鈴木憲和農相は12月2日の閣議後定例会見で、重点支援地方交付金を活用した「おこめ券」の配布をめぐり、改めて各「自治体の判断により、的確な支援が行われるように措置されるもの」との見解を示した。「経費率が高い」「配布する自治体としない自治体とで不公平感が生じる」といった声に応えたもの。鈴木農相は、米をはじめとした食料品の支援にあたって、「お米券」の配布だけでなく、電子クーポン、プレミアム商品券、地域ポイント、現物配布など複数の選択肢がある点を指摘した上で、「できる限り負担感が少なく、速やかな実施が図られる方法を選択して進めていただくことを期待している」とした。
交野市(大阪)の山本景市長がSNSで「お米券を配布しない」と表明している点に対する直接的な返答にはなっていない。この件は、別稿で解説する。
一問一答(12月2日、閣議後定例会見から抜粋)
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記者 先週末発表された農林業センサスで、基幹的農業従事者の数が5年で25%減ると、これまでで過去最高の減少率になりました。大臣かねて、中山間地域とか条件不利地でも営農ができて、稼げて、暮らしていけるような農政をということをおっしゃっていますけれども、センサスをご覧になってですね、その受け止めと、どういった対応を取られるかということについて教えてください。
大臣 令和7年(2025)の農林業センサスでは、基幹的農業従事者は102万1千人で、5年前に比べて25.1%、34万2千人の減少となり、比較可能な昭和60年(1985)以降のデータということになると、過去最大の減少率というふうになっております。減少の約7割を65歳以上の方々が占めておりまして、これが減少の主な要因となっています。その背景といたしましては、データに基づくものということになりますけれども、まずはこの資材価格の高騰による厳しい経営環境が続いているということ、そして、令和5年(2023)、6年(2024)と連続をして、ここ最近は平均気温が過去最高を更新するなど、記録的な猛暑が続いていること、こういったことなどの影響もあったというふうに推察をしており、その意味で言えば、農業の構造転換を速やかに進める必要があるというふうに受け止めております。今後も高齢化の進行等によりまして、基幹的農業従事者の一層の減少が見込まれる中で、将来にわたって日本の食料を安定的に供給していけるように、まず営農して稼ぐことができ、そして暮らしていける農政というのを展開をすることで、地域農業の担い手の育成・確保を進めていくということが急務であるというふうに認識をしております。今現在、地域計画のブラッシュアップ等を通じて、新規就農支援や既存の担い手の規模拡大、そして地域外からの担い手の参入や食品企業をはじめとする法人の農業参入等の推進に、引き続き取り組んでまいりたいというふうに思っております。特に今ご指摘のあった、条件がなかなか不利な地域から、やはり離農が進んでいるという現実があるというふうに、私も地元を回っていてもそのことはよく感じるところでありますから、やはり我々としてどんな条件であったとしても、それなりの規模感で頑張っていただける限りは、そこで稼ぎ、暮らしていけるということを実現するというのが、まず第一かというふうに考えております。
(略)
記者 お米券の関連で3点ほどお願いいたします。「経費率が高い」などの理由で配布しないという自治体も一部で出ているようなのですけれども、大臣の受け止めを伺えますでしょうか。
大臣 この重点支援地方交付金、これは地域の実情に応じて、自治体の判断により、的確な支援が行われるように措置されるものというふうに承知をしております。したがって、前々から申し上げておりますけれども、食料品の支援に当たっても、いわゆるお米券の配布だけではなく、電子クーポンであったり、プレミアム商品券であったり、地域ポイント、そして食料品の現物給付など、各自治体において、できる限り負担感が少なく、速やかな実施が図られる方法を選択して進めていただくことを期待をしております。農林水産省といたしましては、迅速に支援が行き届く優良事例を紹介をし、相談等に真摯に応じていくために、(12月)3日水曜日から、優良事例等の説明会も行っていきたいと考えております。
記者 物価高対策として配布することになってはいるのですけれども、配布する自治体と配布しない自治体ということで対応は分かれていることで、不公平感が国民に出てしまうのではないかという可能性もあるのですが、大臣ここも受け止めをお願いいたします。
大臣 そうしたお声があることも重々承知をしておりますので、そうしたことも踏まえまして、今回の重点支援地方交付金において、今回は「食料品の物価高騰に対する特別加算」については、推奨事業メニューの中で、「市区町村に対応いただきたい必須項目」として基本的には位置付けをされております。ですので、ご指摘のようなやり方は様々、自治体によって工夫をいただけるというふうに考えておりますが、ご指摘のような不平等感を招かないよう、配慮されているというふうに考えております。
記者 お米券の配布スケジュールなのですけれども、大臣はかねがね、補正予算が通ったらすぐにでもとおっしゃっておりますけれども、農水省としてどんなスケジュールを想定して、いつごろまでに我々の手元に届くようにというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
大臣 重点支援地方交付金を含む補正予算案については、今後、国会で審議いただくことになるため、現時点で具体的なスケジュールに言及することは難しいわけでありますが、そのあとやはりなるべく速やかに地方議会の皆さんにもご協力をいただきたいということもありまして、そういったことも含めて、今週早目に、明日からですかね、説明会をさせていただくこととなっております。それも踏まえて、できる限り早く、今現状で困っている皆さん、たくさんいるというふうに思いますから、そういった皆さんにできる限り早く負担感の軽減に繋がるように、自治体の皆さんともしっかり協力をしていきたいと思います。
記者 米の価格について改めてお聞きしたいのですけれども、先週、POSデータで値上がりしました。大臣、価格に介入しないというふうにおっしゃっておりますが、改めて、最近横ばいが続いていることについての受け止め等をお聞かせください。
大臣 先週の11月28日金曜日に公表いたしました、11月17日から23日までのスーパー等での米の平均小売価格、これ、取っているデータによってちょっとばらつきがありまして、まず、中小スーパーを主に対象とするKSP-POSは52円上昇し、これ2週ぶりに上昇で4,312円、5㎏当たりです。大手量販店を含む日経POSデータは3円上昇し3,655円、これ4週ぶりに上昇です。ドラッグストア等を含む小売店パネル調査は134円低下をし4,223円、これは2週連続で低下ということになります。先週末の報道にもあるように、従来からのKSP-POSで見れば価格は上昇し、そして標本数の多い小売店パネル調査で見れば価格が低下しているということであります。いずれにしても、各データともに最近の動向は上がったり下がったり、まちまちであるというふうに考えておりますので、引き続き、私たちとしてはこの動向をしっかり注視をしてまいりたいと思います。
記者 一部で下げ基調という形で現象が起きているところもあるみたいなのですが、この点については、大臣どのようにお考えですか。
大臣 小売店の販売価格というのは、それぞれの小売店、それぞれの皆さんの様々な状況を勘案して、どのように売るかということについては決まっていくものだと思いますから、そういうことについて、まず、現状どうなっているかということについては、我々としてもしっかりウォッチをさせていただきたいと思っています。
