政府備蓄米を含む安価玉の高額転売禁止、主食用外国産米輸入時期の前倒し……小泉進次郎農相は6月13日の閣議後定例会見で、改めて「手を緩めることなく、あらゆる策を講じていく思いに変わりはない」姿勢を強調した。
転売禁止措置は、この日に「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」を閣議決定したもの。6月23日から転売規制が始まる。江藤拓前農相が入札による備蓄米放出による「目詰まり解消」によって結果的に価格を冷やす効果を狙っていたのに対し、小泉農相は随意契約によって「値下げ」を一義的な政策目的に掲げた。したがって高値転売は、この政策目的に反する行為のため、「行政としては必要な判断だと思っている」と発言している。特に「備蓄米は安価で販売されるため、転売のリスクが高い」との指摘も。
外国産米の義務的な無関税輸入枠であるMA(ミニマム・アクセス=年76万7千t)のうち、主食用に仕向ける年10万t枠は、SBS(売買同時入札方式)で輸入する。例年これは、9月から数回ほどに分けたSBS入札によって契約するのだが、今回はこの令和7年度(2025)第1回入札を6月に前倒して実施することとした。小泉農相はこの意図を「国内の米価高騰を抑えるために必要な措置の一環」と説明している。実際にSBS輸入枠だと、最大で㎏292円の関税相当額(マークアップ=売買差益)がかかるのだが、今回の決定を受けて㎏341円の関税がかかる枠外輸入の外国産米が港に放置されている事例が散見できるようになっている。
これら矢継ぎ早に打ち出される「令和の小泉劇場」によって、スポット価格が急落している(既報)。これに対し小泉農相は、「マーケットの動きに変化が見えてきたことは、私としては政策効果が一定程度あらわれてきたと評価している」としながらも、「この下げ方は、国民の、消費者の皆さんの目線からすれば、まだまだ『下がった』実感には達していないと思う」とした上で、改めて「手を緩めることなく、あらゆる策を講じていく思いに変わりはない」との姿勢を強調している。
一問一答(6月13日、閣議後定例会見から抜粋)
大臣 本日、私からは3点、ご報告がございます。本日の閣議におきまして、「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。この改正により、交付から10日後以降、備蓄米に限らない精米、玄米などの米穀を、小売店から購入したものが、購入価格よりも高い値段で転売することは法律違反となります。転売の規制により安価なお米が安定的に消費者に届く状況を担保することができると考えております。詳細につきましては、この後、Q&Aとともに、農林水産省ホームページに掲載しますので、そちらをご覧ください。2点目は、福島県への出張についてであります。明後日(6月)15日に東日本大震災の被災地における、農林水産業の復興状況について視察し、地元の関係者と意見交換をするため、福島県に出張します。現場の生の声をお聞きして、一日も早い農林水産業の再生に向けて、今後の取組に活かしてまいります。詳細は後ほど、プレスリリースをいたします。最後3点目は、経団連との懇談会についてであります。農業の構造転換や成長産業化の実現のためには、様々な技術・サービス・知見を有する経済界と連携し、輸出等の各種の施策を進めることで、より高い政策効果が期待できます。このため、来週(6月)17日に筒井会長をはじめとした経団連の方々と、私以下、農林水産省幹部職員の間で、農業政策について率直な意見交換を行う懇談会を開催いたします。懇談会のテーマは現在相談中でありますが、私としては、もちろん今、大変喫緊の課題になっている米価高騰、こういったことの中でも、特に流通面の課題、こういったことについても、経済界の皆さんのご意見、アドバイスなども率直にいただきたいと考えておりますし、今後、構造転換を5年間で進めていくという自民党の決議もありますが、こういった中でも位置づけられている輸出、そしてまた、企業の農業参入の加速化、こういったことについても、企業の目線で具体的なアドバイスをいただきたいというふうに思っております。スマート農業の進展の普及や、そして委員会などでも与野党からたびたび指摘をされている農業機械の高さ、安価な農業機械の開発や普及、そして農村における通信環境の整備、これは農地における5Gとか、こういったことも含めて、そんな通信環境の整備の加速化についてもお話を伺いたいと思いますし、デジタルデータの農業への活用を進めるための安価で容易にできるデータ収集の手法、装置の開発普及、こういったことについても、具体的な協力のお願いもしたいと思っております。このように、経団連の方々と農林水産大臣が懇談を行うのは、約10年ぶりと聞いております。基本計画に沿った新しい農政を展開していく、大きなきっかけの一つとしたいと考えております。本日は、私からは以上です。
記者 米の価格ですけども、スポット価格を中心にかなり下げ基調も見えてきていると思いますけれども、様々な数値の部分の、大臣の受け止めと、それを今後の備蓄米の放出などの政策にどう活かしていくのか、反映させていくのか、その点をお願いします。
大臣 備蓄米の政策全般については、これはもう与野党、委員会の決議も含めて、政策全般をしっかりと(令和)9年度の水田政策の転換に向けて議論すべきだとご指摘もいただいておりますので、そこは今後の一つのテーマだと思っております。そしてスポットの、今価格が下落をしている。こういったマーケットの動きに変化が見られてきたことは、私としては、政策効果が一定現れてきたというふうに評価をしていますが、昨日も申し上げたとおり、まだこの下げ方というのは、国民の消費者の皆さんの目線からすれば、まだまだ下がった実感には届いていない。こういったところだろうと思います。ですので、手を緩めることなく、あらゆる策を講じていく、その思いに全く変わりはありません。
