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施策・政策

もてあます入札の備蓄米、小泉農相「希望すれば返還に応じる」

 小泉進次郎農相は6月3日の閣議後定例会見で、3回の入札で放出した政府備蓄米およそ30万tをめぐって、希望すれば「返還」(早期買い戻し)に応じる意向を示した。返還玉は随意契約分に上乗せすることも「選択肢の一つ」としている。
 このなかで、自ら「卸業界に伝えたいことがある」と附言し、「卸の中にはこれ(入札で放出した備蓄米)を中食・外食に仕向けるという声もあるが、今回『まずは小売店頭に』としたのは、そこの不足感解消が大事だからだ。備蓄米をどこでも使えるから中食・外食に、というのは本来の狙いではないので、それは言っておきたい。それに卸の業績はすこぶる良いのだから、よくご対応いただきたい」と述べた。
 また石破茂首相が6月5日にも初会合を開く運びと表明した「米の安定供給に向けた関係閣僚会議」をめぐっては、以下の通り見通しを明らかにした。
 ○ 私もメンバーの一人だが、消費者に持続的に安心してもらえる価格で米を提供するとともに、生産性向上を通じた持続的な農業生産で米の安定的な供給を実現するために、まずは米価高騰の要因と今般の対応の検証を行う。
 ○ 既に中長期的に増産する方向で今の農政は動いていて(食料・農業・農村基本計画)、あとは具体的にどう農家のセーフティネットを作っていくか。与野党の垣根を越えて、あらゆる提案をテーブルに乗せていく」
 ○ 以前から表明している通り、令和9年度(2027)までに水田政策のあり方を見直していくわけだが、まず今年度中に基本方針を作り、来年度の概算要求で翌年度すぐ動けるような予算を要求していく。基本的には増産していくというKPIを立てていくことになる。

一問一答(6月3日、閣議後定例会見から抜粋)

(略)

 記者 随意契約による備蓄米の売渡しについてお伺いします。現時点での中小事業者の申し込みや、その受付状況をお聞かせいただきたいのと、米の販売店向けの枠は、すでに受付は休止されていますが、残る中小のスーパーなどの小売店枠では、その販売予定量に達する見通しをどのように捉えられているか。そして、金曜日から始まった中小事業者向けの備蓄米の引き渡しのスケジュールは、どのように考えられているのか、お聞かせいただきたいと思います。

 大臣 1点目の現在の申込みの状況ですが、町のお米屋さん、中小のスーパーさんは、計2日間で1,500件まできたということです。2点目のご指摘ですが、引き渡しがいつ頃の見通しかということと、中小のスーパーの今の状況ということですけど、これはまだ上限にヒットしていない状況だと聞いていますので、受付は継続ということになっております。そして引き渡しですけども、これは順次、契約、この文書、資料含めて、手続きが完了したところからやっていくということですけども、今、提出された書類に不備が多くあるということで、正確な申請件数や数量というのを精査しながら進めていると。体制も強化しながら、やっていますので、全部待ってということではなくて、できたところからどんどん出ていくように、そういうふうにしたいと思っています。

 記者 すでに売り渡しをしたところというのは、もう出てきているんでしょうか。

 大臣 まだそう聞いていません。まだです。

 記者 入札で放出された備蓄米について2点お伺いします。随意契約の備蓄米よりも店頭価格が高値になるため、集荷や卸に対して小売業者から注文がキャンセルされる事態があると聞きます。農水省としてどのように現状の実態を把握されているかご見解を教えてください。また、大臣は昨日の(参議院)予算委で備蓄米を返還したいという意向があれば適切に対応して有効に活用したいとお話しされていましたが、随意契約での追加放出分に回すお考えがあるか教えてください。

