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施策・政策

小泉農相、SBS前倒し「枠外輸入を抑える狙いも」

 小泉進次郎農相は6月27日の閣議後定例会見で、外国産主食用米の輸入手続き(WTO-SBS入札)を3か月前倒しした狙いを改めて問われ、「まず米の価格高騰を抑えることが重要」とした上で、「高い関税を払ってでも民間輸入を増やす動きが顕著。これを抑える狙いもある」と指摘した。ただ「先日、能登の産地を訪れた際も、似たようなことを訊かれた」として、「今日落札される外国産米は、早ければ9月に入ってくるわけだが、ということはSBSの多くを占めるアメリカ産の場合は『古米』にあたる。似たような時期に出回る国産の新米とは別物だ」と、かなり苦しい指摘に終始した。

一問一答(6月27日、閣議後定例会見から抜粋)

 大臣 本日、私からは2点、御報告がございます。1点目は、令和5年度(2023)の食品ロス量についてです。令和5年度の食品ロス量は全体で464万tであり、このうち、食品関連事業者分は231万tでした。前年度に比べ、全体で8万tの減少ですが、食品関連事業者の食品ロス量は5万t減少し、平成12年度(2000)比では58%の減少となりました。農林水産省としては、本年3月に、食品関連事業者から発生する食品ロス量を平成12年度比で、令和12年度(2030)までに60%削減する目標を掲げたところであります。つまり、今回、令和5年度で令和12年度目標の目前まできたということであります。さらに、当初は令和12年度目標は60%ではなく、50%だったものを既に達成したものですから、この令和12年度目標の新たなこの60%目標も、このペースでいけば、令和12年を待たず、いける可能性が相当に出てきている数字だということであります。目標達成に向けて、このように大きな前進をしたのは、商慣習の見直しや食品寄附、食べきり・食べ残しの持ち帰りの取組の拡大などの食品関連事業者による日頃のご努力と、消費者の皆様のご理解の結果と考えております。引き続き、関係省庁と連携して、食品関連事業者の皆さまと共に、食品ロス削減に向けた取組を推進してまいりたいと考えています。
 なお、食べ残しに関しましては、飲食店での食べ残しを自己責任で持ち帰る「mottECO」(もってこ)の取組を推進しておりますが、私が大臣に着任してから農林水産省の食堂では、昼でも夜でも専用の容器を使って食べ残しの持ち帰りができるようにしていただきました。これは中央省庁では初めての取組であります。消費者の皆様におかれましても更なる食品ロス削減の取組にご理解とご協力をお願いいたします。詳細は、この後、プレスリリースをいたします。
 そして2点目は、令和7年度(2025)「こども霞が関見学デー」についてです。8月6日、7日に「こども霞が関見学デー」を開催します。農林水産省では、子供達が家族と一緒に楽しみながら食や農林水産業について学ぶことができるプログラムを多数ご用意いたします。また、その一環として、本日より特設ウェブサイトを公開するとともに、事前申込が必要なプログラムのオンライン受付を開始いたします。ぜひ、たくさんの方々にご来場いただき、日本の農林水産業や食に対して理解と関心を深めていただきたいと考えております。
なお、今回はプログラムが約50ということでありますが、いくつかご紹介をさせていただくと、例えば一つは、今NHKで連続テレビ小説「あんぱん」、これが放映されていますけれども、その制作スタッフの皆さんによるトークショー、こういったものや、また、野菜ソムリエとしてご活躍中の「緒方湊さんのやさい・くだものの時間」ということで、誰かに話したくなる野菜・果物の話をクイズを交えながら、緒方湊さんが楽しくお伝えをしていただけるというもの。また、「さかなクンのお魚講座」ということで、さかなクンと一緒にお魚について学びましょうと。大変魅力的なコンテンツが盛りだくさんであります。
 なお、昨今話題のお米につきましても、「お米を見て、触って詳しくなろう! 脱穀体験! 米粉でまぜまぜ実験!」というようなものも含めて、お米が私たちに届くまでをご紹介をさせていただいたり、脱穀を体験をできたり、米粉を触ってみよう、同じ米粉でも違いがあるとか、こういったことも含めて、大変魅力的なコンテンツがいっぱいありますので、ぜひ農水省にお運びいただければと思います。詳細は、この後、プレスリリースをいたします。本日、私からは以上です。

