鈴木憲和農相は11月14日の閣議後定例会見で、経済対策に盛り込まれる予定の「重点支援地方交付金」を通じたお米券の配布をめぐって、改めて意欲を示した。ただ実施主体が地方自治体になる点に批判的な声もあって、「重点支援地方交付金のなかでやるということなので、自治体任せと言われればその通りだが、負担感の問題も含めて、様々な相談にも我々として乗っていきたい」と苦しい対応に終始している。
ここで、世間的に誤解がある「おこめ券」を解説しておく。既存の「おこめ券」には、全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)が発行する「全国共通おこめ券」と、全農(全国農業協同組合連合会)が発行する「おこめギフト券」の2種類がある。ともに販売単価は1枚500円で、440円分の商品と引き換えることが出来る。したがって現在は、1枚もらっただけでは米1㎏すら購入できない。つまり一口に「配布」と言っても、量が必要になる。
だが〝金券〟である以上、偽造防止策などが施されており、発行には時間がかかる。過去の例からすると、全米販・全農あわせて年1,000万枚が最大ペースだ。仮に全国民に大量に配布となった場合、即時対応できるものではない。事実、「おこめ券」を配布した地方自治体は相当数あるのだが、量が多すぎて全米販・全農から断られ、オリジナルの「お米クーポン」配布に切り替えた例も複数ある。
こうした細かな点にもあらかじめ配慮しておかないと、政府はまたぞろ「遅い経済対策」と批判されかねない。
一問一答(11月14日、閣議後定例会見から抜粋)
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記者 昨日、政府が(自民)党の会合で経済対策の案を示したと思いますが、お米券について、改めて農水省の対応をお聞かせください。
大臣 昨日開催された自民党の政調全体会議では、経済対策の政府案について議論されたというふうに承知をしています。政府案には農林水産分野に関して、物価高対応として「重点支援地方交付金」を通じたお米券を始めとする食料品の物価高騰に対する支援、そして食料安全保障の確立に向けて、農業構造転換の推進、(農林水産物・食品の)輸出などに関する施策が盛り込まれております。今お尋ねのあったお米券も含めて、今まさに食料品の値上がりについて、負担感を感じている皆さんの負担を軽減するという観点で、我々としてもしっかり実施していただける地方自治体と連携をとりまして、取組をさせていただきたいと思っております。
記者 地方からは自治体任せで事務負担感も多く、国がやるべきと批判的な意見も一部出ているみたいなのですけれども、その点について大臣どう思いますか。
大臣 これは重点支援(地方)交付金の中でやるものですから、自治体任せと言われたらそのとおりなのですけれども、大変負担感も含めて、様々なご相談にも我々として乗ってまいりたいというふうに思っています。
記者 お米券について伺います。高市首相の方が、お米券、地方交付金の拡充をした上でというお話されていますが、その際に大臣としても、現状お米が高くて買いたくても買えない人がいるというところで、お米券を配布した場合、そういった世帯が買えるようになると思うのですが、そのあたりの需要はどれくらいを見込んでいらっしゃるのかという試算がありましたら教えてください。
大臣 お米券で全てやってくださいという話では全くありませんで、それぞれ自治体が今まで取り組んでこられたやり方というのがあると思いますから、その中で最も負担感が少なくやりやすいやり方で、そしてできる限り消費者の皆様に早く支援が届くようなやり方でやっていただければありがたいなというふうに思っています。その上で、この対策を講じた場合、需要がどのぐらいになるかという話でありますが、もちろん今の価格では、なかなか買う量を減らさざるを得ないとかいう皆さんに対して、少なからずいい影響があって、しっかりと買っていただけるという状況を作り出せるというふうに思います。ただ、それが全体量どのぐらいかということについては、今の段階で私から何か予想するということは正直難しいかなと思っています。
記者 どこかのタイミングで、交付金を拡充する上で試算みたいなものは出される形になるのですか。結果論になる形ですか。
大臣 その予定はないですし、おそらくこれ多分、どういう形でやるかというのは、自治体それぞれで考えていただくことになると思いますので。昨日も市長会の役員の皆さん、いらっしゃったときにも、そうしたお願いもさせていただいたところでありまして、そのやり方次第で、結果としてどのくらいお米が買えるようになるのかというのが変わってくるのかなと思います。
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