としては逆のパターン、つまり「Dスーパーが、事前に契約していたE販売業者ではなく、もっと安く納品してくれるF販売業者に乗り換える」といった例のほうが圧倒的に多い。これらは、確かに「健常な商行動」とは言えないかもしれないが、当事者間同士でなされることなので、「世間」が誹ることもあり得ない。今回の場合、たまたま相手が国だったので公表されてしまった。つまり「世間」が知ってしまったというわけだ。
次に、その多寡はともかく、あらかじめ定められた違約金を支払い、資格停止処分も受けている。十分といえるかどうかはともかく、ペナルティを払っているのである。その上で無関係な第三者から誹謗されたのでは、ペナルティ過多にあたるではないか。そもそも、世間から後ろ指を指されるような行為なのであれば、違約金レベルがもっと高くていいわけだし、資格停止でなく剥奪すればいい。
もちろん7業者に非がないとは言えない。契約不履行は事実であるからだ。もう少し指摘させていただくと、米穀業界では、どうも川上にいけばいくほど「契約」の概念が希薄になる印象がある。例えば農協は事前に農家組合員から「出荷契約数量」を積み上げるのだが、これが実出荷数量と合致したためしがない。7業者に、「死守すべき契約」との意識があったかどうか…。そこは、しかし事実からは判じようがない。ただし、そもそも令和6年産政府米買入入札に参加しなければよかった、とは言える。その時点(第1回入札は昨年1月23日)では、ここまで価格が上がるとは予見できなかったではあろうが。振り返れば最大手である全農は、契約後に掻き集めた令和6年産政府米の不足分を、市中から買い集めたと伝わっている。思えばこれが、現在のスポット相場高騰の遠因になっていると言えなくもない。
なお既報のもう一つの論点に対しては、否定的なご意見が皆無だった。それは、ネット上を中心とした世間で溢れた誤解だ。7業者が政府米買入入札の参加資格停止処分と違約金を科せられ事実を、「今回の政府米放出で落札したにもかかわらず、市中に出していない、いわゆる転売ヤーだから、処分を受けたのだ」と、明らかに的外れに誤解した誹謗中傷である。7業者が犯したのは令和6年産〝買入〟入札の契約不履行であって、〝売渡〟入札ではない。したがって、いわゆる「転売ヤー」にはあたらない。上記の誹謗中傷は、言いがかりに等しい。
繰り返すが、この点に対する否定的なご意見は、全くなかった。当たり前といえば当たり前ではあるが。