 記者 米の家計での購入量についてお伺いします。令和6年度(2024)は2人以上世帯の米の購入量が、前年度比6%以上増えたというふうなことが総務省の家計調査でわかっていますけれども、家計においては数量的な米離れというような状況で、数字上はなっていないとは思うんですが、今6月ですけども、そういった家計以外も含めた米離れという部分の大臣のご見解を改めてお願いします。

 大臣 今ご指摘のとおり総務省の家計調査では令和6年度ですけど、2人以上の世帯の米の購入数量は前年度比で増加をしています。一方で、例えば、大手の卸売業者の月別の中食・外食向けの販売数量は、前年を割り込む月も多く見られるなど、一つの指標だけで判断することは難しいとは考えています。米の消費や流通の動向を捉えるためには、様々な調査やデータ分析を進めていく必要があるため、現在、食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)に基づき届け出をしている全ての事業者に対して集荷、仕入、販売、在庫の報告を求めているほか、中食・外食業界、小売業界、食品製造業界等への調査の設計のためのヒアリングなどを進めているところであります。
 いずれにしましても、昨年の2倍もの米価が続けば米離れが危惧されるというのは、昨今、様々な事業者の動向を見ていてもわかると思います。ある牛丼チェーンは、これから初めて麺のメニューを販売をすると。こういったことや、いろんな結果が出ていて、例えば最近、米離れということだけではなくて、海外からのお米の流れが強烈に伸びているという話をしていますが、貿易統計、今回公表されたものでいうと、本年5月の米の民間輸入は1万607tで、これは昨年の1か月当たりの平均輸入量と比べて何と120倍に増加をしています。ですので、この米価高騰をこのままにしておいたら、外国からのお米がこれだけ伸びているような状況がさらに加速化しかねないと。すでに中食・外食業界では外国産米を活用しようというふうに考えている事業者も出てきているということですから、改めて米離れを防ぐ、そして外国産がさらに入ってくるような状況を食い止める。こういったことのためにも、米価高騰対策は、引き続きまだ緩める状況にないというふうに私は思っています。

 記者 食品ロスについて追加でお伺いします。先ほど最新のデータを私も見ましたけれども、事業系全体では減少傾向にあるものの、外食産業に限っていうと令和5年(2023)は66tで、その前の年度に比べて6t増えていると、再び増加に転じたというデータがあります。政府目標を達成するために、この外食産業(の食品ロス量)をどう減らしていくかというところで、外食産業へどのように呼びかけていくかといったところと、改めて、外食産業の数値に関する大臣の所感とその原因分析についてもお聞かせください。

 大臣 今ご指摘のとおり、食品製造業は9万t減少で、食品卸売業、食品小売業が各1万t減少。一方で、今のご指摘のとおりで、外食産業は6万t増加をしていると。それを差し引くと食品産業全体では5万t減少なんですが、どのように、増えてしまった外食産業でより一層ご協力をいただけるかということは、先ほど私、飲食店での持ち帰りがもっと可能となるような環境整備は重要だということで、「mottECO」の取組をご紹介をさせていただきました。実はあの取組みは私が環境大臣のときに進めたもので、あの当時、まだ持ち帰りができますよっていうことに対応していただくような飲食店さん、あとファミレスなどもありましたけども、まだ一部だったんですね。それが今では相当な数増えまして、詳細どこまで今、持ち帰りというものに対応いただいているところが増えたかというのは、あとでうちの事務方からも共有させていただければと思いますが、このような形で、まずは食べきること、外食行った場合、これは基本なんですけど、万が一食べきれなかった場合に、持ち帰りというものがもっと気軽にできるような環境をどのように整備していくかというのも、私は大事なことだと思っています。アメリカなどでは「ドギーバッグ」といって、食べ残した場合は気軽に持ち帰れる。そういった環境が、一歩日本でも進み始めたので、さらにそういったことも含めて後押しをして、結果として、外食産業でも食品ロスの削減が進んだという、そういった結果に繋げていければと思います。

 記者 精米について伺います。農水省は精米実績や余力調査について、(6月)25日までの報告を事業者に求めていました。一部では精米工場に余力がなく、備蓄米の円滑な流通を阻んでいるとの指摘もありますが、可能な範囲で調査結果と大臣としての受け止めを教えてください。

