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解説 論点

コスト指標委議長の西川教授が講演

 日本大学の西川邦夫教授は5月18日、全米工(全国米穀工業協同組合、東京都千代田区)の総会(既報)終了後に「令和のコメ騒動と水田農業政策の課題」と題して講演した。
 今年3月まで茨城大学教授だった当時、米穀機構(《公社》米穀安定供給確保支援機構、東京都中央区)「コスト指標作成等委員会」の議長を務めていた。ただし講演では、直接的にコスト指標に触れる場面はなかった。

 講演のなかで西川教授は、まず大前提として、「日本の米市場が抱える長期的(基本的)な問題は、需要の縮小と生産力の脆弱化にある」と指摘。いわゆる「令和の米騒動」を経たからといって、この「長期的・基本的な問題の構図に変化が生じたわけではない」とした。
 その「令和の米騒動」の要因を、「生産調整(事前対策)の失敗による需給ギャップの発生と、流通対策(事後対策)の不備にある」と断じる。もともと米は、「価格弾力性の小さい品目」として知られる。日本国際学園大学の荒幡克己教授(岐阜大学名誉教授)が昨年の著作のなかで、「8.7%の不足により価格が1.68~1.87倍になり得る」と指摘している。にもかかわらず、「需給調整が事前対策である収穫前の生産調整に集中し、事後対策である収穫後の流通対策という手段が準備されていなかった。端的に言えば、収穫後に多用途を主食用に振り向けることが制度的に出来なかったため、いきなり政府備蓄米の放出に至らざるを得なかった」と括った。
 とはいえ、「政府備蓄米の放出と令和7年産米の増産によって、需給ギャップは解消された」ものの、「集荷競争の激化により米価は高止まりしたまま」の状況が続いている。その結果、今や「需要の減退を招き、増えたはずの消費は輸入米に置き換わっている可能性がある」。つまり「令和の米騒動」は短期的な事象だったはずが、「長期的な問題に繋がる可能性が高くなってきた」とする。
 もちろん国も無為無策ではなく、今まさしく国会で改正食糧法が審議されているところだし、もともと令和9年度(2027)から水田農業政策を見直す予定だった。この二つを西川教授は「セットで考えるべき」と主張する。「短期的には、基本指針の見直しによって需給見通しの精緻化に取り組んだし、改正食糧法によって流通実態の把握強化に努めようとしている。短期と長期を媒介する装置として、改正食糧法に民間備蓄制度の創設が盛り込まれたし、食料システム法によってコスト指標が措置された」。
 改正食糧法と令和9年度(2027)以降の水田農業政策をセットで考えた場合、その長期的な目的は、「生産調整の緩やかな廃止と事後調整(流通対策)への移行、さらに輸出の促進を意味する」と看破した。
 その上で主食用米に対する支援を、「適正価格+直接支払の二段構え」の方向性だと括る。大前提として、脆弱な生産性を向上させる必要があるわけだが、「規模拡大、農地の集約化には時間がかかる。それはそれで必要だが、同時並行的な生産性向上対策として、単収の上昇をめざすべき」と指摘。一つ光明があるのは、「『生産性の抜本的な向上を加速化する革新的新品種開発』予算が、令和7年度(2025)の3億8千万円から、令和8年度(2026)は概算要求段階で10億3千万円に大幅増額されている」と紹介している。

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