小泉進次郎農相は6月20日の閣議後定例会見で、令和7年度(2025)MA一般米入札の前倒しと中粒種の輸入拡大を明らかにした。
会見ではまず、入札米31万tと随契米50万tが全量完売したと仮定した場合、今年6月末現在の(国産)政府備蓄米在庫を15万t(令和6年産2万t、令和5年産2万t、令和3年産1万t、令和2年産10万t)と見込んだ。その上で、例年なら実施する最古米のエサ処理(飼料用への売渡)を中止、令和7年産の政府買入も中止し、入札米の買い戻しも出来る環境にないことから、「万が一の事態に備えるため」本来なら主食用以外の用途に仕向けるMA米の在庫を増やす。
外国産米の義務的な無関税輸入枠であるMA(ミニマム・アクセス=年76万7千t)のうち、主食用に仕向ける年10万t枠を除いた66万7千tは、「MA一般米入札」によって輸入商社を選定する。その最初の入札は例年、8月に実施しているのだが、これを6月に前倒しする(6月30日の実施を6月20日に広告予定)。このうち中粒種を拡大するのは、万が一追加放出が必要となった場合、主食用に回せるよう「日本人に馴染み深い短粒種に近い品種のため」。産地国は、主にアメリカ、オーストラリア、中国の3か国。なお、ここで言う「最初の入札」は、例年7月に実施する第1回MA一般米入札を指していない(第1回入札は例年、沖縄の泡盛原料を当て込んでいるため)。
一問一答(6月20日、閣議後定例会見から抜粋)
大臣 本日、私からは2点、御報告がございます。まず1点目ですが、政府備蓄米の在庫状況についてです。皆さんのお手元にも今日は口頭だけでは、なかなかわかりにくいかなと思いまして、資料も配布をさせていただきました。政府備蓄米は、近年、その在庫量が91万t以上となるように運用を行ってまいりました。昨年から今年にかけても、本年6月末に在庫数量が91万tとなるよう、配合飼料向けに販売を予定していた5万tの販売を凍結いたしました。その結果、政府備蓄米を売り渡す前の本年3月末現在の在庫数量は、96万tとなっておりました。また、政府備蓄米の現在の販売枠が全て販売された後の在庫の見込み数量は、入札による政府備蓄米販売分31万t、随意契約による政府備蓄米販売分50万t、これらを売り渡すと、15万tとなる見通しです。この15万tの年産別の内訳は、(資料の)右側にありますように(令和)6年産が2万t、5年産が2万t、3年産が1万t、2年産が10万tとなります。以上が、この資料に基づく1点目の、今日の冒頭の発言になります。2点目は、MA米一般輸入分の前倒しについてです。不測の事態が生じた際に、政府備蓄米を活用してもなお、供給が不足する場合には、国が保有するMA米も活用可能としています。現在の販売枠が全て販売された後の政府備蓄米の在庫の見込み数量は、今申し上げたとおり15万tでありますが、さまざま国際情勢含め、万が一の事態に備えていくことも重要であります。このため、MA米の在庫を積み増しまして、令和7年度輸入分の買入入札については、通常、8月から本格的に買入入札を実施していますが、緊急的に前倒しを行い、6月30日に今年度第1回目の入札を実施するほか、国産の主食用米の品質に近い中粒種の輸入量を増加させることといたしました。本日16時に、ホームページにおいて入札公告を行う予定であります。引き続き、(米穀の)安定供給のために、必要な措置を講じてまいります。冒頭、本日私からは以上です。
記者 明後日が通常国会の会期末という形になりますけれども、今国会は少数与党下の予算審議ですとか、農林水産省提出法案はすべて成立ですとか、そういったこともありましたが、それらも踏まえて、今回の国会の大臣としての総括、振り返りをお願いします。
大臣 大臣になって明日でちょうど1か月なので、正直申し上げて、この通常国会を振り返れと言われたときに、私は大臣になる前の政治改革、この理事でありました。答弁側の立場でもありましたので、この通常国会は、この企業団体献金の問題などに、相当注力していたというのが現実なところで、最終盤のこの約1か月で農水大臣になり、今、農水省とともに、私が手掛けたもので言えば、食料システム法案、この成立が無事になったということを含め、農水省の提出法案がすべて成立をしたというのは、農水省の職員のサポートのおかげだと。そしてまた与野党の皆さんに、特に食料システム法案については、全会一致ということで委員会でも可決をいただきましたので、ありがたく思っています。こういったこととあわせて、法案とは別ですが、やはり米価高騰、この問題を国民的な関心事、そして大きなテーマの中で、私もこの1か月取り組んでまいりました。今日、消費者物価(指数)も発表されましたけども、まだこれは随意契約のものとかが反映されていない消費者物価指数ですが、昨年と比べて、いまだに約2倍の状況があります。ついては、引き続きこの米価の安定、これに向けて手を緩めることなく、スピードを緩めず取り組んでいかなければいけないと、今新たに決意をしていますし、同時に生産者の皆さんと多く意見交換をさせていただく中で、今後の新米が出てきて以降の動向についての生産者の皆さんのご不安、そしてまた、中長期の米政策に対する関心、これがやはり非常に大きいと思いますので、今後も積極的に生産者の皆さんと意見交換をさせていただく機会も設けていきたいというふうに思います。そして消費者の皆さんにつきましても、昨日、我々農水省として発表させていただいた2社の新たなデータ、これを見れば、今日の日農さん(日本農業新聞)の1面でもご紹介をいただいているとおり、(株式会社)インテージ(リサーチ)さんの発表している地域別の価格でいうと、北海道と東北と信越、この地域では、すでに(5㎏)4,000円台ではなく3,000円台になっていて、一番低いところでは信越が3,662円と、こういった状況になってきました。ついては、この3,000円台に今ようやく手がかかってきた、こういった状況の中で、さらにこの3,000円台の地域が増えていく、そしてまた、中長期の米農家さんの安定的な経営と、そして生産意欲、これが上がっていくような方向性を見出していきたいというふうに考えています。
