農林水産省の発表によると、令和6年産米の1等比率は回復したにもかかわらず、農産物検査の受検数量が、通称「令和の米騒動」を引き起こした令和5年産の同時期をすら下回っている状況が続いている。
農林水産省が1月31日付で公表した令和6年産米の農産物検査結果で明らかになったもの。それによると、昨年12月末現在の水稲うるち玄米検査数量は前年同期比▲6万1,882t(▲1.6%)の375万9,294tで、1等比率は75.9%だった。前年同期は61.3%だったから、令和4年産同時期の78.6%並みまで回復したことになる。
農産物検査は、主に整粒歩合を確認するもので、必ずしも品質を確認するものではなく、安全性に関する項目も含まれていない。したがって「1等」とは良品質を指すのではなく、主に整粒歩合の高さ、それも「70%以上」を示すものに過ぎない。実際は選別によって「整粒歩合ほぼ100%」の米が流通するため、農産物検査によって2等以下に「格付」された米も、最終製品としては区別されない。ただし歩留まりは低下する。だが最終的に毎年6割強という高い受検率(主食用米収穫量に占める検査数量の割合)を誇っているのは、受検によって産地・品種銘柄名の表示を担保できるためだ。
主食用米の収穫量は、令和5年産から6年産にかけて18万2,000t増えている。にもかかわらず検査数量は6万1,882t「減っている」。故に農協をはじめとした集荷業者は「集まらない」と嘆き、監督官庁は「流通が目詰まりを起こしている」と主張する。
農産物検査を受検しなくても、根拠さえあれば産地・品種銘柄名を表示して販売できる。この未検玉(未検査米)が大量に出回っている可能性もあるが、流通段階だけでなく産地段階(生産者自身)が抱え込んでいる可能性もあるのではないか――そんな仮説も浮かんでくる。