江藤拓農相は4月22日の閣議後定例会見で、アメリカの米輸入圧力に対して「どのように対応するのかについては、今日の時点では申し上げられない」としながらも、否定的な見解を示した。国産米が「不足」している現在、「安い」アメリカ産米を輸入すべきとの声に対しても、「気持ちはよく分かる」とした上で、「日本で作れるものはできるだけ国内で作ることによって、食料自給率を上げていこうというのが食料・農業・農村基本法、基本計画の一番の柱」、「お金を出しさえすれば手に入るということを、日本人が信じすぎた故に、食料自給率が下がった側面がある」として、やはり否定的な見解を示している。
一問一答(4月22日、閣議後定例会見から抜粋)
記者 (4月)17日の日米交渉について、どのような報告を受け、農水産品について、どのような要求があったと把握されているかお聞かせください。
大臣 1回目、赤澤大臣がしっかり言うべきことを言って帰ってこられた。よかったと思っています。しかし、そこで何が出たかについては、当然、私は所管大臣ですので、農産品が全く対象になっていないということではないということですから、私としては承知している部分ももちろんありますが、交渉の内容を正式に発表すれば、所属している立ち位置の違いによって反応はそれぞれでしょうし、国内でも様々な意見が飛び交うことになりますので、今は、1回目、聞いてきたことに対して、いつ行くかはまだ決まっていませんが、赤澤氏が行くということですから、それまでは、情報はしっかり慎重に取り扱うべきだと思います。
私もTPPとか、大臣のときには、まさに日米(貿易交渉)をやりましたし、日英もやりました。情報管理は非常に大事です。相手の出方が分かれば、その対応ができるわけです。こちらの考えていることが筒抜けになるということは国益にならないと思いますので、今日のところはお答えを避けたいと思います。
記者 備蓄米の流通の状況について、先週、第1回の調査結果が発表されましたが、備蓄米の流通先を、業務用と家庭用の比率などはどのように想定しているのかということと、正確な数字はこれからだと思いますが、4月以降の状況を現状どのように把握しているのか、改めてお願いします。
大臣 なかなか難しい(質問)です。一度入札をして、集荷業者の方々のものになったわけです。そこから卸に行けば、卸の方々のものになった。それについて報告をしてくださいとお願いするだけでも、商取引上は、面倒くさいと思っていらっしゃると思います。それでもやっていただいています。国の国有財産である米ですから、放出されたことの意味、何のために放出したのかということを、流通に関わる方々にはご理解いただいて、私としては、できる限り、町の米屋さんに至るまで、きめ細かく行き渡ることが理想です。しかし、テレビ等でも流れておりますように、これまで集荷業者さん、卸さんとお付き合いがないところについては、手に入れづらいというようなお声も、この間の意見交換会で随分いただきました。本来であれば、卸と卸の間の取引は、今まで原則禁止しておりましたが、今回に限って認めるということにすれば、今週、第3回目が行われますが、1、2回目に比べて、より枝葉広く流通させることが可能になるのではないかと思っています。
ようやく、テレビ等でも(5㎏)3,000円前半とか、そういう米が報道されるようになってきました。予想よりは正直少し遅かったというお気持ちが消費者の方々には多いかもしれませんが、高い値段で仕入れた米を安く売るということは、なかなか卸の方々も小売の方々も難しいのだろうと思います。しかし、備蓄米に関しては、去年に比べれば高いというご批判は甘んじて受け止めますが、今の店頭価格に比べれば、安いものでは1,000円近く安いものが出ていますので、これがもっと行き渡るように努力をしたいと思っています。3回目をやりますが、その先もやります。継続的に行えば、今まで備蓄米を流すということに慣れていなかった方々も、1回目、2回目より3回目、4回目よりも4回目はスムーズに、スピーディーに流通もしていただけると思います。経験を積むにつれて、消費者の方々のご期待にも応えられるような状況になるのではないかと期待しています。
記者 アメリカの関税措置について、今後の対応の向き合い方として、関税の引き下げや、農産品の量を受け入れるなど、国内で米に関して言えば、高くなって、もしかしたら量も足りないのではないかという指摘の声もある中、今後どのように対応していくのかお聞かせください。
