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施策・政策相場需給

政府米放出で農相「価格落ち着き目詰まり解消を期待」

 江藤拓農相は4月1日の閣議後定例会見で、全量落札となった第2回政府米売渡入札結果(既報)を発表した。このなかで「1回目の14万tは、すでに引渡しが開始されており、第2回の7万tは4月半ばから引渡しが開始される。これにより価格は落ちついて、目詰まりが解消されることを期待している。今後については、情勢をみて判断する」としている。
 加重平均落札価格が第1回から下がった点をめぐっては「第2回のほうが令和5年産のパーセンテージが高かったことも多少は影響しているのではないか」とした上で、安値誘導は「もちろんない」とキッパリ否定。また追加放出の可能性を「政策結果を見極めるまでに少し時間がかかる」としながらも、「必要であれば躊躇なく決断する」と改めて表明した。
 一方、昨年の令和6年産政府米買入入札で落札した業者のうち7業者が引き渡さず、入札参加資格停止処分と違約金を科せられた点(既報)を訊かれ、違反数量が「だいたい2,000tくらい」と明らかにした上で、「集められなかった人もいるだろう。それは決して悪意ではない」と理解を示した上で、「契約をした以上は、守っていただくのが筋」、「買入することを禁止する措置と違約金は、契約に従って科させていただくことになる」とした。また「世間の方々が、違約金を払ってでも市場で売った方が利益が出ると判断した人がいるのではないか、と思う人もいるかもしれない。そう推察されるのも、無理もない話。今回の特殊な状況が、7社で2,000tという数量を生んでしまった」と指摘している。

 令和6年産買入入札は昨年1~6月の間、7回にわたって実施されたものの全量落札に至らず、落札数量は、提示数量(買入予定数量)の83.7%にあたる17万2,016tにとどまっている。予定価格(買入上限)が60㎏あたり「13,460円以上13,500円未満」(包装代込、税抜、置場)と推定されていたため、令和6年産の集荷価格(農協の概算金、152銘柄の単純平均)16,620円(包装代込、税込、置場)からすれば、「集められなかった」のも無理はないと言える。また、この当時は、いわゆる「令和の米騒動」の直前、令和5年産米のスポット価格が高騰していた時期だから、そこから令和6年産米の暴騰を予測し、「とてもではないが13,000円台半ばでは売れない」と考える業者がいても、これまた無理はないと言える。政府米買入入札の落札玉を売り渡さなかった場合の違約金は10%。現在の令和6年産米のスポット価格からすれば、「違約金を払ってでも」売り渡さなかった行動は「悪意」ではなく、むしろ「健常な商行動」とすら言えてしまうのではないか。

一問一答(4月1日、閣議後定例会見から抜粋)

 大臣 本日、私から1点、報告があります。3月26日から28日に実施した政府備蓄米の売渡しに係る第2回の入札結果についてご報告します。今回の入札については、落札数量は70,336t、落札率は100.0%となりました。前回と合わせた落札数量は21万2,132tとなり、予定していた21万tを売り渡すことができました。
また、今回の落札価格の加重平均は60㎏あたり税抜きで20,722円となり、第1回と合わせた落札価格の加重平均は、60㎏あたり税抜きで21,053円となりました。
第1回目の14万tは、すでに引渡しが開始されており、第2回の7万tは4月半ばから引渡しが開始されます。これにより価格は落ちついて、目詰まりが解消されることを期待しています。今後については、情勢をみて判断します。以上です。

 記者 結果公表された米の流通に関する調査は、流通の目詰まりが生じているということで行われたと理解していますが、流通の目詰まりがあるという想定に対して、今回の調査結果をどう受け止めているか聞かせてください。

 大臣 例えば、トイレットペーパーがオイルショックの時になくなりました。各ご家庭で、家庭の暮らしを守るためにみんなが買ったので、一気になくなりました。米がないのではないかという不安感が、消費者の方々にも、流通関係者の方々にも、さまざまな集荷業者の方々にも多分にあり、それに加えて、「転売ヤー」と言われるような方々も一部市場に参入して、新たなプレイヤーも参加してきて、庭先で米を買う。私の地元の、山の奥の高千穂でも、宮崎弁とは全く言葉で違う話をする人が突然来て、全部売ってと言われたという話もありました。さまざまなSNSが流行っている時代ですから、色々な風評とかが一気に立つと、もうお米が無いんだと。我々としては、18万t、昨年よりも穫れていると。今回の調査結果でも、641という調査対象ですけれども、非常に収穫は良く、7%余計に穫れている結果だったわけですが、そういうことよりも、ネットの力や伝聞が大きく影響しているのだろうと思います。中には、この機会にうまいこと儲けてやろうとした人がいるかもしれません。そういう人たちについては、特に掴みづらいこともありますが、それぞれの立場の方々が、少しずつ先回りをして、「夏には足りなくなるんじゃないか」ということに備えて、今まで以上に手元に在庫を積み増した結果ではないかと感じています。本来は、マーケットは、確固たるエビデンスに基づいて動くのが正常なものですが、人間がここに関与している以上は、心理的な要素、(例えば)「なんとからしい」とか、宮崎弁で言う「なんとかじゃげだ」とか、そういうものが購買の行動や、流通にも影響を与えることが、今回よくわかりました。
今回21万t以上出したということで、不足分については、充分に埋まったのではないかという判断もできる数量ですが、市場の心理が、全く改善していないと、しばらく様子を見て判断されれば、追加の措置を打つ必要があるのではないかと今のところは考えています。

