財務省は10月16日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、「今後の備蓄米放出後の平常化方法の検討」を提言した。
いわゆる「令和の米騒動」に伴い昨年、計59万tの政府備蓄米を放出した。これにより備蓄米在庫は一時、32万tまで減少した。「適正備蓄水準」は「100万t前後」と言われているから、実に3分の1程度に過ぎない。
その後、令和8年産21万tを買い入れ、令和7年産21万tを買い戻したので、契約が完了すれば備蓄水準は74万tまで回復する見通しだ。だが最古米である令和2年産15万tを飼料用その他に処理(非主食用に販売)することが決まっているので、これを踏まえると備蓄水準は59万t。なかなか100万tへの道のりは遠いと言わざるを得ない。
農協を中心とした産地側は、追加買戻しを急げと矢の催促だが、農水省はなかなか首を縦に振らない。何となれば、需給や価格に影響を与えかねないからだが、これは建前の話。本来は20万t×5か年分で100万tを構成するはずが、余っている令和7年産にせよ絶賛収穫中の令和8年産にせよ、これから買い戻す、あるいは買い入れるとなれば、在庫の年産構成が歪にならざるを得ない。
本音を言えば、令和9年産と10年産の2か年かけて、概ね20万t×5か年=100万tを回復させたい。しかし、そんなことは口が裂けても言えない。「食料安全保障」の建前があるから、「早期の100万t回復」は至上命題だし、その2年で不作が連続しないとも限らない。加えて、その間に備蓄米を放出せざるを得ない何らかの災害が起こらないとは誰にも言えない。
そこで財務省、「備蓄運営の安定化をはかるため、国産米の備蓄量が適正水準に回復するまでの間、MA米(外国産政府米)を暫定的に活用してはどうか」と提言したのである。
これにより「特定の年産に偏ることなく、適正な備蓄水準を維持することが出来る」し、「その後は毎年、市場への影響を抑えながら、安定的・計画的に新米買入を継続することが可能となる」というわけだ。
確かに、MA米の在庫は昨年10月末現在で39万tあったから、多少は目減りしているにしても、国産政府備蓄米と合わせれば、在庫は98万t。これを「100万t前後」と称しても強弁にはなるまい。
気になるのは、提言の仕方だ。何かこう、「とっておきのアイデアでしょ」的な胸を張るような感じに聞こえてしまう。しかし、申し訳ないが「言わずもがな」である。実際、提言のなかで財務省は「なお、食料供給困難事態対策法では、基本的な方針(令和7年《2025》4月閣議決定)において、不測時に、政府備蓄や民間在庫で対応してもなお、国民が最低限度必要とする食料の供給が確保されない場合等には、MA米を活用することとしている」と注釈を入れているし、昨年「随契米」を放出した際、当時の小泉進次郎農相は「足りなければMA米がある」と指摘していた。別に財務省に「言わずもがな」な提言をされなくても、事実上、「ほぼ100万t」は実現できているのである。
もちろん頭の良い財務官僚の方々のことだから、「余計なお世話」なのは百も承知だろう。上記のような理屈を持ち出せば、追加買入/買戻しによる「余計な財政出動」を抑えられると踏んでいるだけのことだと推察する。