 大臣 今、精米能力に関する調査については、報告いただいた内容を事務方で精査をしているところだと聞いています。早急に取りまとめて結果を公表したいと思います。特にこの精米の能力に関する調査については、調査項目として、どれぐらいの余力があるかという、こういったことに加えて、令和4年(2022)7月から令和7年(2025)6月までの「搗精数量実績調査」、これも併せてやっております。こういったことを通じて、今国民の皆さんの最大の関心事の一つでもある、本当に米は余っていたのか、それとも本当は足りなかったのか、こういったことについても、この実績も含めて把握をすること。そしてまたこの精米の歩留まり、これも我々が見立てを農水省としていた、このt数、また需要と供給のバランス、ここについても、我々がもっと謙虚にならなければいけないような実態があったのか、こういったことの把握の一助にしていきたいと思いますので、今(報告が)上がってきたところですから、しっかりと精査をした上で公表していきたいと思います。

 記者 米の価格の地域差に関してお伺いします。先週公表された地域別の米の価格を見ますと、西側に行くと高いような傾向も見られましたが、米の価格の地域差に関して、現段階で差があるということについてはどのように受け止められているのかが一つと、もう一つ、格差を今後どのように均していくのかに向けて、どのような取組みを今後進めていきたいかお聞かせください。

 大臣 今回ご指摘のとおり、地域差があることも国民の皆さんにも、実態をお伝えをするという意味で、店頭別で全国の農政局の職員にも頑張ってもらって、今発表しているところであります。お米は産地からの距離とか、人件費、そして販売に要する経費、これが地域ごとに異なるので、今般の価格高騰より以前から価格に地域差がある商品でありますので、これはお米に限ったことではないというふうに思います。ただ、今回随意契約による売り渡しの場合は、小売業者に直接定価で販売をして、買受者の指定する精米所まで国の負担で輸送していますので、結果として、比較的地域差が随契米においては少なくなっているというのは事実でもあります。
 あとは地域差によって違うという要因が、こういったコストということだけで説明できるかというと、かなり複雑な状況でもないのかなというのは、私は思っていて、例えば先日、ある新聞社、またテレビ局の報道だったと思いますが、縁故米のやりとりが相当多い地域というのがあるんですよね。そうなると、もともとまずお店で買っていないという方の割合が非常に多かった。それが今までと違って、この米価高騰を受けて、縁故米ではなくて、市場から店頭などから買うというその行動に変わってきたことが結果として今の店頭価格などの変化にも繋がっている要素、つまり地域性だったり、県民性だったり、こういったことも、私は要素としては、決して捨てきれない分析要素だろうなと思うので、結果として様々なデータや情報がこの米価高騰を受けて提供されることによって、その地域の中での特有の消費行動や県民性も含めたものも含めてご理解をいただいて、そして米価に対する安心感、このマーケットの鎮静化に繋げていって、なんとか2倍、2.5倍の状況を出していく。こういった方向に繋げられるように、引き続き努力をしていきたいと思います。

 記者 MA米について、SBS枠の主食用米の入札が、今日からこの後前倒して始まると思うんですが、改めて狙いを教えてください。

 大臣 私も能登で意見交換を米農家さんとさせていただいたときに、このSBS(米)、そしてまたMA米の前倒し、こういったことについてもお尋ねをいただいたところであります。まずは米の価格の高騰を抑えて消費者の方に安心していただいて、米離れを防ぐことが重要だと考えていますので、SBS米、今回、入札前倒しということで実施することといたしました。今回落札されたSBS米は早ければ9月末にも輸入されることになりますが、この時期に輸入される米は、近年のSBS(米)の多くを占めるアメリカ産の場合は、古米となりますので、令和7年産の新米と合わせたこの時期で懸念をされたり、心配をされている米農家さんに対して、「新米とは別です」ということもあわせてお伝えをしたいというふうに思います。ですので、令和7年産米については新米としての評価がなされて、これまでの生産段階のコスト上昇や、その時の需給状況なども反映して、価格が形成されるものと考えております。