 大臣 もしも申し出があれば、そのようなことも含めて、適切に対応して活用したいというふうに考えています。昨日も答弁で申し上げましたけども、安い備蓄米、随意契約による備蓄米が出てくことによって、今までの1回目から3回目の入札米、これが少し高めの水準になるので、どうしようかと。こういった声があることは承知しています。卸の中には、これを中食、外食に含めて、いろんな形で使えるから大丈夫だという声も一部聞くんですけども、そこは、卸の業界の皆さんにお伝えしたいことは、今回我々、まずは小売の店頭にと。ここの不足感を解消する、そういったことが大事だと思っていますので、備蓄米をそういった形で、どこでも使えるから中食、外食だと。そういったことは我々としての本来のねらいではないと、そういったことはお考えいただきたいと思いますし、大分この価格差っていうことも含めて、今卸の皆さんも業績すこぶるいいですから、よく対応いただきたいなというふうに思います。そして集荷のところについても、今95%入札米を抱えているのが全農さんですから、こういったところがどのように配分をされているのか、その中でまだ、実際に実需者の方と契約をしていない、そういったものがあれば、この扱いをどうしようかと悩まれているとしたら、ご相談いただきたいというふうにも思います。いずれにしても、これから、まだまだ随意契約の備蓄米も含めて、需要があれば全部出すと、こういった思いは全く変わりません。ですので、この扱いに困っているところがありましたら、遠慮なくお申し出をいただいて、次なる展開へと使っていきたいと思いますので、そういったご理解をしていただければと思います。

 記者 政府が委託する備蓄米倉庫の運営体制についてのお伺いです。倉庫会社から、大量放出によって保管手数料が減って補償を求める声が上がっています。空の倉庫には手数料が払えないという原則だと聞いておりますが、食料安全保障の観点から、いつでも保管できる場所の確保が重要との声も上がっています。一方で、そもそも備蓄米は非常時には放出する決まりとなっており、そもそも会社には自分自身で備えておくという重要性もあるかと思います。先日横浜で倉庫を視察されておりますけれども、保管体制の考え方、今後の対応についてお尋ねします。

 大臣 今、ご質問いただいた内容が、非常にバランスが取れていることだなと、同じようなスタンスは持っています。ただ、最初に申し上げておくと、この前、横浜で備蓄倉庫を拝見させていただいて、あれだけ綺麗に、そして衛生管理状況もよくて、目視で毎日確認をしているような、こういったことを徹底していただいている倉庫業界の皆さんには、心から敬意と感謝の気持ちがあります。そういった上で、今のご質問の中身と同じなんですけども、保管期間があらかじめ定まっているものではないということがあった上で、政府備蓄米の保管に係る受託事業体と倉庫業者との間の契約においては、保管期間や保管数量を約定するのではなくて、保管料単価のみを定めて、実際に保管した期間に応じた保管料を支払うこととしています。政府備蓄米が保管されていない状態で、今後、どのような対応が可能かというのは、よく省内でも検討していきたいと思います。国会からもいろんなご質問もありますが、省内でよく検討したいと思います。

 記者 入札備蓄米について伺います。昨日の夜、入札備蓄米の都道府県別の店頭価格が発表されておりまして、高いところだと4,000円を超えていて、低いところだと2,000円台というところがありますが、なぜこういう差が生じているのかという見解と、これに対して何らかの対応を考えているのかというのも教えてください。