記者 随契の備蓄米についてですが、全国では現在どれくらいの量が引き渡され、販売されており、また現在のペースで8月20日までの引き渡しは完了しますでしょうか。
大臣 今、6月12日現在、46都道府県の3,731店舗、ここまで広がりを見せているということでありますが、販売された数量、こちらについては今報告を求めているところでありますので、報告上がってきたら、そういったこともあわせて発表できればと思います。そして現在、大手小売業者への売渡しについては、指定された精米工場等への運送・引渡しを進めており、米穀店及び中小小売事業者については、契約締結を進めつつ、希望する引渡場所や時期等の調整を進めているということであります。8月20日までの期限までに引き渡しができるように、取組を加速していきたいと思っています。
記者 MA米の主食用枠(SBS)について伺います。現在77万tのうち、主食用は最大10万tになっているかと思いますが、4月の財政審では、この主食用10万t上限を引き上げる案が提示されました。SBS入札が前倒しされることになりましたが、10万t見直しに対する大臣のお考えを教えてください。
大臣 財政審の指摘は関係なく、必要なことはあらゆる選択肢を持ちながらやりたいと思います。
記者 今後この上限を見直す可能性もあるという認識でよろしいですか。
大臣 今のご質問の前提が、財政審が言っているからということであれば、そこについて、財政審が言っているからということで政策判断することはありません。
記者 財政審が言っているのは抜きにして、10万tの見直しはありますでしょうか。
大臣 あらゆる選択肢は考えます。
(略)
記者 加工用米についてお伺いします。昨日、SBS(米)の前倒しも公表されましたが、味噌の組合等から、やはり国産米を加工用にもまわして欲しいと、そういった支援をお願いしたいというお話が面談でもあったと思います。昨日も検討中ということではありましたが、改めてで恐縮なんですが、そういった主食用米以外の部分への対応について、今のお考えをお聞かせください。
大臣 昨日は意見交換させていただきました。7年産の加工用米等については、現在も生産者と実需者の間で契約に向けた調整が進められていると承知をしていますが、国産にこだわりのある加工原材料用のニーズに対する備蓄米の供給やミニマムアクセス米の供給について、我々としてどのような対応ができるかを考えていきたいと思います。数字を見れば、味噌業界、相当MA米も過去に使っておりますし、商品の中にはMA米、こういったことの対応を今までもされてきた、そういったこともあることも承知をしていますので、その具体的なニーズを踏まえて、我々何ができるかは考えていきたいと思います。
記者 SBS(米)の入札が前倒しになりますが、この前倒しによって、米市場全体にどういった影響を想定されているのかということと、どのくらいまでにどのくらいの効果がされたいのかということをお伺いしたいです。
大臣 今回の措置というのは、本来であれば9月の入札を、3か月前倒しをして、今月、そして今日から公告を行うというもので、今後9月になれば、今までの、毎年やっていることですが、MA米が入ってくる。これは主食用米に活用されていた方にとっては、より前倒しで入ってくることになりますから、9月以降の見通しが立ちやすいと。そしてまたマーケット全体にとっても、できる限り早く、米価の高騰を抑えて、そしてまた必要なお米は届けていく。そういったことを考えながら取り組んでいることなので、今回のことも含めて、前例にとらわれない措置を我々としては考えて実行していく、そういった意思として受け取っていただければと思います。
記者 冒頭に発表のあった転売規制の関係で質問します。そもそも今回の法律に基づく転売の規制というのは、物資が供給不足になるとか、そういった状況にあるということが背景にあって行われているものだと認識しています。今回米がないという認識で、今回のような転売規制に踏み切ったのかどうかというその理由を1点伺いたいのと、もう1点、消毒用のアルコールや、マスクのときには実際に転売が行われて、それによる価格の高騰背景に行われたと思うんですが、なぜ今回、こうした転売対策に踏み切ったのかという理由についてお伺いできればと思います。
大臣 米の価格については1年間で昨年の約2倍まで上昇しています。これを受けて、消費者に対して安価で安定的な米の供給を図ることを目的に、随意契約でまずは売渡しをしています。米の高値での転売は、さらなる米価の上昇に繋がるため望ましいことではありません。特に随意契約により売り渡された備蓄米は安価で販売されるため、転売のリスクが高くなっていると。このため、米穀の高値での転売について規制する必要があるため、緊急措置として、こうした転売行為を禁止することといたしました。なお、今、転売はどうなっているのかということでありますけども、これは転売のリスクがあることに対して、最大限の措置を講じて、そういったことが行われないようにする。そのことをもって1人でも多くの方に備蓄米が届けられるような環境整備をすることは、私は行政としては、必要な判断だと思っております。
記者 冒頭で私の聞き取れなかった部分があると思うんですけども、対象になる米は、すべてのお米なのでしょうか。
大臣 これは、備蓄米に限らない精米、玄米などの米穀を小売店から購入したものが購入価格よりも高い値段で転売することは法律違反になります。
記者 備蓄米を対象にするものであるのに、備蓄米の転売を禁止するためのものだと思っていたんですけども、かなり広いんじゃないかという印象を受けたのですが、そこはどうでしょうか。
大臣 さまざまご指摘もあると思いますので、この後、Q&Aとともに農水省ホームページに掲載をします。必要があれば担当に詳細の方は尋ねていただければと思います。いずれにしても、今回の措置の目的というのは、これだけ、今お米に対して、一人でも多くの方にしっかりとお届けをしたいと。そのために転売は規制をするという措置は、強いものを措置しておく必要があるだろうと、そういった考え方です。