農林水産省は1月24日、政府米の「買い戻し条件付販売」を検討していることを明らかにした。江藤拓農相が同日の閣議後定例会見で表明したもの。仕組みの是非を、1月31日に開く審議会で議論する。
昨年の「令和の米騒動」の際ですら、農水省はとうとう政府米放出に踏み切らなかった。それは、「政府米の放出は、あくまで不測(不足)の事態が条件」のためだ。今回のような米価高騰を理由に政府米放出は出来ないし、ましてや令和6年産米は統計上、生産量が18万t増えている。にもかかわらず農協など集荷業者には、▲17万t集まっていない。この状況を「健全ではない」と評価したのは、江藤農相だ(会見での発言)。

米価高騰といっても、産地からしてみれば「ようやく生産費を賄える水準になった」程度。しかし価格が上がれば消費者の「米離れ」も懸念され、実際に量販店などでの売れ行きは落ちてきている。だから、それこそ不測(不足)の事態でもない限り、民間のやることに口を出したくない、政府米の放出で市場に悪影響を与えたくない、というのが農水省の本音だ。
しかし、事実として「健全ではない」事態が起こっているのも事実。そこで、根拠法である食糧法の改正を経なくても政府米の活用が可能なのか、内閣法制局と協議を重ねてきたという。その結果、「貸し付けるということであれば、法改正を行わなくてもいけるだろうと」(江藤農相)なった。
ただ会見で江藤農相は、政府米を「出すと決めたわけではない」、(貸付によって)政府米を「活用ができる状況にしたいと思っている」、1月31日の審議会で「政府米の買い戻しの条件付きの販売を可能とすることを、議論いただきたいと思っている」と強調している。また「卸に出すという話ではない。集荷業者に限定して出すことが、消費者の方々にとって良いのだろうと思っている」とも。
政府米放出に至るような不測(不足)の事態は、過去に二度起きている。平成5年産のときはまだ食糧管理法の時代だったため、比較にならない。平成15年産のときは食糧法になっているものの、備蓄運営方式が主食用としての販売数量と同量を買い入れる回転備蓄方式だったため、買入数量を主食用としては販売しない(飼料用などに処理する)今の棚上げ備蓄方式とは、意味あいが異なる。
現在の食糧法には、不測(不足)時の放出先として卸を想定しているものの、今回は集荷段階に米が集まっていないことから、集荷業者に限定するというのが、農水省の説明だ。
まずは審議会でこの仕組みを認めてもらわなければならず、仕組みの詳細は今後詰めていく運びで、「売買差損が大きくならない設計にしたい」(農水省)。ただ仮に放出するとした場合、対象となるのは「令和6年産米が基本。ただし他の年産が全く対象にならないかというと、現時点では分からない」(農水省)とも。ちなみに令和6年産政府米は17万2,016t。集荷業者に「集まっていない」とされる数量と奇妙に符合する。