ようやく本決まりになった政府備蓄米の買戻しだが、驚くほど批判の声が多い。曰く「遅きに失した」「焼け石に水」…。確かに、令和7年産米の在庫が捌けない、(作柄どうなろうと)令和8年産米の作付が過剰気味なのは、かなり前から分かっていたことだから、もっと早くアナウンスしてもよかったし、「今後も(追加の買戻しが)あるかもしれない」と匂わせてはいるものの、21万t程度で「過去最大の在庫」がビクともしないのも分かっていたはずだ。いわゆる「戦力の逐次投入」の愚を犯しているわけで、それはちょうど昨年の放出と似ている。売りと買いが逆になってはいるが。この背景にあるのが、「価格に口出ししない」と宣言してしまった鈴木農政の〝苦悩〟にある――という論旨展開は別稿に譲るとして、ここでは目の前のスポット相場への影響を指摘しておきたい。
カギになるのは、「令和7年産21万tを対象とした政府備蓄米の買戻し」の、実際のやり方だ。手法は「見積合せ」と称しているが、例年実施する政府備蓄米買入入札と大きな違いはない。違いがあるのは、入札参加者がごく少数に限られる点だけだ。参加者は昨年、入札米(江藤米)を買い受けた全農、全集連、福井県農協、佐賀県農協、㈱KAWACHO RICE、奈良県農協、熊本県経済連、㈱百萬粒、愛知県経済連、㈱三松の10者のみ。買い受けた数量の範囲内でのみ応札が可能なため、入札米31万2,296tのうち94.8%にあたる29万6,195tを買い受けた全農が〝主役〟になるのは間違いない。この〝買戻し入札〟は、9月18日から最大でも4回にわたって実施される。
問題は、買戻し対象である令和7年産米が、21万t〝も〟あるのか、だ。物理的には、何しろ「過去最大の在庫」なので確かに存在する。しかし、この大半は当然のことながら契約済み玉なのであって、未契約玉は7月末現在で8万9千tに過ぎない。〝不足〟分をどうするのか。残り少ない(とみられる)スポット市場から調達するのか、それとも契約済玉を引き剥がすのか。その判断は売り手(主に全農)に委ねられている。当然「政府に売り渡したほうが高い」のであればいいが、そうでないなら……。事実、9月2日の食糧部会では、まさしくJA系統の委員から、買戻し入札の実施にあたって「損害を被らない予定価格」を求める声があがった。「でなければ応札しかねる」と、ほとんど脅迫に近い発言も。
つまり備蓄米買戻しが米穀流通業界、特にスポット市場にどう影響してくるかは、ひとえに21万t全量買戻し出来るか否か、またいくらで買戻しされるのか、にかかっていると言える。仮に全量買戻しがなり、十分な高値で売り渡されるのだとすれば、スポット市場では令和7年産の奪い合いが起こり、JA系統は令和8年産の概算金(一次集荷価格)を高値で設定、あるいは上方修正か追加払いに出ることは目に見えている。そうなればスポット市場での令和8年産米も急騰が始まるだろう。だが、そうでないとすれば……。
まだまだ相場から目が離せそうにない。