 大臣 ご指摘のとおり全国の店舗数334店舗、これは全国の農政局の職員、本当に頑張って店頭にチェックをしてくれました。まず、全国の500人という、こういった体制の中で頑張ってくれている皆に感謝したいと思います。その上で最低価格が全国で2,980、全国最高価格4,480円と、こういった形で約1,500円の開きがあるという状況はよく分析が必要ですけども、まず、このような情報をしっかりと提供して、今POSデータの方も出ていますし、こういった地域別の店頭の価格というのを、できる限りリアルタイムで提供するということで、今のマーケット全体がどういう状況になっているのかを正確に把握する一助になればというふうに思います。POSデータは2週間前です。だけども、店頭での販売実態の把握、これは全国の職員が頑張ってくれて、1週間のうちに対応できていますので、こういった様々なデータがより正確な世の中の動きを反映する、そしてそれが、我々が実際に執行していく政策にとっても、効果的な政策を打ち込むような、一つのバックデータとして活用したいというふうに思っています。なお、朝日新聞さんということで、今日の一面を、私も拝見をさせていただきましたが、備蓄米をなぜ放出しているのかというところは、まさに今日の朝日さんの一面で、民間の外国産米の輸入が、このコメの高止まりを放置すればどんどん入ってくると。80倍ですよね、朝日さんが出しているのは。なので、高止まりを放置すれば、おのずと棚は外国産米に埋められていく。こういったことを食い止めるために、備蓄米の放出もやっているのだということを改めてお伝えをさせていただければと思います。

 記者 入札備蓄米の都道府県別の価格は、今後もこのように定期的に発表していくということでしょうか。

 大臣 そのつもりです。なので、今、全国の職員頑張ってくれていますが、しっかりとそういったことは世の中にも公表させていただくと。そして、何でこれだけ離れているのかということも含めて、様々な議論の一つの材料となればと思います。

 記者 昨日総理が発表された関係閣僚会議の関係についてお伺いします。まず1点は、改めて関係閣僚会議の議題というか、これから議論していく点で、コメの安定供給ということはありましたけども、それ以外にもいろんな点があると思いますが、まず大臣のお考えを答えていただきたいと思います。

 大臣 私も参加をするメンバーの一人でありますが、官房長官が会見で発表したとおり、消費者の皆様に持続的に安心いただける価格で米を提供するとともに、生産性向上を通じた持続的な農業生産により米の安定的な供給を実現するために、まずは米価高騰の要因と今般の対応の検証を行うと。こういったことで開催をされるというふうに承知をしています。農水省としては、この関係閣僚会議を通じて、主食である米が生産者、消費者ともに、納得できる価格で安定的に供給されるような米政策の実現を目指して検討を行うということが重要だと考えています。なお、総理がもちろん出席をされますので、総理が議長ということですから、最初1回目は、もちろんプレスの皆さんの前でのご発言があると思います。そこで最初、初回の総理としての思いを述べていただくことが一つのトーンセッティングになる、そういったことだと思います。

 記者 その関係で、総理はかねてから米の増産をしていく方針を示していますけども、大臣としてもそういった方向でいくのかということと、あと増産に伴って、いろんな経営安定の対策も必要だと思いますが、総理は所得を補償する方向性も示していますけれども、大臣としても、いろんな選択肢があると思いますが、その点はどういったお考えでしょうか。

 大臣 これは与野党の垣根を越えて、あらゆる提案をテーブルに乗せて議論をするということだと思っています。今回、米については、増産するか、しないかということが、だいぶ議論になっていますけども、冷静に見たときに、もうすでに目標は増産する方向の目標を立てているんです。2030年には、KPIとしては800万tを超える米全体の生産量を出していくと。なので、昨日の森山幹事長など、自民党からいただいている決議も、大区画化・集約化、スマート農業、こういったことに対しても、よく予算を、しっかりと2.5兆円を取ってやるべきだと、私はすでにもう増産をしていくという方向で今の農政は動いていて、あとは具体的にどのように農家の皆さんの経営安定に繋がるセーフティーネットを構築できるか、そういった方向性も非常にこれからは重要で、そこは与野党の垣根を越えて、議論をするということなのだと思います。マーケットを関係者の皆さんにも、今備蓄米のことを目の前でやっていますけども、中長期を見据えても、これから政府の動きというのは、増やしていくんだなと。こういった長期的な見通しが世の中や関係者の皆さんに伝わることによって、結果、不足感が払拭されて、お米は出てくると、こういったことを思っていただくのが非常に重要なことだと思います。なので、短期の備蓄米、そして8月以降のお米が今の農水省の見立てだと40万t増えて、この5年間で最大出てくる。そして、今年度中に基本方針を打ち立てていく。これからの水田政策の大きな転換に向けた議論、これは基本的には、増産をしていくというKPIを立てるわけですから、この短期、中期、長期ということの明確な方向性をしっかりと伝えていくことが、今の高騰している状況に対しても、私は効果があることなのかなと捉えています。