 記者 実際、比較的安い輸入米が市場に流通することで全体の価格下げる狙いがあると思うんですけども、そういう見通しも大臣として持っておられますでしょうか。

 大臣 これは、よく輸入米に触れると相当混同された情報、そして発信などがされることがあるんですけど、先ほど私が申し上げたとおり、一番伸びているのは民間が独自で、政府が介在せず、外枠の中で高い関税を払ってでもなお輸入をするという、こういったことが起きているのが一番大きな変化です。そして、そこの部分については、なぜそのようなことが起きるかと言えば米価が高いからです。「高い関税を払ってでもなお、外国産米を使おう、そして売ろう。」こういったことを食い止めなければ、米農家さんの心配は解消できないというふうに思いますので、今回SBS(米)の入札の前倒しから、そして、MA米の一般の方の前倒し。こういったことは、この枠を増やす話をしていませんので、どうかここは正確な、ご理解も、そして発信もしていただきたいなと。我々としては、丁寧にそういったことも含めてお伝えをしたいと思います。

 記者 米の所得補償についてお伺いします。生産調整をやめて増産した場合に、中長期的に見た場合、米価が下がる、再生産することができなくなるという不安が農家の間にはあると思っています。総理は先日の記者会見で、令和7年産、8年産の米価が下落した場合の所得補償について前向きな発言をされたと認識されています。またその際に、生産者側もコストの低減や輸出への努力、こういったことが必要だとおっしゃっておりました。所得補償と、いわゆる支援の条件ということとなるかと思いますが、これについて大臣のお考えをお聞かせください。

 大臣 まず総理は長年の農水大臣経験から、農政に長く携わっていた中で、その思いをお話をされているということだと思いますし、その総理の思いをどのように現実のものとして政策に落とし込むか、これは我々として大事なことだと思っていますので、そういった総理のお考え、そしてまた与野党から通じて提言されている、様々なセーフティネットのアイデア、こういったものもありますので、今後、令和9年度(2027)以降から水田政策大きく変わりますので、これに向けて、率直に与野党の垣根を越えた議論を、我々も踏まえた上で、決めていきたいというふうに考えています。
 収入保険の話もあります。この収入保険についても、見直すべきところがあれば、こういったことだって考えていかなければいけないことでありますので、まず、今の米価高騰を落ち着かせながら、令和9年度の水田政策の転換に向けて、丁寧な議論をしていきたいと思います。どうか農家の皆さんにおかれましては、このセーフティネットの議論も同時並行で進めると、こういったことはお伝えをしておきたいと思います。

 記者 所得補償、いわゆるセーフティネットの検討というのは、基本的には令和9年度(2027)の新制度から一緒にスタートするものであるというようなスケジュールで進めていこうというお考えなんでしょうか。

 大臣 これは基本的にはそういうことになります。たぶんここも、少し不安に向けたものが、今の目の前の不安と中長期の不安と両方あるのではないかなと思っているのは、例えば今は備蓄米の放出によって米価の沈静化、ここをやっていますので、米農家さんからすると、これが下がり過ぎたらどうするんだという不安が一つあると思います。これに対しては、我々ずっと国会でも言っていますけども、今回、マーケットが落ち着いたときに、放出した量と同じ量を備蓄水準を戻していく、そういったことをやりますと、これを言っていますので、そこは正確にお届けしたいと思います。中長期に向けてどうするのかということは、まさにこれから生産調整のあり方をどうするのか。そして作りたいという意欲を持っている方が、より増産に向けて取り組んでもなお、経営の安定が見通せるような支え方をどうするのか、これこそまさに、令和9年度に向けて議論していかなければいけないことなので、それは両方対応するための議論を進めていきますと、こういったことを理解いただきたいと思います。

 記者 もう1点お願いします。令和9年度の新制度ですが、水田活用の直接支払交付金の見直しをされると思います。水田だけではなくて、畑作のゲタやナラシについてもセットで見直すというようなことになるでしょうか。現時点でどのような方向性をお考えなのかお願いします。

 大臣 令和9年度(2027)の水田政策の見直しについては、先ほど申し上げたとおり、与野党も含めて幅広いご提案をテーブルの上にのせて議論を進めていきたいと考えていますので、ゲタ、ナラシ、これがセットなのか、それとも、そこはそのままなのかということについては、そこも両論、いろんな声があると思いますので、幅広くセーフティネットのあり方も含めて、必要に応じた検討を深めていきたいと考えています。

(以下略)

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