米穀販売業者大手の木徳神糧㈱(東京都千代田区)は6月11日、「米穀卸が儲けている」論に真っ向から反論する声明文を発表した。「ステークホルダーの皆さまへ」と題し、鎌田慶彦社長名で示したもので、「弊社が市場価格を釣り上げたり、買い占めや出し惜しみによって流通を阻害したりといった事実は一切ない」と全面否定。また「長年にわたる『米余り』環境下での薄利多売という米穀卸売事業の構造的な低収益体質において、供給不足という市況の急変が勃発した結果の反動であり、(大幅増益は)限定的な事象」との認識を示した。
小泉進次郎農相が国会などの場で、「社名は言わないが、大手卸の売上高と営業利益を見ると、ある会社の売上高は前年比120%を超え、営業利益は500%くらいだ。他の大手卸も営業利益は250%を超えている」などと発言したことに〝冷静な対応〟をしたものとみられる。
そもそも米穀販売業界のなかで決算を公表している、つまり上場企業は4社しかない(うち1社は非上場だが子会社が上場企業なので公表義務がある)。このうちの一つが木徳神糧で、最新である令和7年(2025)12月期第1四半期決算は、売上高+23.1%、営業利益+347.7%。だが、その1四半期前にあたる令和6年(2024)12月期通期決算では、売上高+3.6%、営業利益+15.3%。もともと営業利益率が1%を超えることは稀な業界のため、鎌田社長が「限定的な事象」とするには立派な根拠がある。
ただ名指ししなかった以上、小泉農相も個別攻撃をする意図ではなく、米穀卸業界総体に対して「協力を要請」したに過ぎない。その意味では、こうした反論は個社が対応するのではなく、全国団体である全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)が迅速に対応するのが筋。米穀販売業界の〝体質〟には、こうしたところにこそ問題があるのかもしれない。
米穀卸大手、「出し惜しみしてない」「増益は限定的」