大臣 どのように対応するのかについては、今日の時点では申し上げません。基本的にあるのは日米貿易協定があるということです。関税ということになれば、当然そこに踏み込む話になって、話が大ごとになりますので、それを政府全体としてこれからどう判断するのか、私自身としては、極めて厳しい話になると思っております。
米の輸入につきましては、国民の皆様方の中には、カリフォルニアの米は美味しいらしい、安いのだったらぜひ日本に輸入して店頭に並べて欲しいという声があることは、その気持ちはよく分かります。しかし、あえて大臣として申し上げますが、今回、食料・農業・農村基本計画を、基本法のもとに、かなり時間をかけて国会で議論して、3月中にまとめるものが4月11日までずれ込んで、ようやくできました。この主な目標は、食料安全保障の確保です。国民の皆様方の生命、財産が、食というものによって脅かされることがないようにすると。これがこの基本計画、基本法の一番の柱です。そして、日本で作れるものはできるだけ国内で作ることによって、食料自給率を上げていこうということが大きな柱です。そして、輸出をして、稼いで、農家の所得も手取りも上げていこうということもありますから、これを実現する上で、必要なことをやるのが私の仕事です。お気持ちは分かります。最初に申し上げましたように、安いお米があるならば、それを入れることは合理的ではないかと。しかし、お金を出しさえすれば手に入るということを、日本人が信じすぎたゆえに、食料自給率が低過ぎたという側面があると思っています。今年、なかなか国民のご期待に応えられない、備蓄米を出しても店頭価格が下がらないということについては、責任を重く感じておりますし、申し訳ないと思っております。価格にはコミットしないと言いながらも、あくまでも量でありますが、そのご苦労を受け止めるのは、政治家としての仕事です。しかし、もし大量に、主食であり、自給可能な米を、米国に限らず海外に頼る体制を築いてしまって、日本の米の国内生産が大幅に減少してしまうということが国益なのかということは、国民全体として考えていただきたい。111万人の基幹的農業従事者が30万人にまで減ってしまうかもしれないこの時代にあって、農業者の方々が、意欲を失ってしまう。結局、安いものがあるのなら海外から買ってくるのか、米までそうなのかと言われることは、果たして食料安全保障の確保、国民の将来にわたるご不安に寄り添うことになれるのかということについては、私は大いに疑問を持っています。交渉ごとですから、これからの交渉に関して、交渉担当官でもない私が予断を持って申し上げることはありませんが、とにかく国益を最大にする努力を、これから粘り強くやっていくことが大事なのではないかと思っております。
記者 石破総理大臣が「食の安全は譲らない」という趣旨の発言を、これまでの関税交渉の念頭に発言されていましたが、この点に関してはどうお考えでしょうか。
大臣 それは当然だと思います。動植物検疫も含めてです。私の(地元の)宮崎は、例えば口蹄疫とか、今は、豚熱が都城でイノシシに入った。そして、鳥インフルエンザが今年も猛威を振るいました。今年は特に、虫の害、カメムシや松くい虫、様々な病害虫の被害も報告されています。まさに、食の安全、国民の生命、財産を守ることに関わってきますから、アメリカが求めてきても、アメリカだけ動植物検疫を緩めるということは考えようがないです。最初の頃に、(アメリカの主張する米の関税)700%に対して理解不能と申し上げましたが、アメリカは本気で求めてくるのかどうか、私はそのこと自体を疑問に思います。アメリカにもそういった制度は当然あります。アメリカにはこういったものを持ち込んではいけない、こういったものはアメリカの基準に合ってないから輸入禁止ですというものは当然あるわけです。日本の食の安全、国民の生命を脅かすようなことに踏み込むということは、あり得ない。総理のおっしゃっていることは極めて正しいと思います。
記者 米について、日本で作れるものは日本で作るというご意思だと受け止めたのですが、先日、韓国の米が統計以来、初めて輸入されたということで、大臣の所感をよろしくお願いします。
大臣 商売ですから、よく分かりませんが、在日(韓国人)の方々が好んで召し上がっているというのは、報道でも触れました。本当かどうか知らないですが。価格的にも、そんなに競争力のあるものでは、あまりないかなという感じがします。一定数量が入ってくるということは、それなりに市場にインパクトがあるでしょうが、それを選択するのは消費者の方々ですから、農林水産省として、けしからん、大変だとか申し上げるつもりはありません。アメリカの米であれ、タイの米であれ、韓国の米であれ、それは輸入米であるという一つの括りの中に入るものであって、特別視するつもりはないです。
(以下略)