記者 冒頭ご発言があった、ミニマム・アクセス米の一般輸入米についてお伺いします。ここ4年間は、第1回が7月初旬から中旬にかけて行われていて、6月30日では、数日とか半月ほどの前倒しになると思うんですが、ご発言があった8月から本格的にするのを、6月30日からというのは、第1回の輸入量も例年より大幅に増やすということなのか。
事務方 今日(午後)4時公表予定です。
記者 これまでは、MA米の一般輸入分は加工(用)、飼料用が一般的だったと思うんですが、中粒種を増やすというのは、用途を主食用米にも活用できるようにするのか、用途は加工飼料向けをメインとしているのか、前倒す目的を改めてお願いします。
大臣 これは今日お示しをしているとおり、備蓄米の放出を続けている中で、(在庫の)水準が低下しているというのは明らかです。こういった中で、万が一の事態に備える、こういったところを考えれば、今、市場から買い戻すという環境にはないですから、そういったことを考えれば例年の普通に入ってきている一般のMA米、これを前倒しをして、できる限り、万が一のことが起きても対応できるような構えをしておくと、そういったことのねらいです。
記者 使用の用途については主食用も。
大臣 これは今まで中粒種と長粒種、両方ともMA米の一般輸入の方で入れていたのですが、その割合、こういったことを、万が一のときに仮に備蓄米が全部使われて、そのあとにMA米の一般輸入の分を活用する。この在庫を活用するとなったときに、できる限り日本の中で親しまれている、そういったものに近いもの、この割合を増やすということでもあります。
記者 冒頭の方でもご発言のありました、明日で農水相就任1か月ということで、その点についてお伺いしたいのですが、就任時に米担当大臣とご自身でも名乗られておりましたが、この間の米政策についてどのような成果を上げられたとお考えで、また、今後どういったところを目指して、どういった政策を取り組んでいこうとお考えでしょうか。
大臣 どのような成果と、また課題と、両面見ていただくかというのは、メディアの皆さん、そしてまた国民の皆さんにご判断いただくことなんだろうというふうに思います。私としては、賛否両論あるのは承知の上で、この局面は、政治判断で局面を変えていかなければならない。なんとか日本全体が、デフレからこの適度なインフレへと成長する経済の方向に歯車が回り始めたときに、急激に高騰した米が足かせとなって、経済全体が停滞をしてしまう。こういったことがならないようにしなければいけないという思いがあります。その中で、おそらく私が大臣になったときは、この高いお米をどうやって下げるんだ、この声が圧倒的だったと思います。そして今ではむしろ、下がり過ぎたらどうするんだ。そういったところに変わってきたというのは、まさに今までなかなか下がらなかったこの局面が、これは下がるというふうに消費者心理も世論も変わってきた。そしてマーケットも変わってきた。こういったことだと思います。私はそうならなければ、結果は出ないと思っていましたので、実際にマーケットの数字を見ればスポットでも3週連続下がっている。そして我々が発表するPOSも、そして昨日発表した2社のデータも下がっている。こういったことから言えば、今米価高騰を落ち着かせる、そこについては、結果は出てきているというふうにと捉えています。ただ、これは農水省の職員とも毎日意見交換をする中で、去年新米が出てくれば大丈夫ですと言ったけど、大丈夫じゃなかったわけですから、我々ここで楽観視をするわけにはいかない。そういった戒めも持ちながら、手を緩めずに挑んでいきたいと思います。
記者 一方で石破首相は、6月半ばに5㎏当たり平均3,000円台を目指していくというご発言もされておりましたが、昨日新たに発表されたPOSでも、まだ3,000円台には届いていないということで、この点についてはどのようにお受け止めでしょうか。
大臣 総理が言われたことは重いですので、その方向に向けて少しでも近づく努力を重ねていかなければならないと思っています。一方で、やはり農水省のPOSだけで世の中の本当のお米の動向というのは掴めるんだろうかという思いは、私も持ちながらやっていました。今回2社のご協力も得ながら、業態別、地域別、そして種類別、このような形で発表する中で、先ほど申し上げたとおり、北海道、東北、そして信越ではすでに平均が3,600円、3,700円、こういった状況になってきましたので、全体の平均が3,000円台にはまだなっていませんが、地域によっては3,000円台にすでに入ってきた。広がりをどのようにこれから加速をさせて、結果平均が3,000円台になってくる、こういったところに一日も早く近づけていくことが、次の段階だろうなと思っております。