 記者 2024年産(令和6年産)の備蓄米の買入れについて、7つの事業者が期限までに規定の量を納入しなかったとして、農水省は、3か月間の入札(参加)資格停止と違約金の支払いを求めましたが、処分を受けた業者の一つは、入札価格と市場の卸売価格に乖離が出たことで、農家から米を集められなかったと理由を説明しています。今回のようなケースをどう受け止められたか聞かせてください。

 大臣 今言われたように、集められなかった方もいらっしゃると思います。それは決して悪意ではない。ただ、今回集められた量が、だいたい2,000tぐらいで、そんなに大量ではないです。そんなに高いハードルではなかったのではないかなと思います。契約をした以上は、民民の契約でも、官との契約でも、守っていただくのが筋です。2,000tといえば、(政府備蓄米の)全体の100万tの総量に比べれば大きな量ではありませんが、それだけの量を積むことができなかったことは、責任感を持っていただきたいと思います。しばらくは、買入することを禁止する措置と違約金は、契約に従って科させていただくことになります。

 記者 今回のケースは異例だと感じましたか。それともまああることだと感じましたか。

 大臣 過去にもこういう例はあったようですが、今年はこういう年ですから、世間の方々が、違約金を払ってでも市場で売った方が利益が出ると判断した人がいるのではないかと思う人もいるかもしれないです。そういう推察されるのも、ある意味無理もない話だと思います。今回の特殊な状況が、7社で2,000tという数量を生んでしまった。特別かと言われれば、特別感はあると思います。ただ、過去にこういう例がなかったのかと言われれば、過去にも例があります。

 記者 冒頭発言された2回目の落札結果について、(第1回と合わせた落札価格の加重平均が)初回よりも400円あまり低下したところですが、この金額に関してどう受け止めましたか。

 大臣 落札結果については、入札ですから、価格がいくらだったらいいとか、いくらだったから悪いとか言う立場にはありません。今回は7万tのうち、6年産米が4万t、(残りの)3万トンが5年産ということもあって、5年産米がパーセンテージでいうと前回の入札よりも多かったことも多少は影響しているのかもしれません。安めに入札してくださいと誘導することはもちろんありませんし、財政法に基づいて行ったことですから、この価格については、これ以上申し上げられないです。

 記者 今後、備蓄米の市場への放出と合わせて、需給ではないような、米が有る、無いという心理的なところも働いてくると思いますけれども、事業者、消費者も含めて、米の有る、無いという感覚と、今後、どう米の全体として相場観が冷やされていくのか、現状とこれからの考えられる見通しをお聞きします。

 大臣 在庫の調査結果を昨日発表しましたので、それぞれの立場の方が、「なるほど。そういうことなのか」と思っていただけた部分はあると思います。例えば、消費者の皆様方のところにも、米穀機構が調査した内容に照らすと、例年よりも多くある。米はこれから特に湿度も上がり、温度が上がってくるということであれば、コクゾウムシなんかも湧きやすくなりますので、なるべく必要な分をこまめに買っていただくことが非常に大事です。最初に申し上げましたように、消費者の方は、ビッグプレイヤーなんです。消費者の方々が一気に動けば、スーパーの店頭から米が消えますし、トイレットペーパーも消えるということは証明された事象です。消費者の方々も、(例えば)ここにはこれぐらいある。仲卸にも、流通業者にも、小売にも(米は)あるということは、ご理解いただけたと思います。全ての方が、一度冷静になっていただいて、持っているものは、しっかり流通に乗せていただく。昨日の調査結果が影響を与えてくれたらいいなと思っています。今回、2回目が出て行きますので。これが店頭に並び始めるのが、4月の第3週以降になると思うのですが、それによって、どのような影響が出るかについては、なかなか市場のことは読めませんけれども、なんとなく世間がぼんやりと、どこに行ったのだろう、どうなってしまったんだろう、本当はないのではと言っていた部分については、ある程度、我々の発表によって明快にすることができたので、これはある意味、市場を流す効果があるのではないかと考えています。

 記者 21万tが放出されることになり、いつから不足感が埋まってくるという見通しをお持ちか。また、今回21万tが放出され、3回目をご検討されている3回目の入札については、いつ頃ご判断される予定でしょうか。

 大臣 何度も申し上げましたが、物ごとには、政策結果を見極めるまでに少し時間がかかります。例えば、備蓄米を出しますと発表した瞬間に政策結果が出るわけではない。(備蓄米を)放出して、在庫が仲卸に渡った瞬間に政策結果が出るわけではない。それから流通、小売に乗って、販売されて初めて、市場の動向がわかるわけですから、どれぐらいのタイミングになるかは極めて判断が難しいです。いつになるかということは申し上げられませんが、何度も申し上げているのは、21万tを出す時にも、大変悩んで結果を出しました。多過ぎるのではないか、こんなに出したら暴落するかもしれないと。しかし、そうなってはいません。(市場価格を)下げるために備蓄米を出しているわけではありませんけれども、最終的には、流通の改善は、市場価格の安定につながることを目指しているわけですから、2回目の放出が終わってしばらく時間を置いて、その結果を見極めた上で、必要であれば躊躇なく3回目の決断をしたいと思います。

(略)

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