スーパーなど量販店頭精米価格は、最新・5月4~10日のKSP-POS(農林水産省公表)で5㎏3,742円。最高値だった4,416円(昨年12月28日~今年1月3日)に比べれば、ずいぶん安くなったように見えるが、これでも消費者はご不満らしい。売れないのだ。
いわゆる「令和の米騒動」以前は、5㎏2,000円を割る商品すらザラにあったのだから仕方ないが、では「不足している」と報じられると高くても買っていたのはどういうわけか。
売る側にしてみると、「安くしても売れない」と分かっていても、「安くしないと売れない」現実もあるので、やむを得ず安く納品せざるを得ない。5㎏3,000円を割る特売商品を見かける頻度が高くなったのは、そのためだ。しかし、そもそも原料が高いので、一口に「安く納品する」といってもテクニックが必要になる。その対応は、概ね2つに分かれる。
一つは、ごく単純だ。損切り、つまり仕入値を割る価格で納品する手法。単年度で考えれば赤字だが、2か年で捉え、「去年の黒字で相殺してトントン」に持っていくという、考えようによってはかなり乱暴なやり方だ。ただし、あまり頭を使って悩む必要はない。
もう一つは、高い原料に安い原料をブレンドすることで納品価格を薄める(値下げる)手法。物理的にブレンドするのではなく、仕入値が異なる同一の産地品種銘柄を、帳簿上ブレンドするやり方だ。これは口で言うほど簡単な手法ではない。
まず集荷業者から卸売業者が仕入れる相対価格は、3月末現在で60㎏税別30,875円。これでも出回り始期(昨年9月末)の34,162円に比べれば下がってきてはいるのだが、まだ5㎏3,000円を割る精米商品を作り出せる水準ではない。一方、概ね卸売業者同士で融通しあうスポット価格は、60㎏20,000円を割るか割らないかといった水準まで下がってきた。ブレンド材料としては、これを使うのだが、ことはそう簡単ではない。
例えば50tの在庫があったとする。全量が相対で仕入れた高値玉だ。そこへ、スポットで安値玉を50t仕入れる。帳簿上ブレンドして納品し、100t完売できればいいが、売れたのは50tだけで、またもや50tの在庫が残ってしまう。この恐怖があるので、また実際にどこの卸も経験済みなので、いくらスポット価格が安くなっても、怖くて仕入れられないのである。
だが、あと2~3か月もすれば、新米が出回り始める。そろそろ損切りしてでも、あるいはスポットで大量に仕入れてでも、在庫を捌けさせねば、新米を迎えられない。そうした決断をしようとした矢先、日本の米穀販売業者の前に立ち塞がったのは、意外な人物だった。その名をドナルド・トランプ。イランに侵攻し、返す刀でホルムズ海峡が封鎖されたことでナフサ不足が起こり、巡り巡って精米袋の不足を招いた。
損切りしてでも売ろうにも、袋がない。今や八方塞がりの状態にある。
ただ、ごく一部なのかもしれないが、こんな話を聞かされた。
「袋がないわけじゃないんだ。今まで扱ってた分の袋は確保してある。問題は、新規の袋がないことだ。例えば、うちは『あきたこまち』を扱ってたから、その袋はあるが、スポット市場から仕入れられるのは『コシヒカリ』。その袋は、メーカーに発注しても、新規の注文を断られてしまう。といって、『あきたこまち』の袋に『コシヒカリ』入れて売れば、食品表示法違反でお縄になってしまう」
国は「年明け分までのナフサは十分量がある。不足しているのは、流通のどこかで目詰まりを起こしているから」と説明するが、「目詰まり」と聞くと、つい1年ほど前のことを思い返し、疑いたくなってしまう。
それはともかく、最後にご提案。
一時的に、食品表示法の規制を緩めてはいかが?
(岡野)