 記者 備蓄米の大手小売への随意契約について、すでに店頭に並べられた業者がある一方で、同じ枠で契約したものの、昨日時点でもいつ届くか目途が立っていないという業者もあり、不満の声も聞かれております。この点についてどのように備蓄米を流す順番を決められているのかと、そういった訴えに対してどのように対応するかお答えください。

 大臣 これはもうできる限りスピードを重視して取り組ませていただいているというのは、申し上げている通りです。なので、北海道から沖縄まで、ぴったりと同時・同量を店頭に並べることができなければ出せないという形をとっていたら、5月31日に備蓄米の店頭への販売は実現しなかったと思いますので、そこは今回随意契約という、政治判断でやらせていただいたことの思いを、丁寧にお伝えする必要があるだろうと思います。ただ一方で、後は出庫の状況ですとか、物流の状況ですとかが、これはおのずと、精米工場がどこにあるか、そして実際に販売をされている店頭がどこにあるか。こういったことによって、一定の時間差があることは、それはある意味自然なことだと思いますが、我々今、農水省としては、出庫と物流と販売が遅滞なく、切れ目なくスムーズに動いていくように、契約作業の完了を少しでも早く、そしてまた不備が書類にあった場合は丁寧に対応する。こういったことでスピード感を早めていきたいというふうに思っていますので、うちはまだかなと思っている地域、スーパーさん、お米屋さん、あると思いますが、毎日の報道を見ていると、今日はどこどこです、今日はどこどこですと。そして日農さんの今日の一面を見ても、このエリアにこれぐらいの企業がありますよということも出していただいているので、結果、随意契約で契約をした企業の所在している地域には、一定の時間差はあると思いますが、お届けできる環境になってくると思いますので、そういった状況を見て、課題があれば的確に、国交省との連携も含めて対応したいと思います。

(略)

 記者 先ほど、入札で放出した政府備蓄米なんですけど、意向があれば、返還の申し出があれば買い戻すということで、買い戻した場合、先ほど質問があったかもしれませんけど、その随意契約で安くしてまた市場に出すことを考えてらっしゃるのか、そのあたり基本的な考え方を教えてください。

 大臣 基本的な方向性としては、その活用が一つは選択肢ですね。

 記者 それと先ほど、基本方針を今年度中に(水田政策のあり方について)策定するというお話で、これは短期、中期、長期の考え方を基本方針の中に示されると。

 大臣 令和9年度以降の水田政策のあり方について、順番からいうと、令和7年度中、今年度中に基本方針を作ります。そして令和8年度に概算要求にしっかり、令和9年度から動いていく水田政策のあり方をしっかりと後押しをするだけの予算を要求していきますという、こういった順番の(令和)7年、8年、9年です。

 記者 米の関係閣僚会議で、この米の流通の複雑さというのが議論にあると思うんですけども、一部では「5次問屋」というような指摘もあるということで、大臣として、流通の見える化ということについて、どういう対応をされていくのか、お考えをお聞かせください。

 大臣 これは、まさに関係閣僚会議でも一つのテーマになりうると思っています。現実、今すでに流通の関係者から、さまざまな流通の課題に対するご意見はいただいています。なので、こういった方々からも、何が起きているのかということを、実態把握をよくすること。それとともに今回の入札の備蓄米の流し方と、随意契約の流し方が全く違うので、この違いの中で浮き彫りになってきていることも一つの材料として、何が米の流通の適正化に向けて、我々政治として動くべきところなのか、そういったところをよく探っていきたいと思います。

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