記者 まず米の価格の関係で伺います。総務省の小売物価統計調査の中で、米の価格に関して、すごい地域間での大きな開きがあります。この状況に対する大臣の認識と、今後流通を解明していく中で、なにかしらの対策を考えていらっしゃるのかということをまずお伺いしたいです。
大臣 昨日のぶら下がりのところでも、こういった地域別、種類別、業態別などで、むしろわからない、わかりにくくなるのではないかというご指摘もありましたけども、私はむしろ地域の中での様々な状況も見えて、そこにお住まいの方々にとって、わかりやすくなるのではないかと。また、私は多くの国民の皆さんにとっても、より地域の違いについても理解が深まることになるのではないかなと思っていたんですけども、改めて、今日、朝日新聞さんが、最安値の青森県の八戸と最高値の岡山県、ここの比較を大きく記事にされているのを私も読みました。この地域最高値になっている岡山などは、かなり縁故米の流通が多い、こういった状況も報道がありますよね。なので、改めてこの地域別の価格を出したことで、単純にこの需給のオープンマーケットの中での動きだけではなくて、このお米独特の全体の量の中の約7分の1が縁故米というこの世界の中で、より地域に、フォーカスをしてみていくと、だから高止まりをしているのかということも含めた分析の一助になっていくのではないかなというふうに思うので、今回こういった記事を見ると、結果としてこういったことは、やはり地域性理解する上でも重要なことではないかなというふうに思います。
記者 この前から地図上に店舗を落とし込んで、という形で備蓄米を発表されていると思うんですけども、店舗数ではなくて流通量、実際に米がどれぐらい届いているのかということに関して、その地域偏在に関しては、把握を実際にされているのかということと、地域に対する流通量の偏りなどに関して公表されたりとかはしないのでしょうか。
大臣 これは公表のあり方は考えたいと思います。そして地域偏在に対しては問題意識を持っていますので、先日もぶら下がりの方で触れた海上輸送、これを東から西へと振り向けていて、先日、新潟から鳥取へ1,200tぐらい、海上輸送で運んだというのも、まさにこの地域偏在をできる限り埋めていきたい、こういった思いでもありますし、やはりかなり備蓄米の倉庫や精米のところが東北に偏在をしているということもありますので、やはりそういった課題は受け止めて対応していくということは、これからもしっかりやりたいと思っています。
記者 冒頭にあった米の輸入の関係なんですけども、あれはSBSの枠として緊急輸入するということなのか。
大臣 いいえ、違います。これは、SBSは先日発表した前倒しです。これは9月の入札を6月、今回はそのSBSの外側の67万tの部分、この中の入札を本来であれば普通は8月ですけども、これを6月に前倒しをする。全部枠内の話です。
記者 あと中粒種ということですが、基本カルローズを想定しているということでしょうか。
大臣 これは中粒種の中でも、もちろんアメリカのものもあれば、他の国のもの、例えばオーストラリアとか、こういったものもありますので、そこは一つだけに偏らずということは基本だと思います。
記者 今日これから、外食・中食・給食事業者への供給が始まりますけれども、以前大臣ご紹介されたときに、これらの事業者から引き合いがあるというご発言があったかと思うんですけれども、差支えのない範囲内で、どういったところのどういう業態の方から引き合いがあるのか、それから今日始まって以降の期待感について教えていただければと思います。
大臣 これは今までも、中食・外食、そして給食事業者の、関係の方々からは、うちも本当に米の価格が上がってしまって困っているんだと、この声は多くありました。今回、備蓄米で随意契約のものが出回り始めて、結果店頭で随意契約の備蓄米を購入されている中の方には、地域で、例えば食堂を営んでいる方とか、居酒屋さんをやっている方とか、あとは町の中華屋さん、こういった方々がお店でお客さんに出す用に買い求めているのも一部あると思います。今回10時から、あと20分ぐらいですけども、受付を開始する中で、もちろん大手の企業さんとかも申し込みがあるかもしれませんし、生活衛生同業組合、この形でいくつかの皆さんをまとめてお申し込みをされて、結果、小さなお店も含めて行き渡るということもあるかもしれません。それは今日10時からどのような動きが出るか、よく注視をしたいと思います。
記者 大臣の地元の市長選についてお伺いします。今週末、横須賀市長選が投開票になります。先週は三浦市長選で自民推薦候補が敗れまして、なかなか負けられない戦いだと思うのですが、この横須賀市長選にどのように臨むか、また選挙戦最終日の明日、地元入り、応援入りする予定、考えなどがあるかお聞かせください。
大臣 まず、応援する予定はありません。これは地元からも、もう地元のことじゃなくて、今、国全体のテーマで大変なんだから、そっちに専念しろというふうに言ってもらっています。なので、今お米の問題を含めて、かかっている、この大きな問題がありますから、しっかり取り組んでいきたいと思います。