江藤拓農相は4月4日の閣議後定例会見で、アメリカのトランプ大統領が発表した相互関税をめぐって、「昨日(4月3日)午後、関係閣僚を集めて(石破茂首相から)指示があった」とした上で、「関税措置の内容を精査し、農林水産業への影響を十分に精査・分析」し、その上で、「措置の見直しを強く求めていく」方針を明らかにした。
とはいえ、影響はもちろんあるものの、トランプ大統領の示した数値は根拠に乏しいため、精査のしようがなさそうだ。米だけとりあげると、トランプ大統領は「関税率700%」を主張しているものの、どう計算してもそのような数値には至らない。そもそも日本は米の関税を率で示してはおらず、枠外税率は㎏341円の固定単価。これをあえて率で示すなら、今年2月の輸入実績から200%ほどにしかならない。例えば生産調整絡みの補助金を「非関税障壁」とカウントしたとしても、とてもではないが700%には至らない。百歩譲って㎏341円の枠外税率が「高い」のだとしても、これとは別に、国家貿易(WTO枠)でアメリカから日本に入ってくる米は、毎年30万tほどに及ぶ。こちらは、もちろん無税だ。
「言いがかり」に等しい主張をどう「精査」するのか、対応が注目される。

一問一答(4月4日、閣議後定例会見から抜粋)
(略)
記者 昨日、アメリカが相互関税を発表したことを受けて、午後には官邸で総理から措置の見直しを強く求めていくことなど、指示があったと思います。アメリカ政府からは、関税や非関税障壁に関して、農産物や水産物などを問題視する発言や報告書が出ていますが、そうした農林水産分野でアメリカとのディールを行うことが選択肢の一つになり得るのかなど、今後の対応をどう検討していくのかお聞かせください。
大臣 まだ発表されて間がないので、昨日の午後に関係閣僚集めて指示がありました。内容につきましてはご存じのように、まず、関税措置の内容をしっかり精査をする各役所においてですね。そして私のところで言えば、農林水産業への影響を十分に精査する。そして分析をする。そして、引き続き措置の見直しを強く求めていく。一応国内でも、今言われたように影響ありますよ。間違いなく。ようやく1兆5,000億(円)まで輸出は伸びてきたわけでありますが、一番の輸出先は何といってもですねアメリカでありますので、そこがですね、非常に高い関税がしてくるとなれば、非常に影響はあるというふうに思います。具体的に少し申し上げれば、我々は、輸出支援のプラットフォームを作ってきました。やはり外で稼ぐことも、日本の農業にとってはこれから大事だと。そして、産地においても、いわゆる、受け入れ国、輸出先に向けた、それに合ったものを作る努力、そして流通も様々なマーケティングも含めて、一つの流れとして我々は努力をしてきました。それが輸出支援のプラットフォームです。そして品目団体を作って、品目ごとに輸出を評価する努力をしてきました。ですから、2,400億(円)あまりが今アメリカに対する我々の輸出でありますから、これは生鮮食品だけではなくて、例えば清酒であったり、様々な食品、その他のものについても、直接影響があると。そして今朝もですね、テレビを見ておりましたら、ある清酒メーカーは、生産している清酒約8割がアメリカ向けだというような報道もされていました。そういうのを見ると、やはり我々はどのような影響があるのか、生産現場だけではなくて、食品産業全体にわたって、きめ細やかな情報収集をし、そして資金繰りも含めて、どのような対応が可能か早急に我々としても検討を進めていきたいと思っています。
記者 米の関税の関係でお伺いします。今のアメリカとの間での米の関税の実質関税率は何%とお考えになっているかということを伺いたいです。
大臣 我々は関税率という言い方をしておりませんので、341円(/㎏)。よくご存じのことだと思いますが、パーセントで関税を課しているわけではありませんから、日本国としてはですね。機械的にはめれば数字は出てきますよ。多分、御社も数字は持ってらっしゃると思いますが、機械的にはめれば数字は出せますが、しかし我々は、何度も言いますけど、パーセントの関税を課しているわけではありませんので、あくまでもキロ当たりいくらというかけかたをしてますから、それについてのお答えは差し控えさせていただきます。計算してください。
記者 昨日トランプ大統領が、また(日本の米の関税が)700%という発言があって、非常にアメリカとして注目しているなというのはあると思います。こういった状況を受けて、例えば、日本が輸入するときの関税の引き下げであったり、あるいは、アメリカからの米の輸入を増やすとか、そういった対策とかは今後考えられるんでしょうか。
大臣 今、そのようなところに全く踏み込む段階ではありませんので、まずは影響をしっかりと我々で分析をする。そして、分析はいたしますが、しかし粘り強くですね、私は、日米との関係は他国とは違うと思ってるんですよ。一部の方々からは日本だけ特別扱いをアメリカに求めるのは、それは、虫が良すぎるというような報道もありますけれども、私は安倍総理のもとで、5年前に日米の貿易協定、そのご苦労も、それからTPPのときのご苦労も、あのときは副大臣でしたが、ずっと見てきました。トランプ氏と安倍氏とですね、その深い友情と信頼関係というものをそばで見てきた人間とすると、やはり、アメリカは日本に対しては他国とは一線を画した特別な対応をしてくれたとしても、私は何ら不思議はないというふうに思っています。ですから、これからあらゆるチャンネルを通じて、日本は粘り強く交渉を進めてまいりますので、今、あなたがおっしゃるようにこの条件を少しでも緩めるために日本として何ができるかを議論するよりも、その前段階でやはり2国間のしっかりとした経済連携協定も結ばれているわけですから、それに基づいて、我々はしっかり話をする。WTOや様々な話も官房長官は言及されたようでありますが、我々としてはそういうスタンスを今のところは維持していくということであります。